登山に興味が無い方でも谷川岳の名前くらいは知っているのではないでしょうか。「世界一危険な山」としても有名で、難易度が高い山というイメージが強いかもしれませんが、初心者から上級者まで楽しめる多彩な登山コースが用意されているので、年間4万人を超える登山者が訪れる人気の山だったりします。
今日は、ロープウェイが使える人気の日帰りコース「天神尾根ルート」のご紹介と、谷川岳の絶景をご紹介いたします。筆者の想像を遥かに超えた異次元の絶景が広がる、人気の理由も頷ける山でしたよ。
目次
世界一危険な山?「谷川岳」
群馬県と新潟の県境にある「谷川岳(たにがわだけ)」は、関越自動車道水上インターから車で約25分。上信越国立公園の東部に位置するトマの耳(標高1,963m)とオキノ耳(標高1,977m)の2つの峰からなる双耳峰です。
本来これらの山は谷川岳という名前ではなく、トマ・オキの二つ耳と呼ばれていたのですが、国土地理院の誤記が原因で谷川岳と呼ばれるようになったんだそうです。
ちなみに隣にある俎嵓(マナイタグラ)という山が当時は谷川岳と呼ばれていました。登山者の間では「本当の谷川岳」なんて呼ばれ方をしています。
気候の変化が激しい場所にあることから森林限界が低く、標高1500mを超えたあたりから見晴らしが良くなり、中腹からは美しい稜線を見渡すことが出来ます。
山頂は360度パノラマビューの絶景が広がり、晴れた日は至仏山、越後駒ヶ岳、赤城山、草津白根山、浅間山、苗場山といった日本百名山の山々を一望できます。
谷川岳は四季折々の絶景を楽しむことが出来るとあって、季節問わず行列が出来る人気の山です。
雪山シーズンは一面銀世界の山容が美しく、春から夏にかけて様々な高山植物を楽しむことが出来ます。特に紅葉シーズンは別格で、異次元の絶景を拝むことが出来ます。
様々な称号を持つ山で、日本百名山、ぐんま百名山に選定されているほかに、「世界一遭難者が多い山」ギネス認定、「日本三大岩場」「日本三大急登」「魔の山」の異名を持ちます。
ロッククライミングの聖地でもあるので、一見、登山者を寄せ付けない危険な山のイメージを持ってしまいますが、日帰り登山が出来る安全なコースもあります。
「世界一危険な山」と紹介されることもある山に、安全に登山できるのであれば登ってみたいですよね。
「谷川岳」登山コース
出典:谷川岳ロープウェー谷川岳で登山の難易度が高いイメージを抱くのは、1960年に発生した「谷川岳宙吊り遺体収容」のニュースのインパクトと、「世界一遭難者が多い山」としてギネス認定された「魔の山」の異名を持つからだと思いますが、遭難事故の殆どがロッククライミングの上級者コースで起こっているので登山とは別物です。
登山の場合、主に4つのルートがあります。
天神尾根ルート
- 谷川岳ロープウェイ天神平から登頂するコース
標高差約650m/片道約3.3km/徒歩約150分程度
西黒尾根ルート
- 西黒尾根登山口から登頂する「日本三大急登」の1つ
標高差約1250m/片道約4.3km/徒歩約260分程度
田尻尾根ルート
- 田尻尾根入口から登頂するコース
標高差約1400m/片道約5.3km/徒歩約270分程度
巌剛新道ルート
- 巌剛新道(がんこうしんどう)登山口から登頂するコース
標高差約1200m/片道約3.5km/徒歩約240分程度
どのルートも日帰り登山が可能ですが、「西黒尾根コース」は日本三大急登の1つで、上級者でも唸る超ハードな登山道です。
「巌剛新道」、「田尻尾根ルート」も標高差がある上級者向けコースなので初心者には厳しい登山道です。
今日ご紹介するのは谷川岳ロープウェイを利用する人気の初心者コース「天神尾根ルート」です。
「天神尾根ルート」アクセス方法
車を利用する場合
最寄りの駐車場は、谷川岳ベースプラザ駐車場です。立体駐車場内に約1000台、屋外の駐車場に約500台駐車可能で、駐車料金はどちらも1日500円(※冬季のみ土日祝日1000円)。
駐車場の営業時間はロープウェイの営業時間と同じですが、時期や曜日によって営業時間が異なるので登山前に確認をしましょう。
谷川岳ベースプラザ駐車場は車中泊で制限がある為、夜中に前乗りしたい方は、谷川岳ベースプラザ駐車場から徒歩5分ほど降りた場所にある「谷川岳インフォメーションセンター駐車場」を利用します。
こちらは24時間利用可能で駐車料金は無料です。
約300台駐車できるスペースがあり、トイレもあります。アスファルトで整備された綺麗な駐車場で、車中泊に最適です。但し、冬季や水曜日の休館日は駐車場が閉鎖になります。
電車を利用する場合
最寄りの駅はJR上越線土合駅です。駅から約30分かけて「谷川岳ロープウェイ」を目指します。
駅舎まで標高差約70メートル。462段もの階段を登る必要がある上にバスが無く、不便なのであまりお勧めはできません。JR上越線・上越新幹線「水上駅」で下車し、そこからロープウェイ行きのバスを利用する方が楽です。
とはいえ、土合駅は「日本一のモグラ駅」として有名な駅なので、あえてこの駅から谷川岳を目指す方も多いんだそうです。鉄道ファン以外の多くの方が訪れる、ちょっとした観光スポットになっています。
天神尾根ルートから登山
天神尾根ルートはロープウェイで天神平駅まで登り、天神尾根からトマの耳、オキの耳を経由するピストンコース(往復コース)です。登山中はロープウェイを含め、以下のルートを往復します。
天神尾根ルート概要(往復)
- 谷川岳ロープウェイ土合口駅 → 谷川岳ロープウェイ天神平駅 → 熊穴沢避難小屋 → 天狗の留まり場 → 天神の懺悔岩 → 肩の小屋 → トマの耳 → オキの耳
順を追って説明しますね。
谷川岳ロープウェイ土合口駅 → 谷川岳ロープウェイ天神平駅
谷川岳ロープウェイは22人乗りのゴンドラのようなロープウェイで、3分間隔で運行しています。運行時間は季節や祝日によって若干異なるので詳しくはホームページをご確認ください。シーズン中の土日の営業時間は7:00~17:00です。
ロープウェイの運賃は往復で大人2100円、子供1050円。片道で大人1250円、子供630円(2022年現在)です。谷川岳ロープウェイのチケット売り場で購入できます。
標高746mの土合口駅から標高1319mの天神平駅まで、標高差約600mを約15分間で登ります。車窓からの見晴らしは大変素晴らしく絶景ですよ。
谷川岳ロープウェイ天神平駅にはトイレは勿論のこと、レストランや売店が充実しています。トイレは山頂手前の山荘にもありますが、有料トイレなので、今のうちに済ませておきましょう。
天神平は展望台や観光名所も沢山あるので、観光で人気のスポットです。ロープウェイはいつも行列になりますよ。
谷川岳ロープウェイ天神平駅 → 熊穴沢避難小屋
天神平にはリフトもありますが観光向けです。谷川岳へ登る方は殆ど利用しません。何故なら、山頂と全く違う方向に登るリフトなので遠回りになるからです。
谷川岳の登山口はリフト乗り場手前にあります。既につづら折りの道が見えていますね。
第一のチェックポイントでもある熊穴沢避難小屋までは標高差150m、距離にして約1500メートルを約30分かけて登ります。
熊穴沢避難小屋は距離は長いですが、基本、緩やかな道が続くので楽しく登ることが出来ます。
400メートルほど歩くと田尻尾根コースの分岐に到着します。ちなみに標識の距離は多分間違っているようで、あまり鵜呑みにしないほうが良いと思います。
天気が良い日は谷川岳の雄大な山容を拝むことが出来ます。本当に3キロ先に山頂があるのでしょうか。そう思うくらい遥か彼方に谷川岳が見えます。
木道が整備されていて歩きやすい道のりですが、早朝や雨が降った後は滑りやすいので慎重に歩きましょう。
基本、緩やかな道のりとはいえ、時々岩場の登りがあるので油断は禁物です。
木製の登り易い階段があったりと、バリエーション豊かで飽きのこないコースだと思いました。
森林限界が低いこともあり、早い段階で景色が段々と開けてくるので登っていて楽しい登山道です。
そうこうしているうちに避難小屋が見えてきました。
第一のチェックポイントでもある熊穴沢避難小屋に到着です。赤い建物が象徴的ですね。トイレはありませんが、多くの登山者が休憩するスポットです。
熊穴沢避難小屋 → 天狗の留まり場
次のチェックポイントでもある天狗の留まり場までは標高差200m、距離にして約600メートルを約60分かけて登ります。
今までの緩やかな道のりとは一変して、この先は岩場の急登が続きます。熊穴沢避難小屋から先が本格的な登山の始まりです。
前半は鎖場や梯子がある岩登りが続きます。谷川岳の岩は蛇紋岩と呼ばれる、滑りやすい岩なので慎重に登りましょう。
一気に標高を稼ぐので、あっという間に森林限界を突破します。急登続きで大変な道のりですが、絶景のご褒美が待ち受けていますよ。
奥の方に見える巨大な岩が天狗の留まり場です。まだまだ岩場の急登が続くようです。
谷川岳はロープウェイで登ることが出来るので初心者でも登り易い山と思われがちですが、一番優しいルートでも結構ハードです。
天狗の留まり場が見えてきました。岩の上からは絶景を拝むことが出来るようです。
天狗の留まり場(てんぐのとまりば)に到着です。早速岩の上に登ってみましょう。
天狗の留まり場は大変絶景で壮大な景色が広がります。ロープウェイ乗り場が遠くに見えますね。
天狗の留まり場 → 天神の懺悔岩
天神の懺悔岩までは標高差160m、距離にして約400メートルを20分かけて登ります。
直登ぎみに岩だらけの道のりが続きますが、展望が良いのでそこまで苦痛に思うことはありません。
左に目を向けると美しい稜線と、本当の谷川岳でもある「俎嵓(マナイタグラ)」の美しい山容を拝むことが出来ます。
笹に覆われた登山道は開放的です。奥の方に岩の塊がみえてきました。
天神の懺悔岩に到着です。ここまで来れば肩の小屋まではあと少し。
天神の懺悔岩の眺めも絶景で、今まで歩いてきた天神尾根の美しい稜線やロープウェイ乗り場を見渡すことが出来ます。
天神の懺悔岩から眺める本当の谷川岳「俎嵓(マナイタグラ)」は圧巻です。山頂に到着する前に満たされてしまう絶景です。
天神の懺悔岩 → 肩の小屋
肩の小屋までは標高差100m、距離にして約300メートルを15分かけて登ります。ここまで来ればあっという間ですよ。
山小屋までの道のりは階段が整備されているので登り易くなっています。
天神の懺悔岩までの道のりが険しく、長かったこともあり、気のせいか、あっさりと肩の小屋に到着してしまいます。
谷川岳肩の小屋にはトイレや売店があるので、大変ありがたいですよね。見た目とは裏腹に、宿泊施設もあります。
肩の小屋には分岐があり、オジカ沢ノ頭を経由して万太郎山へ行くことが出来ます。本当に美しい山容と稜線です。
肩の小屋 → トマの耳
トマの耳までは標高差50m、距離にして約100メートルを5分かけて登ります。既に山頂が見えてますよね。
途中で「日本三大急登」の1つ。西黒尾根ルートと合流します。西黒尾根ルートからハードな道のりを登ってきた登山者にとって、鉄塔のような標識は希望の目印なんだと思います。
谷川岳は筆者の想像を遥かに上回る絶景が広がり、360度パノラマビューの絶景が続くのでなかなか足が前に進みません。
トマの耳に到着です。標高1,963m。谷川岳の南峰です。肩の小屋からは本当にあっという間に到着です。
トマの耳からの景色
谷川岳南峰、トマの耳の周りには視界を遮るものはなく360度パノラマビューです。山頂は狭いですが大変見晴らしが良く、圧巻の景色が広がりますよ。
南側に目を向けると今まで歩いてきた天神尾根や、遠くにロープウェイ乗り場が見えます。
北東方向に目を向けると笠ヶ岳、白毛門の山並みと、遠くには平ヶ岳、巻機山といった山々を眺めることができます。
東側に目を向けると会津駒ケ岳、至仏山、燧ヶ岳、武尊山といった日本百名山を拝むことが出来ます。
西側に目を向けると谷川岳の谷が圧巻です。オジカ沢の頭越しに、遠くに苗場山や仙ノ倉の山々を眺めることができます。
中でも一番絶景なのが南西方向に広がる稜線です。本当の谷川岳でもある「俎嵓(マナイタグラ)」は、いつか登ってみたいと思いました。
北側に目を向けると、谷川岳北峰でもあるトマの耳が見えます。険しそうな稜線ですね。早速向かってみましょう。
トマの耳 → オキの耳
オキの耳までは標高差50m、距離にして約400メートルを20分かけて登ります。標高差は無さそうに見えますが、一旦下って登り返しになります。
オキの耳に向かう道のりはどこも絶景でなかなか足が前に進まないのですが、鞍部まで降りると更に絶景を拝むことが出来ます。
鞍部から眺めるトマの耳は想像していた山容とは異なり荒々しく、反対側が断崖絶壁になっていました。
鞍部から眺めるオキの耳は岩が美しい険しい山容で、剱岳、穂高岳と並んで「日本三大岩場」の山であることがよくわかります。
俎嵓に続く稜線も大変美しく、荒々しい山容が絶景です。本当に足が前に進みません。
この先の岩場の急登を登り切ればオキの耳に到着です。
オキの耳に到着しました。標高1,977m。谷川岳の最高峰です。トマの耳からは登りごたえのありましたが、終始絶景続きで楽しい道のりでした。
オキの耳からの景色
谷川岳北峰でもあるオキの耳も、周りには視界を遮るものはなく360度パノラマビューです。オキの耳も山頂は狭いですが大変見晴らしが良く、圧巻の景色が広がります。
北側に目を向けると一ノ倉岳へ続く稜線が美しく、いつまでも眺めていることができます。
南側に目を向けるとトマの耳の荒々しい山容越しに、今まで歩いてきた天神平尾根やロープウェイ乗り場を眺めることが出来ます。
西側に目を向けると俎嵓へ続く稜線と、美しい山容が広がります。トマの耳から眺める稜線よりも山容全体をしっかりと見渡すことが出来るので、大変絶景です。
東側から望む景色は圧巻で、湯桧曽川の谷を挟んだ先にある笠ヶ岳、白毛門の壮大な山容と、遠くに会津駒ケ岳、至仏山、燧ヶ岳、といった日本百名山を拝むことができます。
何時間でも絶景を眺めていたい異次元のパノラマビューが広がる山ですが、山頂は狭く、岩だらけで登山客で溢れかえっています。流石は人気の山です。
下山
谷川岳は同じ登山道を通って下山するピストン山行となります。下山中は目の前にひたすら絶景が広がるので別の楽しみ方が出来ます。
折角なので肩の小屋で休憩をしながら絶景を満喫しましょう。肩の小屋の休憩スポットからは俎嵓の稜線を一望できます。多くの登山者がここで休憩をしていました。
木々が殆ど無い登山道なので、天神尾根の美しい稜線を楽しみながら歩くことが出来ます。下山が本当に楽しい山です。
谷川岳ロープウェイ天神平駅に到着です。ロープウェイはいつも行列になるので、時間にゆとりをもって下山したいところです。
谷川岳に登ってみてわかったこと
谷川岳に登る前までは正直そこまでの絶景を期待していませんでしたが、いざ登ってみると筆者の想像を遥かに上回る、写真や映像では伝えきれないダイナミックな絶景が広がる山でした。
谷川岳に登ってみてわかったことや注意点をまとめました。
まとめ
- 年間4万人超えの登山者が訪れる「トマの耳」と「オキの耳」の2つの峰からなる双耳峰
- 元々違う山名だったのに国土地理院の誤記が原因で谷川岳になった
- 「世界一遭難者が多い山」としてギネス認定された「魔の山」の異名を持つ
- 死亡事故の殆どがロッククライミングの上級者コースで起こっているので登山では安全
- 超人気の山なのでロープウェイはいつも行列になる
- 車中泊をしたい方は谷川岳インフォメーションセンター駐車場の利用がおすすめ
- 谷川岳ロープウェイの運行時間は季節や祝日によって若干異なるので事前に確認が必要
- 天神尾根ルートは「ロープウェイを使える」=「初心者向け」ではない。意外とハード
- 天神尾根ルートはロープウェイが使える上にバリエーション豊かで飽きのこないコース
- リフトを使った場合、かえって遠回りになるので使わない登山者が殆ど
- 中腹から山頂まで360度パノラマビューのダイナミックな絶景が広がる
- 四季折々で異なった絶景を楽しむことが出来るので何度でもリピートしたくなる
流石は超人気の百名山!何度でもリピートしたくなる山です
谷川岳が超人気の山であることは知っていましたが、ここまで異次元の絶景が広がる山だとは思ってもいませんでした。四季折々で異なった景色を楽しむことが出来るので何度でもリピートしたくなる山です。
ロープウェイを使うことが出来るからといって、決して楽な登山ができる山ではありませんが、山頂には最高のご褒美が待ち受けています。一生に一度は登ってみてほしい山です。
ギア
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