日本百名山「火打山(ひうちやま)」は、異次元の絶景が広がる「天上の楽園」「花の楽園」とも呼ばれる人気の山です。特に火打山の麓に広がる雄大な高層湿原は楽園感マックスで、いつか登ってみたい山の1つでした。
火打山登山では危険個所は無いのですが、距離が大変長いので日帰り登山は避けて、「高谷池ヒュッテ」で宿泊する登山計画を立てました。今回は1泊2日のゆとりを持った登山コースのご紹介です。
目次
天上の楽園と呼ばれる日本百名山「火打山」
新潟県糸魚川市と妙高市を跨る「火打山」は、上信越自動車道妙高高原インターから車で約30分。妙高戸隠連山国立公園にある頚城山塊(くびきさんかい)の最高峰。標高2,462mの山です。
「日本百名山」「花の百名山」「新潟100名山」「甲信越百名山」に選定されています。
山名から火山なのかと思っていましたが関係なく、山容が火打石に似ているから火打山なんだそうです。隣接する新潟焼山と妙高山は火山で、火打山含め「頚城三山」と呼ばれています。
大変絶景の山で、山頂は360度大パノラマの大展望であることは勿論のこと、山頂直下に広がる「高谷池湿原」は、アメリカのCNNが選んだ「日本の最も美しい場所31選」に選定されています。
池塘にリフレクションする逆さ火打山は屈指の絶景スポットです。
絶滅危惧種に指定されているライチョウの生息地の北限で、運が良ければライチョウを見ることができます。登山中は、至る所で沢山の高山植物を楽しむことも出来る、正に天上の楽園の名にふさわしい山ではないでしょうか。
「火打山」登山コース
火打山は「笹ヶ峰登山口」から登頂するのが一般的です。豪雪地帯にある山なので6月でも残雪があり、登山適期は7月~10月下旬です。紅葉シーズンが最も人気で、大変込み合います。
笹ヶ峰登山口から登頂する
- 標高差約1150m/片道約8.5km/約300~390分程度のコース
- 最寄りの駐車場は「笹ヶ峰駐車場(第一・第二)」駐車可能台数(第一約40台・第二約120台)/無料・トイレ無)
火打山は「日帰り登山もできる初心者向けの山」と紹介されてる記事を見かけますが、鵜呑みにすると大変な思いをするかもしれません。
というのも、火打山は山のグレーディング表では体力度が10段階中【4】で、「1泊以上が適当」な中級者向けの山だからです。
登山道は大変整備されていて危険個所もなく、登りやすいのですが、距離が長いのでレベルに見合った登山計画をしっかりと立てたいところです。時間に追われて登山を楽しむゆとりが無くなってしまうのであれば本末転倒です。可能であれば、余裕を持った宿泊登山をおすすめします。
また、火打山は水が豊かな山ではない為、水の確保が肝になってきます。頼みの山小屋でも水の確保が困難なケースもあるので、火打山に登るのであればいつも以上に多くの飲料水を持っていくことを強くお勧めします。
実際、筆者が登頂した日は、高谷池ヒュッテで深刻な水不足があり、水の確保が困難な状況でした。水に関しては事前に高谷池ヒュッテのお知らせを確認しましょう。
今日ご紹介するのは「高谷池ヒュッテ」で宿泊する、1泊2日のゆとりを持った登山コースです。下山では絶景ポイント「黒沢池」に寄り道をします。コースは以下のような流れになります。
ルート概要(1泊2日)総距離:約18km コースタイム:約600分~720分
DAY1
笹ヶ峰駐車場→火打山登山口→黒沢橋→十二曲がり→富士見平→高谷池ヒュッテ→天狗の庭→雷鳥平→火打山山頂→高谷池ヒュッテ
DAY2
高谷池ヒュッテ→茶臼山→黒沢池ヒュッテ→黒沢池→富士見平→火打山登山口
順を追って説明しますね
笹ヶ峰駐車場→火打山登山口
最寄りの駐車場は「笹ヶ峰駐車場」で、駐車料金は無料です。第一、第二とあります。火打山は大変人気の山なので早い時間には駐車場が満車になります。特に紅葉シーズンは早朝には満車になることもあります。
駐車可能台数約は第一駐車場が約40台、第二駐車場が約120台です。トイレは第二駐車場にのみあります。第一駐車場は目の前が登山道ですが、第二駐車場からも登山口までは徒歩数分なので便利です。
火打山登山口は大変立派な門が特徴的です。日本百名山「妙高山」の登山口でもあります。登山届は忘れずに提出しましょう。因みに、夏季は妙高高原駅よりバスが運行されているので車が無くても登山口までアクセス可能です。
登山シーズンは入域料500円を任意で納めます。記念品の木製キーホルダーを頂くことが出来ますよ。
火打山は距離が長いのですが、高谷池ヒュッテまではトイレが一切無いので、不安な方は携帯トイレを購入しましょう。登山口で購入可能です。
火打山登山口→黒沢橋
第一のチェックポイントとなる黒沢橋までは距離にして約2.1km、標高差250メートルを60~70分かけて登ります。黒沢橋までは、なだらかな道のりなので足慣らしに最適です。
暫くはブナの原生林が広がる樹林帯歩きです。登山道は木道で大変整備されていて、森林浴を楽しみながらハイキングできます。
半分程歩くと標識が見えてきます。標識は約1kmごとにあり、良い目安になるのですが、人によっては心が折れる標識になるかもしれません。1/9kmとあるので、9kmのうち、1km程度進んできたことが分かります。
チェックポイントの黒沢橋に到着です。黒沢川のお陰で大変涼しく、休憩に最適です。ここは水場でもあります。飲料は可能ですが、煮沸したほうが良いかもしれません。
火打山は距離が長いので、水の確保が必須です。高谷池ヒュッテで飲料水の購入は可能ですが、水不足で販売が制限されることもあります。水が尽きて登頂を断念するケースもあるので、ここで水は確保しておきたいところです。
黒沢橋→十二曲がり
次のチェックポイントとなる十二曲がりまでは距離にして約700m、標高差200メートルを30~40分かけて登ります。黒沢橋より先は本格的な登山道になります。
暫く歩くと十二曲がりという、つづら折りの急登ポイントに到着します。短い間隔で1から12の立て札が設置された、火打山の名物ポイントです。
十二曲がりは本当にあっというまで、テンポよく立て札が出現します。急登ではあるのですが、つづら折りになっているのでそこまで大変ではありません。
名物の急登エリアをあっさりとクリアできたので、この先は楽勝かと思っていましたが、後悔することになります。十二曲がりは単なるウォーミングアップに過ぎなかったのです。
十二曲がり→富士見平
富士見平までは距離にして約1.2km、標高差250メートルを70~90分かけて登ります。この区間は急登がひたすら続く、火打山登山の中で最も地味で、修行の道のりでした。
地味な急登を進むと、3/9kmの標識が見えてきますが、ここで多くの登山者の心が折れます。
標識の先には、十二曲がりよりも過酷な通称「ババ返し」という岩場の急登が待ち受けます。大きな岩をよじ登る難所で、馬が登れない場所という意味合いのようです。
簡易トイレが見えてくると急登エリアはひと段落です。簡易トイレといっても、中にトイレがある訳ではありません。携帯トイレを使用する為のスペースなのでご注意ください。
暫く登り続けると4/9kmの標識が見えてきます。富士見平はもうすぐです。
富士見平に到着です。黒沢池ヒュッテや妙高山への分岐点です。天気に恵まれると遠くに富士山が見えるスポットですが、滅多に富士山は見えないんだそうですよ。
富士見平→高谷池ヒュッテ
高谷池ヒュッテまでは距離にして約1.6km、標高差50メートルを50~70分かけて登ります。急登は無く、緩やかな道のりなのですが、地味に距離が長いので果てしなく感じます。
5/9kmの標識が見えてきたら段々と景色が開けていくので、絶景を拝むことが出来ます。
遂に火打山の山容を拝むことが出来ました。ずっと景色が少ない道のりだったのでテンションがあがります。遠くには高谷池ヒュッテの特徴的な屋根が見えます。高谷池ヒュッテには、すぐに到着しそうな予感がしますよね。
しかし、高谷池ヒュッテを迂回するような道のりなので、歩けど歩けど高谷池ヒュッテにたどり着きません。木道で整備された登山道は大変ありがたいのですが、ここでも少し心が折れるかと思います。
高谷池ヒュッテの手前でアルプス展望台の標識が見えてきました。少し脇道にそれますが行ってみましょう。
アルプス展望台からは北アルプスの雄大な山容を拝むことが出来る絶景ポイントです。この場所からはアルプスのご来光を拝むことが出来るので、宿泊登山で人気のスポットです。
アルプス展望台から少し歩くと、何の前触れもなく突然、高谷池ヒュッテが姿を現します。
高谷池ヒュッテに到着です。テント泊や宿泊が可能な、完全予約制の施設です。トイレや売店の利用は登山客でも可能なので、多くの登山客で賑わうオアシススポットです。トイレはめちゃくちゃ綺麗で、なんとウォシュレット完備ですよ。
高谷池ヒュッテ→天狗の庭
高谷池ヒュッテから先は火打山で最も絶景が続く天国ロードです。天狗の庭までは距離にして約800mを15~20分かけて歩きます。進行方向には高谷池湿原越しに火打山がそびえたちます。
後ろを振り返ると、高谷池湿原越しに、高谷池ヒュッテとテント群を見渡すことが出来ます。どこを見渡しても絶景で、なかなか足が前に進みません。ご褒美感が半端ないですよね。
絶景に目を奪われながら歩き進めると天狗の庭に到着です。ここから眺める景色も絶景で、池塘と高山植物が美しい、正に天上の楽園です。
中でも圧巻なのが、池塘にリフレクションする火打山です。風の無い天気の良い日であれば「逆さ火打山」を拝むことが出来ます。
まるで尾瀬を歩いているかのような雄大な景色は火打山最大の見どころです。アメリカのCNNが選んだ「日本の最も美しい場所31選」に選定されただけあって、異次元の絶景です。
天狗の庭→雷鳥平
お腹いっぱいになる程、絶景を堪能した後は現実に逆戻りです。チェックポイントとなる雷鳥平までは距離にして約1km、標高差200メートルを35~50分かけて登ります。
階段と岩場の急登がずっと続くので、なかなかハードな道のりです。見晴らしが良いのが唯一の救いかもしれません。
標高を一気に稼ぐにつれ、新しい景色を拝むことが出来ます。雷菱の大岩壁は、惑星間溢れる迫力のある岩壁です。
目の前に山頂らしきものが見えていますが、残念ながら偽ピーク(山頂ではない)です。本当の山頂は奥に見える山です。まだまだゴールは先だと思い知らされます。
先ほど見えた偽ピークまでも果てしなく登りが続きます。ここからの登りは地味に応えます。
ライチョウ平に到着しました。絶滅危惧種に指定されているライチョウの生息地の北限で、新潟県ではアルプスを除く唯一のライチョウの生息地です。残念ながら今回はライチョウに会うことは叶いませんでした。
雷鳥平→火打山山頂
火打山山頂までは距離にして約1km、標高差150メートルを35~50分かけて登ります。まずは木製の階段を登り切りましょう。
階段を登りきると、目の前に火打山山頂が見えてくるのですが、結構な急こう配ですよね。あれを登るのかと思うと心が折れます。
火打山山頂まではひたすら階段を登る「階段地獄」です。山頂目前に、殆どの登山者の心がぽっきりと折れます。最後の最後でひたすら階段が続くのは本当に辛いですよね。
つづら折りに続く階段は大変整備されていて歩きやすく、感謝しかないのですが、果てしなく続く階段はゴールが見えないので地味に応えます。
木道のような階段エリアに差し掛かると山頂まではすぐそこです。
火打山山頂に到着です。標高は2462m。最後の階段は本当にゴールが見えず、山頂標識が見えた瞬間の感動は今まで以上でした。
火打山からの景色
山頂の周りには視界を遮るものはなく360度大パノラマが広がります。生憎山頂に到着した頃にはガスがあがってきました。
南東方向に目を向けると、天狗の庭や高谷池湿原越しに、日本百名山の妙高山が見えます。特徴的な山容ですよね。
西側に目を向けると、「頚城三山」の一つ、新潟焼山の山容を辛うじて確認できました。
南西側に目を向けると、北アルプスを一望できるのですが、丁度良い位置に雲がかかってしまい、残念な景色となってしまいました。
北東方向に目を向けると、妙高市の街並みと日本海を一望できます。火打山は海から近い山なんだと再認識させられました。
北西側に目を向けると、遠くに日本海を望むことが出来るのですが、こちら方面は雲に覆われて何もみえませんでした。
山頂標識の傍にあるケルンのように積まれた岩には三角点と、狛犬のような置物が。火打山は古来、山岳信仰の対象だったそうで、山頂では鎌倉時代の物と思われる仏像が発見されています。
山頂は大変広く、一面は草木の無い砂礫地です。昼食を摂るには十分なスペースがあるので、多くの登山者が休憩をしていました。
下山
あれほど大変だった登りも、大変整備された階段のお陰で下山は楽チンです。登山道を整備してくださっている方々には感謝しかありません。今まで歩いてきた稜線が大変美しく、絶景を満喫しながら下山が出来ます。
あっという間に高谷池ヒュッテに到着です。筆者は宿泊登山なので高谷池ヒュッテに泊り、翌日早朝に下山を開始します。高谷池ヒュッテの様子は別の記事にまとめますね。
高谷池ヒュッテから先は、絶景ポイント「黒沢池」に寄り道をするので別のコースを通ります。高谷池ヒュッテにある分岐点から黒沢池・妙高山方面へ進みます。
チェックポイントの茶臼山までは距離にして約1km、標高差50メートルを30分かけて登ります。比較的緩やかな登りです。
茶臼山山頂は景観ゼロです。山頂標識には妙高市観光PRキャラクター「ミョーコーさん」が誇らしげに掲載されています。
茶臼山から「黒沢池」までは距離にして約1km、標高差150メートルを30分かけて激下りです。眼下には黒沢池の湿原越しに妙高山が聳え立ちます。遠くに見える建物は黒沢池ヒュッテです。
黒沢池ヒュッテに到着です。ドーム型の建物が特徴的な山小屋で、妙高山に登る登山者は、ここでザックをデポ(ザックを預ける)してアタックします。
黒沢池ヒュッテの分岐から富士見平・笹ヶ峰登山口へ進みます。約2kmに渡る湿原歩きは絶景が広がる天国ロードです。
本日の絶景ポイント。黒沢池に到着です。高山植物が咲き誇り、池塘と高層湿原が美しいですね。標識には下山口まであと7kmと書かれていて、少し我に返ります。
火打山には、尾瀬のような高層湿原が3か所もあるので、お得感があります。黒沢池湿原は3つの高層湿原の中で最も広大で静かです。下山での寄り道をお勧めします。
絶景を堪能した後は分岐点の富士見平まで少しだけ登り返しです。距離にして500メートル程度でしょうか。
登りで通った富士見平に到着です。ここから先は登ってきた時と同じ登山道を降ります。約2時間程度で下山できますよ。
火打山登山口の立派な門が見えてきました。火打山は登山道が整備されているので登りやすいのですが、距離が長く、体力勝負の山ですね。ゆとりを持った登山計画は勿論のこと、水の確保が重要であることを再認識させられる山行となりました。
火打山に登ってみてわかったこと
火打山は長い道のりの先に最高のご褒美が待ち受ける絶景だらけの山でした。火打山に登ってみてわかったことをまとめました。
まとめ
- 異次元の絶景が広がる「天上の楽園」とも呼ばれる人気の日本百名山
- 麓に広がる高谷池は、CNN「日本の最も美しい場所31選」に選定
- 至る所で沢山の高山植物を楽しむことも出来る花の百名山
- 絶滅危惧種に指定されているライチョウの生息地の北限
- 登山適期は7月~10月下旬。紅葉シーズンが最も人気で込み合う
- 登山道は整備されていて危険個所が無いが、距離が長いので体力勝負の山
- 水が豊かな山ではない為、いつも以上に多くの水を持参したほうが良い
- 前半の2キロは木道が大変整備されていて、森林浴を楽しみながら歩ける
- 十二曲がりから富士見平まではひたすら急こう配の修行の道のり
- 高谷池ヒュッテから天狗の庭までは絶景が続く天国ロード
- 山頂手前は階段地獄が続き、殆どの登山者の心がぽっきりと折れる
- 山頂は視界を遮るものはなく360度大パノラマが広がる
- 大変整備された登山道のお陰で下山は楽。絶景を楽しみながら下山できる
- ゆとりがあれば下山の際、絶景ポイント「黒沢池」に寄り道したいところ
- 火打山を満喫するのであれば宿泊登山がお勧め
火打山を満喫するのであれば宿泊登山がお勧め
火打山は頑張れば日帰り登山が可能ですが、時間がタイトになり、火打山の魅力を存分に満喫するゆとりが持てないかもしれないと思いました。
火打山は山頂も素晴らしかったのですが、麓に広がる雄大な高層湿原のほうがより印象的です。折角の長丁場登山です。火打山を思う存分満喫するのであれば宿泊登山がおすすめです。高谷池ヒュッテから雄大な絶景を眺めながら、大自然を満喫できますよ。
高谷池ヒュッテの様子は、また別の記事でご紹介しますね。
ギア
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