氷室玲
【青森ねぶた祭】4年連続参加して来年も行くと誓ったねぶた祭の魅力

【青森ねぶた祭】4年連続参加して来年も行くと誓ったねぶた祭の魅力

みなさんは、毎年8月始めに開催されている青森ねぶた祭をご覧になったことがありますか?

「ねぶた」とは針金や木材で作った木型に和紙を貼り合わせ、色とりどりの、そして極彩色の色彩を施した巨大な盆提灯のような造形物です。その大きさは高さ2mもの台車を含めると、幅9m、奥行き7m、高さ5m、総重量は4トン以上にもなります。

毎年ねぶた祭が開催されるのは、8月2日から8月7日までの6日間。本州では夏真っ盛りのこの時期ですが、北国青森では夕刻ともなると、祭り会場となっている市街地でさえ20℃前半に気温はぐっと下がります。

昼間の暑さが嘘のような涼しい潮風が会場周辺を覆い、年に一度の青森ねぶた祭がスタートします。勇壮で、生命の躍動を目の当たりにさせる、みちのく最大の夏祭り。縁あって4年連続で祭りに参加し、そこで実際に肌で感じた、祭りの熱気や情熱。そして、それと同じくらいに胸を締め付けた、涙のこぼれるような寂しさと感激を、これからみなさんにお届けします。

青森ねぶた祭とは

ねぶた制作費は2000万円掛かる

「ねぶた」の語源と起源

ねぶた祭の「ねぶた」の語源は定かではありませんが、一説によれば青森地方の方言である「眠たい」が訛って「ねぶた」が生まれたという説や、アイヌ語である「ネプターン」(不思議な、奇怪な)から生まれた言葉であるというのが定説です。

青森ねぶた祭の起源は古く、すでに青森市油川地区では享保年間から、弘前ねぶたをまねた灯籠祭りが始まっていました。現在のような「ひと形」をかたどった大型灯籠(ねぶた)が主流になったのは、明治時代以降のことです。ただ、その当時から昭和初期までは、神輿のような「担ぎねぶた」が大半で、台車に乗せた大型ねぶたに変わったのは、太平洋戦争の後からです。

ねぶた表

因みに、青森ねぶた祭は、1980年(昭和55年)、国の「重要無形民俗文化財」に指定されています。また、一体のねぶたを制作するには、およそ1年近い日数と2,000万円近い制作費がかかっています。

青森ねぶた祭の日程と見所

ねぶた祭は、毎年8月2日~7日までの六日間開催されます。8月1日には、「前夜祭」と近隣にある浅虫温泉の花火大会が行われるので、日程に余裕があればぜひそちらにもお出かけすることをおすすめします。

2日から6日までの五日間はおよそ午後7時15分~9時までの間に「夜間運行」が、7日の最終日には昼間の運行と、夜のねぶた海上運行(表彰を受けたねぶたのみ)・青森湾内の花火大会が挙行されます。

ねぶた祭の見所は、何と言っても初日の開幕と最終日の海上運行・花火大会です。それぞれのポイントをご紹介すると次の通り。

ねぶた祭初日(開幕日)

ミスねぶた祭

いよいよ6日間に渡る、長丁場の祭りの初日です。ねぶたの制作場所であり、完成した全てのねぶたの収納庫でもあるラッセランドにまず出かけてみてください。昼過ぎ3時くらいにもなれば、各ねぶた毎に制作者や担ぎ手、運行関係者が勢揃いしています。

それぞれ代表者や責任者に続いて、制作者のあいさつが行われています。この中では、テレビや雑誌などで全国的に有名な、「ねぶた師」北村隆氏や北村蓮明氏の兄弟、平成30年・令和元年と2年連続で最優秀賞である「ねぶた大賞」を受賞した竹浪比呂央氏にすぐ側で会えるかも知れません。

ねぶた大賞作品画像提供:(公社)青森観光コンベンション協会

何より感激するのは、北村隆氏の娘で、唯一の「女性ねぶた師」北村麻子さん(平成29年度ねぶた大賞・令和元年度知事賞受賞)のあいさつも聞くことができます。麻子さんは多くのテレビやドラマ・雑誌などで度々登場する青森随一の有名人です。彼女の肉声を実際に耳にし、その苦労話や意気込みを聞くことで、祭りの感慨もひとしおになります。

各作業場毎に、制作者のあいさつが終わるといよいよ鏡開き。大きな酒樽に木槌が打ち下ろされ、今年仕込み立ての吟醸酒が関係者に振る舞われます。運が良ければ、近くで観覧していた観光客にも紙コップが配られ、かけ声とともに「乾杯」の御神酒を頂くこともできます。

鏡開きが終わると、順番に会場へのねぶたの移動が始まります。いよいよ「ねぶた祭」初日の夜間運行が、スタートを切ります。

最終日(海上運行と花火大会)

青森ねぶた祭海上運行画像提供:(公社)青森観光コンベンション協会

地元の人が「ねぶたを見るなら、ぜひ一度はこの日に参加して!」と太鼓判を押しているのが、最終日にお披露目される「海上運行」と「花火大会」。

午後7時過ぎから午後9時頃まで、青森湾内をその年受賞した総勢6台のねぶたが船に乗って練り歩きます。煌めく明かりに包まれたねぶたの真上を、約11,000発もの盛大な花火が彩り、青森ねぶた祭はフィナーレを迎えます。夜空を彩る数千発以上の花火は圧巻の一言です。

また、ねぶた祭の起源は、海で亡くなった人々や祖先の魂を慰めるための「精霊流し」や、無病息災を祈る「七夕の灯籠流し」であると言われていますが、ここでその姿をまざまざと見せつけられ、熱い興奮の中にも厳かな気持ちになる瞬間でもあります。

ただし、市街地を練り歩いた時のように、間近でねぶたを見ることはできません。昼間の運行や前日の夜間運行で、たっぷりねぶたの雰囲気を味わってから、最終日の海上運行を観覧することをおすすめします。

胸に染みるねぶた祭の魅力

ねぶた祭の魅力

この章では、具体的に青森ねぶた祭の見所と魅力についてご紹介します。

光の饗宴「ねぶた祭」

青森市街が夏の宵闇に包まれ、いよいよ世界最大の紙の工芸品「ねぶた」が、全長3.1kmの会場を時計回りに練り歩きます。昭和の初めの頃は、その内部にロウソクを灯して、ねぶたを明るく輝かせていましたが、現在はすべてLEDライトの色鮮やかな光源を使用し、まばゆいほどの輝きを放っています。

ねぶたの正面を「おもて」、後尾を「みおくり」と呼び、それぞれデザインや飾り付けが異なります。「おもて」の迫力を楽しむと共に、「みおくり」に表現されたねぶたの美しさに注目してください。青森ねぶたは「一生の間に、一度はぜひ生で見た方が良い」と言われていますが、その言葉の意味を改めてかみしめることのできる一瞬です。

ねぶたのみおくり

因みに、青森ねぶた祭は雨天の時も予定通り運行されます。ただし、和紙が濡れないように全面ビニールで囲われてしまい、雨に濡れたビニールで、光の具合が極端に落ちることは否めません。やはり、ねぶたは晴れの日に限ります。雨の日のねぶたは、気温も極端に下がるので服装にも十分注意が必要です。

ハネトと囃子方(はやしかた)の熱気に包まれる

ねぶたの囃子方

青森ねぶた祭は、先頭を「ハネト」、次に「ねぶた」、最後尾を「囃子方」の三位一体で隊列を組むのが一般的です。ハネト(跳人)とは、ねぶた屋台と共に練り歩く踊り手で、花笠を被り、手には鈴を身に付けながら「ラッセーラ・ラッセーラ。ラッセ、ラッセ、ラッセーラ」という掛け声を挙げて跳びはねます。屋台によっては、百名以上のハネトを引き連れており、その掛け声と熱気に圧倒されます。

囃子画像提供:(公社)青森観光コンベンション協会

ねぶたの後に続くのが、勇壮な「囃子方」です。数台のバチ太鼓が屋台にくくりつけられ、長いバチで力強く太鼓を叩き続けます。その後ろには篠笛を奏でる十数名の吹き手や、「手振り鉦(てぶりがね・ねぶりがね)」で賑やかに音を鳴らす総勢数十名もの囃子方が続いています。

篠笛を奏でる吹き手画像提供:(公社)青森観光コンベンション協会

この囃子方は、ねぶたとは別に表彰されるので、どの囃子手が、どんな演奏を聴かせてくれるかも注目点です。オレンジ色の法被を身につけた「日立連合ねぶた委員会」は、ここ数年連続で「囃子賞」を受賞しています。ぜひ、来場の際にはご注目下さい。

過ぎゆく祭りの華やかさと儚さと

ねぶたのハネト画像提供:(公社)青森観光コンベンション協会

青森ねぶた祭は、本州では類を見ないほど、迫力ある壮大な「光と音」の一大ページェントです。ねぶた祭を見たいがために、毎年心が「じゃわめぐ」(津軽弁で、「心がざわめく」「居ても経っても居られない」という意味)のです。

令和元年は祭り期間中、昨年比で6万人増のおよそ282万人もの観光客が、北の大地青森に集まりました。その中には数多くの外国人も含まれています。

けれど、ねぶた祭が賑やかで煌びやかであればあるほど、運行が終わった後の空気の冷涼さや祭りの後の寂しさが、一層心に染みてきます。熱気と静寂、華やぎと儚さが一緒くたに混ぜ合わせられ、その両方を一度に体感することができるのも、青森ねぶた祭の魅力かも知れません。

その証拠なのでしょう。ねぶた運行の一番手の周辺には、「バケト(化人)」と呼ばれている、顔を白粉で白く塗りたくった仮装する集団が付き従っています。まじまじと見てみれば、一人一人は大変滑稽な姿形ですが、観客は誰も彼らを侮蔑したり、馬鹿にしたりしていません。バケトもまた、ねぶた祭にはなくてはならない伝統的な「祭りの担い手」の一員であり、その愉快で哀しい姿に、観客も心癒され感動しているのです。

ねぶたの化け人

まとめ

青森ねぶた祭の魅力についてご紹介して参りました。前夜祭を含めると、延べ7日間にも渡る長期間の一大イベントであり、一度に全てを体験するのは中々困難です。また、ねぶたそのものが天候に大きく左右される工芸品なので、ぜひ快晴の日を選んで訪れることをおすすめします。

造形の見事なねぶた

また、前夜祭や初日には、祭りの開始時期にだけみなぎっている特別の熱気や迫力が感じられるでしょう。最終日は、いよいよクライマックスに向けたフィナーレの感動や「終わりの寂しさ」が否が応でも体に染み渡ります。どの時期に出かけるかで、ねぶた祭の印象は天と地ほどの差があります。

可能な限り日数をかけて、ねぶた祭を味わってみることをおすすめしているのは、そんな理由があるからです。そして、それ以上にねぶた祭の会場である青森市周辺には、紅葉で有名な「奥入瀬(おいらせ)渓流」や十和田湖、世界遺産に指定されている「白神山地」や大ヒット映画の舞台でもある「八甲田山系」の山々がすぐそばにあります。

青森ねぶた祭とともに、そうした国内有数の素晴らしい景勝地や観光地・温泉の宝庫を、ぜひ一度めぐってみると、さらに感激も新たになるはずです。

心が「じゃわめぐ」私と、来年こそねぶた祭の会場でお会いしましょう。

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  • 氷室玲
  • 氷室玲
  • 年間100日程度、登山とキャンプ、オートバイツーリングや釣り、キノコ取りなどアウトドアライフを楽しんでいます。もともとキャンピングカーで国内を旅していましたが、最近は駐車スペースを取らない車中泊(ハイブリッドミニバン)が主体で、気の向くままに自然を楽しんでいます。

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