10年程前、結婚してから仕事に子育てにと少しだけ頑張りすぎて自分を見失っていた時、妻から「自転車で稚内でも行ってストレス発散してきたら」と言われたのをきっかけに道南の地方都市から日本最北端の宗谷岬まで行ってきました。
普段から趣味で自転車に乗っていたので、行ける自信はあったけれどやっぱり不安の方が大きかった。どうしようか迷っていたら、妻が仕事先で「旦那自転車で稚内行くんだ」と言ってしまい、退くにひけなくなってしまいました。こうしてとても消極的に、人生初の一人旅は始まったのです。
当時の思い出と、その時に持って行って、尚且つ今でも現役の道具を紹介したいと思います。
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目次
自転車での北海道縦断を支えてくれた頼れる道具を紹介
これから紹介する道具は、特にメンテナンスもせず(必要ない)今でも当たり前のように私のキャンプ生活を支えてくれています。一つひとつとても思い入れのある仲間です。そんな仲間たちへの想いを、少しだけ聞いてください。
調理は基本これ1つ 兵式飯盒
まだ〈コッヘル〉という言葉も知らなかった頃に、町のホームセンターで購入したものです。無洗米を持って行って、旅の約2週間ほぼ自炊し、私のお腹を満たしてくれました。
メニューは、レトルトカレー、インスタントラーメン、缶詰のローテーション。疲労の濃いときには、チューブのニンニクか、マヨネーズを加えてとにかくカロリーを摂取して体力を回復さていました。
レトルトカレーは米を炊いている時に、おもし代わりに蓋にのせて温めていました。それでも十分においしいです。1日だけどうしても肉が食べたくなり、豚バラをセーコーマートで買い、蓋をフライパンにして焼いて食べたこともあります。
最大4合まで炊けるので、3~4人までなら十分に事足りるし、インスタントラーメンも茹でやすいです。しかし、その弊害で深さがあり、箸で食べようとすると若干食べにくい事があります。
炊く、茹でる、焼くがこれ1つで完結できるのでとても頼りになります。なるほど兵隊さんが持って行くわけです。
炊き上がったら逆さまにして底を叩くといいよと聞いたので、素直に実行していたら、あっという間に底がボコボコになってしまいました。焦げ付いたりもしましたけど、スチールウールでこすったら簡単に取れるし、傷がついてもそれはそれとして味となり気になりません。
壊れる要素も様子もないのでまだまだ頑張ってもらうつもりです。
新たな使い道を発見 やかん
持って行くものを考えている時に、使うかどうか最後まで迷ったもの。
案の定ほとんど使わなかったけれど、残り3日くらいで米が無くなり、思案していた時一緒になった旅人に「スパゲッティが軽くていいよ」と教えてもらい、これで作りました。開口部が広くて麺をゆでやすいし、注ぎ口のおかげで湯切りも楽。意外な使い道を発見しました。
器によそわないで、直接ソースをかけて食べたのですが、当時は1人前用に小分けになったソースが無く、2人前を1度に食べていたので結果的にコストパフォーマンスが悪くなってしまいました。
持ち手がたためるので少しだけパッキングしやすくなるので、1人用としては大きいですが、登山やキャンプの時にコーヒーを淹れるために持って行っています。
一度、焚火に掛けたら煤で真っ黒になってしまい、たわしでこすったらピカピカに戻り、逆に味が出なかったので、この子はこのまま使っていこうと思います。
コールマン分離型ストーブ 4020HPAJ
調理をするにはこれが無いと始まりません。
キャンプ初心者の私にはガソリンストーブは敷居が高く、カセットボンベ(CB缶)を使う物はまだまだ普及していませんでした。なのでホームセンターで見つけたこの商品を持って行きました。現在は廃版になっています。
圧電式の着火装置が付いていて点火が容易で、OD缶使用なので火力の調整も簡単です。そのおかげで焦げ付かせずに米を炊く事が出来ます。
しかし、ガスの残りが少なくなるとホームセンターを探して右往左往。北海道、特に札幌圏を抜けると、ドラ〇ンクエストのように街から街まで何もなく、旅のルートを大きく外れて探すことになり、とても苦労しました。
心配症の私はこの先にホームセンターが無いかもしれないと思い、ついつい大きなサイズを余分に買ってしまって、少ない積載量を圧迫することになってしまいました。
キャンプの朝、一番に起きて、朝焼けの中このバーナーの燃焼音を聞きながらコーヒーを淹れるのが、キャンプ最大の楽しみです。その瞬間を求めてキャンプに出かけると言っても過言ではありません。
ユーコ キャンドルランタン
出発直前にヘッドランプの球が切れ、急遽これを持って行きました。当時はLEDランプが普及しておらず、電球を使うモデルはやたらと電池の消費が激しかったので、だったらいっその事と思い、灯りはこれしか持って行きませんでした。
実際、旅に出ると日没と共に寝て、明るくなったら起きるという生活が続いたので、あまり使いませんでした。ただ、雰囲気は抜群で、今もソロキャンプで本を読むときにはこれだけです。揺らぐ炎のおかげで、心が落ち着きますし、暗さに目が慣れ暗闇でも意外と見える事に気が付きます。
明るさが照明のすべてではないという事を教えてくれました。
イスというより腰かけ
写真の袋に収納できます
骨組みがスチール製なので、見た目以上に重たいですけれど、たたんだ時にペッタンコになり、パニアバッグを圧迫しないのでこれを選びました。
出発前に使用頻度を想像した時にあまり使わなさそうだし、何と言っても重いと感じ、かなり悩みましたが、実際には雨の日が続き地面に座る事が出来ない日が多くて持って行って正解でした。しかし、背もたれがないので長時間座っているのが辛くて、調理が終わったら早々にテントに入りました。
この経験から、その後の登山、キャンプで持って行くもの、必要のないものの取捨選択が出来るようになりました。何事も経験が大切です。
もっと軽くて座り心地の良いイスもあるのでしょうが、運べる荷物に限りにある場合にこの圧倒的な仕舞い寸法の小ささは大きな魅力です。逆にスチール製という事が、多少雑に扱っても大丈夫という安心感につながっています。
キャンドルランタンとの合わせ技
決して明るくないキャンドルランタンと、重たい腰かけを使っているもう一つの理由がこれ。ある意味シンデレラフィットです。
腰かけをひっくり返して、穴の開いている所にキャンドルランタンのフックを引っ掛ける事で、テント内でも安定して使うことができます。
旅の後半の雨の夜、テントの中で地図が見たくてこの方法を考えつき、辛い旅の途中、自分は天才じゃないかと喜んでいました。腰かけの座面がフラットなのでちょっとの事では倒れません。とても安定しています。
それから意外な作用があり、狭いテントであればロウソクの炎だけでも結構温かくなります。お盆を過ぎて、寒さとの戦いになった旅の終盤でこの発見はとても助かりました。
購入したのは更に10年前
これらの道具を購入したのは、旅に出る更に10年前になります。ですから今から約20年も前です。妻とお付き合いを始めた頃、長期休暇の度にキャンプ道具を車に積んでは、北海道をあちこち走っていた頃です。
当時はアウトドアの知識もなく、当然インターネットも普及しておらず、全て”雰囲気”で購入しました。
旅をするにあたり、あまりお金は掛けられなかったので、既に所有していた道具を持って行きましたが、北海道縦断どころか、あれから更に10年たった今でも現役です。
一つひとつに思い出があり、あのキャンプ場でライダーさんと焼き肉をした、あの夜初めてご飯が上手に炊けた。掛け替えのない時間を共にしてきた仲間です。傷の付き具合、凹み、塗装の剥げた所まですべて愛着があり、これからもずっと大切に、しかしガシガシと使っていきたいと思っています。
旅の記憶 今思うこと
旅の間半分は雨だったように記憶しています。スタートして2~3日は日差しがありましたが、小樽を抜け、日本海側の絶景を眺めながら走る通称オロロンラインはくもり、稚内に着くころには土砂降りになりライダーハウスに飛び込みました。ほぼ毎日パンクするし、辛い記憶しかありません。
しかし稚内市街を抜けていよいよ宗谷岬に向かう時、体の奥から何とも言えない感情が沸き起こり、大声を出してペダルを回しました。到着してからはしばらく宗谷岬の海を眺めて、普段飲まないビールで一人、乾杯しました。
帰って来てからは、自分が凄い冒険をしたという実感がなく、それまでと変わらない生活をしていましたが、時々天気予報で地図を見ると「あんな所まで行ったんだ」と思い、弱気になった時に自分を奮い立たせくれています。
登り坂のさきにあなただけの道
自転車を漕いでいると、平たんな道、登り坂に暗いトンネル、楽しい下り坂いろいろあります。
平たんな道は何も考えずに進めますが、ちょっと登り坂になると「苦しい、もう止めたい」と思ってしまいます。トンネルは暗くて何も見えず怖くてたまりません。かと思えば下り坂になればどこまでも行けるような気になります。
けれど、楽しい下り坂はちょっとハンドル操作を間違えると大ケガになるし、急には止まれません。どんなに怖くても、漕ぎ続ければ必ずトンネルの出口はやって来ます。新しい街が現れます。
長くて苦しい峠もゆっくり、少しずつ進めばきっと素晴らしい景色が待っています。どうしても苦しければ休んでも良いんです。諦めないで漕いでいればきっとゴールにたどり着けます。
気が付くと後ろには道が出来ています。さあ、あなたも自分だけの道を進んでみませんか?
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