ともぞう
実際にあった恐怖の山岳事故から危険を学び安全で楽しい登山をしよう!

実際にあった恐怖の山岳事故から危険を学び安全で楽しい登山をしよう!

登山は楽しいものですが、一歩間違えば命の危険があるスポーツでもあります。現に毎年、人命に関わる事故が起きており、山岳事故は他人事ではないといえます。

つい先日も、富士山の山頂付近にいた20代の女性が落石により命を落とすという痛ましい事故が起きてしまいました。

NHK NEWS WEB:富士山山頂付近で落石 登山中の女性1人死亡

登山をするときは自分は大丈夫と思わず、常に危険性を考えながら楽しむべきです。

今回は、身の毛もよだつ山岳事故の恐怖と登山の際の注意点をご紹介したいと思います。

国内の主要な山岳事故

雪山への登山

登山がメジャーなスポーツになってずいぶんと経ちましたが、自然を相手にする以上、人の力では防ぎきれない事故が起きてしまうものです。

アウトドアの世界では、毎年のように事故が起きています。特に山ではいろいろな事故が起こりうるので、ここではこれまで国内で起きた主要な山岳事故をご紹介します。

トムラウシ山遭難事故

トムラウシ遠景

山岳事故の死亡原因で最も多いのもののひとつが低体温症です。

低体温症と聞くと冬に起こると思われがちですが、夏でも条件さえ揃えば十分起こりえます。まさか真夏に凍死するなんてそんな馬鹿なことがあるか!とほとんどの人が考えるでしょうが、そのまさかが起こったのがトムラウシ山遭難事故でした。

北海道大雪山系トムラウシ山で起きたこの事故は、登山史の中でも最悪の事故の一つです。

2009年7月、50代~60代の登山経験があるツアー参加者15名に経験豊富なツアーガイド3名が付いて2泊3日のツアー登山が開始。初日は順調でしたが、2日目に運悪く悪天候に見舞われ装備が濡れてしまったメンバーもいました。3日目も天候は回復せず、ガイドは迂回ルートから下山することを決定。

その日の気温は午前中は約6℃、午後は3.8℃とさらに低下したものの、登山客は十分な防寒着を持っていました。まるで台風のような暴風雨の中、必死に下山している最中、ツアー参加者が倒れ込み、意味不明な言葉を発して痙攣を起こす人まで出てきました。

ツアーガイド達が相談した結果、行動不能になった人達はその場で救援を待つことにして、残りの参加者を引き連れ下山を決行。しかし異変は他の参加者にも起こり始めます。次々に倒れる参加者達。そのうちに、なんと先頭を歩く経験豊富なツアーガイドまでもが理解不能な行動をとり正気を失ってしまいました。

遂にはガイドと登山客合わせて18人中8人もの死者が出るという悲惨な遭難事故になります。後日実施された司法解剖の結果、死者8名全員が真夏にも関わらず低体温症による凍死であったそうです。悪天候の中のツアーを強行したことが原因であると言われています。

一度低体温症になってしまうと、次第に体が動かなくなり、そのうち錯乱状態になります。参加者の中には突然奇声をあげて倒れる人や、正常な判断力を失い防寒着を持っていたにも関わらずザックに入れたまま亡くなっていた方もいたそうです。周りがどんどん正気を失っていくのは、すごく恐ろしいですよね。

山では少しの判断ミスが命取りになります。特に低体温症はどこの山でも条件さえ重なれば起こりえます。登山の際は必ず低体温症の対策をするようにしましょう。

参考:トムラウシ山遭難事故調査特別委員会 トムラウシ山遭難事故調査報告書

2014年御嶽山噴火事故

御嶽山

日本は火山大国ですが、都市部の近くにはあまりないので、ほとんどの人は危険性を感じることなく過ごしているでしょう。しかし、もし登山中にいきなり火山が爆発したらどうしますか?

そのいきなりの噴火が起きてしまったのが、2014年の御嶽山噴火です。

御嶽山は、警戒レベル1という噴火の可能性が低い状態であったにも関わらず、突如として噴火しました。火山が噴火すると、まず爆発で噴石という大きな石が飛んできます。なかには大型トラックほどの大きさのものもあり、人間に直撃すれば簡単に潰れてしまいます。他にも火砕流や火山性ガスで窒息することもあります。

御嶽山噴火では山登りを楽しんでいた登山者ら58名もの死者が出るという戦後最悪の火山事故になりました。やはり主な死因は噴石の直撃による外傷がほとんどで、他には火山ガスの吸引によるものもあったと推測されています。一般的な火山の噴火前の前兆が見られなかったことから、回避することは非常に困難な事故だったと言えるでしょう。

最近では同じく警戒レベル1とされている浅間山が噴火しました。活火山に登る際は十分に注意して登らなければいけませんね。

産経ニュース:生還女性が初めて語る「あの時」「焼け死ぬのか、溶けるのかな…」

福岡大学ワンダーフォーゲル部ヒグマ事件

ヒグマ出没

ある日、森の中で熊さんに出会ってしまったら…こんな歌がありますが、話しかけるのは意外と有効らしいですよ。人間の存在を認識して、熊の方から避けてくれることもあるみたいです。

細かい熊対策は割愛しますが、いきなり森の中で巨大な熊に出会ってしまったら、普通は恐怖で何もできないと思います。

1970年、福岡大学ワンダーフォーゲル部ヒグマ事件では、日本最強の生物であるヒグマの襲撃を受け、ヒグマの機嫌を損ねたために3人が惨殺されるという事故が起きました。

同好会のメンバー5名は、北海道日高山脈でヒグマと遭遇。ヒグマはテントの外に置いてあったザックの食糧を漁って食べていましたが、隙を見てメンバーが荷物を取り戻した結果、執着心の強いヒグマによって下山するまでの3日間、度重なる襲撃を受けることになりました。ヒグマの生態を理解していない行動によって起きた事故と言えます。

被害者の一人のメモが残されており、判別不能なほどに乱れた筆跡で何度も執拗に襲撃を受けた様子が記録されています。熊は獲物の新鮮さを保つために、生きたままお尻や脚から食べる習性があります。海外では、熊に食べられながら息絶えるまでの間、母親と電話をし続けたという事件もありました。

野生動物にはそれぞれ習性があり、出会ってしまったときの対処を少し間違ってしまうと大事故に発展してしまうということですね。

ヒグマの会:ヒグマ事件を読み解く

西穂高岳落雷遭難事故

西穂高岳

大声で叱ってくる怖いおじさんのことを雷親父と呼びますが、落雷に比べれば遥かに優しいものでしょう。

落雷の直撃を受けたときの死亡率は80%ほどです。運が良ければ生き残ることもありますが、ほとんどの場合はショックによる心肺停止に陥り、適切な処置がなければそのまま死に至ります。

1967年8月、西穂高岳で起きた落雷事故では、長野県松本深志高校の高校生と教員を含む55名のうち11名が命を落としました。

学校行事の一環での登山中の事故でした。この西穂高岳落雷遭難事故は落雷によるものでは登山史の中でも最悪の事故です。特に夏場は上昇気流によって雷雲が発生しやすい時期でもあり、天候悪化の兆しがあればすぐにでも下山するべきです。

落雷による死亡事故は意外と多く、毎年10件以上起こっています。落雷の対策はあるにはあるのですが、100%防げる方法は存在しないので、山の天気にはくれぐれも気をつけましょう。

長野県山岳連盟:松本深志高校落雷遭難から40年

登山の基本的な注意点

槍ヶ岳山頂から望む槍ヶ岳山荘

ここまで国内の主要な登山事故について話して来ましたが、登山の際は何に注意して登ればいいでしょうか。

山の中では、時間や地形を考えて臨機応変に行動しなければなりません。そのためには、正しい行動と、トラブルに対処する方法を知っておく必要があります。注意点さえ知っておけば必ずしも危険を回避できるというわけではありませんが、知らないよりは格段に安全に登山できます。

まず登りたい山が決まったら、登山計画を立てましょう。計画を考える際は、以下の点を確認してみてください。

チェック

  • コース
  • コースタイム
  • 休憩地点
  • 難所
  • エスケープルート
  • 避難所、山小屋

上記のポイントを踏まえて説明するので、是非参考にしてみてくださいね。

コースに気をつけよう

登山コースを確認

コースによって難易度は大きく変わることもあるので、必ず自分のレベルに合わせて選びましょう。また、コースタイムはペースを把握するためにも確認しておきましょう。また、コースタイムの目安となるチェックポイントと休憩地点はだいたい重なるので合わせて確認しておくといいでしょう。

また、コース中には足場が悪いところや崖を登らなければならない難所がいくつかあることも多いです。山によっては迂回できないこともあるので、ある程度覚悟しておく必要があります。

エスケープルートとは、天気が崩れた際や、体調が悪くなったりした際など、急遽下山する必要が出たときのためのコースです。万が一のときに備えて、必ず確認しておくといいでしょう。避難所や山小屋も、非常時に利用するために確認しておきましょう。

時間帯に気をつけよう

山頂の夕暮れ

時間帯には十分に気をつけましょう。登山開始の時間は殆どの場合午前中です。早朝の暗い時間帯だと道に迷うことがあるので気をつけましょう。また、下山の時間にも要注意です。山の中では夕方でも薄暗くなるので、できるだけ早めに行動することが基本になります。

天気に気をつけよう

落雷

山の天気は変わりやすいとよく言いますが、夏山の場合は特に顕著です。雨に濡れると体温が下がってしまい、そのまま風に吹かれ続けると低体温症などの危険もあります。それだけではなく、気温が高いと雷雲が発生しやすいため、落雷の危険もあります。5月から10月の間の気温が高い日は気をつけましょう。

足元が滑りやすくなって滑落することも十分ありえます。天気が悪くなったら諦めてすぐに下山するということを頭に入れておきましょう。

水分とエネルギー補給、休憩に気を使おう

登山では水分補給が肝心

脱水症状を防ぐための水分補給も大事ですが、歩きながらのエネルギー補給も忘れてはいけません。空腹状態のまま歩き続けてしまうと、突然動けなくなってしまうこともあります。これはいわゆるシャリバテと呼ばれるもので、ハンガーノックという症状です。登山の際は、簡単に補給できるゼリーやすぐに食べれるおにぎりや飴などを合間合間に補給するように心がけましょう。

自分の体力と経験に合わせて山を選ぼう

雪山の稜線を歩く

登山では無理をしないことが肝心です。自分の体力や経験、知識がどれくらいあるかということを考えて登る山を選ぶようにしましょう。とはいえ、過度に怖がってしまって挑戦できないのももったいないので、自分のレベルでは不安のある山に登る際は、経験豊富な人と一緒に行くといいでしょう。

危険を知って安全な登山を楽しもう

山頂で手を広げて喜ぶ女性

登山をするときは常に危険と隣り合わせであるということを忘れてはいけません。どれだけ経験がある熟練者でも、少し気を抜いただけで事故に遭うこともあります。

しかし危険はあるとはいえ、登山で得られる感動や達成感は他には代えがたいものがあります。危険性を十分に知ったうえで安全に登ることが、登山を楽しむ第一歩です。この記事を参考に、安全な登山ができることを願っています。

紹介
ギア
X 閉じる
  • ともぞう
  • ともぞう
  • カワサキのエリミネーター250SEに乗って、主に関東周辺でキャンプツーリングなどやっております。山にも登ります。スノボもやります。とにかく外で走り回るのが好きです。最近のマイブームは美味しいチャイを探すこと。

記事についてのご意見やご要望、修正依頼、表示の不具合などございましたらお知らせください。返信が必要な場合はお問い合わせフォームからお願いします。




このライターが書いた他の記事

フォローミー

キャンプクエスト公式SNS
  • 日毎
  • 月間
  • 殿堂