緊急事態宣言で不要な外出が出来ないので、キャンプもしばらくお預けという方も多いかと思います。在宅勤務にシフトして1年近く経つ方もいらっしゃるでしょう。リモートワークのうえ、休日もどこにも行かずに毎日を過ごしていると体がなまっていくのを感じます。そこで近場でサクッと日帰り登山ができる低山が無いか調べてみました。
千葉県は南房総にある低山「富山(とみさん)」はビギナーに優しい、ピクニック気分でサクッと登ることができる、日帰り登山におすすめの山だとブログや口コミで紹介されていたので、人がいない早朝に登ってみました。実際は思っていた以上にハードな山でしたよ。
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目次
標高349.5mの低山「富山(とみさん)」
富山(とみさん)は千葉県南房総市にある標高349.5メートルの低山です。「富山」といっても富山県のことではありません。
2つの峰からなる双耳峰なので頂上が2つあります。展望台がある北峰が349.5m、登山ルートから北峰の手前にある南峰が342mです。富山の周りには高い山が無く、周りを遮るものが無いので360度パノラマ絶景を楽しむことが出来ます。
曲亭馬琴の小説「南総里見八犬伝」の舞台として古くから知られ、最近では現天皇陛下が皇太子の時代にご夫妻で登られた山として一躍有名になり、今では愛の山として親しまれているんだそうです。
ここまで見ると、良いこと尽くしのちょっとした有名な山って雰囲気ですよね。期待感が強まります。
富山の登山コース
富山の登山コースは大きく分けて3つあります。伏姫籠穴コースと福満寺コース、伊予ヶ岳と富山を縦走するコースです。
参考:南房総いいとこどり
伏姫籠穴(ふせひめろうけつ)コースの途中には、かなり険しい道のりの上級者向けである西尾根コースというのもあるみたいです。縦走するコースは伊予ヶ岳の登頂ありきなので割愛させて頂きます。
福満寺コースから登頂を目指し、下山は伏姫籠穴コースを利用というのが一般的だったようですが、現在「伏姫籠穴コース」は通行止めになっています。2019年の台風15号の影響で崩落したためです。そのため現在の登山コースは「福満寺コース」1択です。伏姫籠穴コース通行止めの正式なアナウンスは最近出たようで、それを知らずに伏姫籠穴コースを利用してしまった方からは悲惨なレポートが数多く掲載されていました。
富山へ登ってみた
富山のコースタイムは早い人で1時間前半、遅い人でも2時間程度で登頂できます。往復で3時間~4時間程度見ておけば問題ないと思います。遅くともお昼前から登りたいところです。今回は緊急事態宣言中ということもあり、人がいない早朝を狙いました。
南房総市営駐車場~登山口
車で行くことを前提でお話すると、登山口から一番近い駐車場は南房総市営駐車場です。35台程度駐車可能で、嬉しいことに無料です。伏姫籠穴ルートにも駐車場がありますが、前述通り2021年2月現在、通行止めです。
駐車場入口には、伏姫籠穴コースについての注意書きがあります。通行止めとは書いていないので勘違いして行かれる方もいらっしゃるかもしれませんね。
駐車場を出て右方向に歩いて行きます。間違っても左方向に歩かないでくださいね。目の前に見えるラクダのコブのような形の山が富山です。普通の道路で周りに何も無いので、初めて行かれる方はちょっと不安になるかもしれませんね。
10分程度歩くと、登山口である福満寺の入り口が左手に見えます。看板が小さいので見落とさないように注意したいところです。
福満寺
参道を進んでいくと福満寺の仁王門があります。立派な門ですね。
仁王門はくぐらないで、右の脇道を進みます。
すると休憩所があります。灰皿が置いてあるので個人的には助かりました。トイレがあるので先に済ませておきたいところです。ちなみに頂上にも簡易トイレがあるので安心です。
休憩所には竹の杖が山積みになっています。結構な数の方が登頂されるみたいですね。富山は前半の結構な坂と後半の階段が地味にダメージを与えてくるので、体力や足腰に自信の無い方は使ったほうが良いです。私は竹杖を使わずに後で地獄をみることになりました。
それでは登山スタートです。右手にお墓があるコンクリート製の脇道を登っていきます。
1合目
1合目までは地味に堪える階段とコンクリート製の急な坂道、山道をひたすら登っていきます。
至る所に台風15号の爪痕が残っていて、結構荒れた状態になっています。これでも相当綺麗になったほうなんだそうです。如何に強烈な台風だったかがわかります。
写真では伝わりませんが結構な坂道です。周りは木々に囲まれているので景色を楽しむことはできません。
分岐が見えてきました。富山方面(右)へ向かいます。左の福満寺へ進むとお寺の外れの道路に出ます。下山時に間違って福満寺方向へ行ってしまい、遠回りしてしまいました。下山時には注意しましょう。
ここからはひたすらコンクリートの急な坂道を登ります。地味に足に負担がかかります。
20分程歩くと1合目の標識が見えてきます。富山は7合目まではこのような標識があるので判り易くて励みになります。1合目までは結構な坂道なうえ距離が長いので、ここで心が折れる方も結構いらっしゃるかと思います。ここまでの正直な感想は思った以上にハードだということ。
2合目
引き続き急な坂道を登っていくことになります。景色に変化が無いので結構苦痛でした。
枯れ葉で埋もれてわかり辛いですが、地面はコンクリートです。歩きやすいのですが足への負担はボディブローのように効いてきます。
10分程歩くと2合目の標識が見えてきます。2合目までは本当に長い道のりに感じるので精神的にもきます。
3合目
3合目までも引き続き地味に急な坂道をひたすら登っていきます。
3合目あたりからは台風の影響の倒木が目立つようになってきます。
単調でハードな道のりを登っていくと、希望の3合目の標識が見えてきました。
10分ほどで3合目の標識に到着です。2合目以降は10分くらいで標識に到着するので、1合目の時のような「え、まだ1合目なの?」といった感じはなくなり、この辺りでやっと登山を楽しめる気持ちになってきました。
4合目
4合目は今までの苦労のご褒美かのように、緩やかな平地と下りが続きます。気持ち的に楽になり、やっと登山が楽しいと思えてくると思います。
4合目まではゆとりが無かったので周りの景色を楽しむ暇もありませんでしたが、富山は1月~2月あたりは水仙が見ごろなんです。所々に水仙が咲いていました。
椿の花も咲いてますね。登山は景色を楽しみながらだと楽しくなりますね。
5分くらいであっというまに4合目の標識です。大分テンションもあがってくるかと思います。台風の影響で石の標識は倒れてしまい木製に変わっていますね。
5合目
5合目も引き続きイージーモードです。平坦な道と下りが続きます。
5合目あたりから根元から倒壊した大木を目にすることが多くなります。
平坦な道と下り坂の繰り返しですが、この辺りの標高を計ると200メートルくらいでした。確か山頂は300メートル以上あるので、この先はひたすら登るのではと頭をよぎります。
10分ほどで五合目の標識に到着です。こちらの標識も木製に変わっていました。
以前の石の標識は横に置かれていました。台風の威力は凄いですね。
6合目~7合目
引き続き平坦な道を進みます。暫く進むとちょっとした広場があり、ベンチが見えてきました。
登山に慣れていない方は、ここで一旦休憩することをおすすめします。というのがこの先、急な階段の連続になるからです。
今までの標高を取り戻すかのように、急な階段が続いていきます。段差が高く、足への負担はかなりのものです。
登っても登っても階段の連続です。後半は階段との闘いになります。
所々に落石もあるので、場所によっては足場が悪いところがあります。
無になってひたすら階段を登り続けると、7合目の標識が見えてきました。途中で6合目の標識を見かけなかったのですが、恐らく台風で倒壊したままになっているんだと思います。
7合目の標識は崖みたいな場所にあります。ベンチもあるのでここで一休みしたいところです。
南峰手前の広場まで
引き続き階段をひたすら登っていきます。後半は階段地獄です。登山というよりはハイキングですね。
7合目を超えたあたりから景色が開けてくるので、眺めが良くなります。場所によっては海が見えるので気持ち的に前向きになってきます。いよいよ頂上が近づいてきたといった期待感が出てきます。
倒木具合も激しくなってきます。至る所で根こそぎ倒れた大木を目にすることになります。
危険な場所にはコーンが立っています。復旧までかなりの時間がかかりそうですね。
階段を登りきると北峰の標識がみえてきました。この先は平坦で広場のような道を進んでいくことになります。7合目からここまで10分程度でした。
南峰
先にも行ったとおり富山は頂上が2つあり、この神社のような階段を登ると標高342mの南峰に到着します。
登りきると廃墟のような建物があります。観音堂です。周りは木が生い茂り、倒木も激しいので、景観は望めません。本当に頂上なのかといった雰囲気でした。
台風の影響なのか全体的に朽ち果てていて倒木も激しく、頂上地点である三等三角点を見つけられませんでした。この先は道が無いので一旦元の場所まで下ります。
北峰手前の観光名所群
元の道に戻り、北峰展望台の方向を目指します。北峰に続く道は平坦で、様々な観光名所が点在しています。
ここには石仏群があるらしいのですが、倒木が激しく、奥に入れそうにありません。
東屋の広場の手前に、冒頭でご紹介したもう一つの登山ルート「伏姫籠穴コース」の合流地点があります。現在はコーンとロープと札があるので立ち入り禁止と判るようになっていますが、最近までは標識が無かったそうなので多くの方がここから下山をして引き返すことになったようです。
謎の金の文字の入った石碑が見えてくると、いよいよ東屋のある広場が近づいてきた合図です。
東屋手前に有名なスポットの一つ「愛の鐘」があります。皇太子ご夫妻がご登頂されたことをきっかけに、富山は「愛の山」として一躍有名になったようで、そのことがきっかけで「愛の鐘」が作られたようです。
「愛の鐘」の後ろには樹齢300年のボタン杉の巨木があります。こちらは古くから縁結びのご利益があるとして親しまれてきたんだそうです。「愛の鐘」とセットで、ダブル縁結び効果のある超縁結びスポットですね。
東屋が見えました。ここから伊予ヶ岳を縦走するルートに行くことができます。登山慣れした上級者は富山だけでは物足りないので伊予ヶ岳へ縦走するみたいです。
東屋からは南房総の街並みと海を一望できます。快晴であればもっと素晴らしい景色だった筈です。
東屋の隣には「里見八犬士終焉の地」の碑が立っています。曲亭馬琴の小説「南総里見八犬伝」では、戦いに勝利した八犬士が富山に隠棲し、仙人になったといった終わり方をするそうなんです。小説のファンの方にとってここは聖地巡礼地なんでしょうね。
北峰に到着する手前で聖地巡礼地や名所が目白押しでした。残すは北峰のみです。
北峰頂上~展望台
北峰に向かいます。手前に簡易トイレが2つありますよ。定期的に掃除で巡回されているので、とても綺麗でした。
平坦な道かとおもいきや、最後に急な階段が待ち受けていました。
しかも思った以上に長くて急な階段です。最後の力をふり絞って登ります。
階段を登りきると金比羅宮が右手にあります。折角なのでお参りしました。
北峰展望台がみえてきました。真っすぐ進めば展望台のある広場です。山頂は右手奥にあるので、先にそちらを目指します。
北峰山頂です。ここまでの所要時間は2時間でした。普段運動されていて足腰が丈夫な方でしたら1時間半くらいで登頂できるのではないでしょうか。
展望台のある広場はそこそこの広さがあり、テーブル付きのベンチが4組ありました。ファミリーでピクニックに最適な場所という印象でした。
展望台手前には、皇太子ご夫妻が平成11年2月5日にご登頂された記念碑と、お印が植えられています。
南峰とは雲泥の差の北峰。展望台も思っていた以上に立派な建物でした。早速登ってみましょう。
周りに遮るものが無いので360度アラウンドビューです。
展望台の手すりには、その方向に何が見えるか書かれています。ここからは富士山が見えるそうなのですが、今日は雲があり見ることが出来ませんでした。快晴だと絶景なんだと思います。
廃墟同然だった南峰も展望台から見えます。鉄塔があったんですね。登った時は全く気づきませんでした。
富山は周りに遮るものが無いので絶景というお話でしたが、今回は雲が多く、少し物足りない景色でした。快晴だったら本当に素晴らしい絶景を拝むことが出来たんだと思います。登山はキャンプ以上に天候に左右されますね。
下山
広場で簡単な食事を済ませ、30分くらいゆっくりしていましたが、時間的に登山者が増えだしたので下山します。
伏姫籠穴コースが通行止めなので、来た道を戻ることになります。帰りも同じ景色というのは、少し勿体ない気分になりますね。
登りより下りのほうが一見楽なように思えたのですが、長くて急な階段を降りる度に膝に負担がかかり続けたので、遂に両ひざが痛くなりました。低山だと思い、油断して杖を使わなかった代償がここでやってきます。
階段を抜けた後もコンクリートの坂道で膝に負担がかかり、下山するまでに結構な時間を要してしまいました。膝が痛くなったのは初めてのことです。日ごろの運動不足がたたったのか、周りの評判とは違い実はハードな山だったのか。どちらでしょう。個人的には両方だとおもっています。
結局下山に2時間を要しました。駐車場に戻ると車が沢山停まっていて驚きました。早朝は1台しか車がいなかったので富山は思った以上に人気のスポットのようです。早い時間に登山して正解でした。
富山に登頂してみた感想
低山であれば登山未経験者でも何とかなると思っていましたが、富山については思った以上にハードな山という印象でした。理由は前半に待ち受ける急なコンクリートの坂道と、後半に待ち受ける長くて急な階段です。距離にすれば3~4キロ程度と短いのですが、その代償として急な傾斜をひたすら登ることになるので膝への負担が想像以上です。
登山をされる方でも階段と舗装路はあまり好きではないそうなので、登山を楽しむというよりは運動目的な印象の山ではないでしょうか。それでも登頂した時の達成感と、開けた景色はすばらしいものがありました。これから本格的な登山をするための準備として、運動不足の解消におすすめの山だと思いました。
ギア
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