岩本利達
障がいがあってもキャンプを楽しめる!「ユニバーサルキャンプ」こそが自然教育の本質と言える理由とは

障がいがあってもキャンプを楽しめる!「ユニバーサルキャンプ」こそが自然教育の本質と言える理由とは

障がいがある人もない人も入り混じって楽しめるビーチ作りに取り組む「NPO法人須磨ユニバーサルビーチプロジェクト」は、2022年10月1日~2日の期間で、車いすでも楽しめる「ユニバーサルキャンプ」を開催する。

キャンプは「不自由を楽しむレジャー」という側面もあり、どうしても障がいを持っている方にとっては取っつきにくい部分もある。しかし、老若男女問わずキャンプと言う場を通してこそ可能な「自然教育」という視点から見ると、ユニバーサルキャンプこそが本質をとらえているとも考えられる。

そもそもユニバーサルキャンプとは?

車椅子と青年

ユニバーサルキャンプは、ユニバーサルデザインとキャンプを組み合わせた造語で、障がいがあってもなくても楽しめるキャンプのことだ。ユニバーサルデザインは、お年寄りや障がいを持った方でも使いやすいデザインであれば、誰もが使いやすいという考え方。したがってユニバーサルキャンプを広義でとらえるのであれば、「誰でも楽しめるキャンプ」という事になる。

しかし冒頭でも触れた通り、キャンプは自然を間借りして楽しむレジャー。木の根の段差を除いたり、安全に過ごせるように空調を導入したり、人間が手を加えれば加えるほど快適にはなるが、本来のキャンプからかけ離れていくことにもなる。この矛盾点こそがユニバーサルキャンプの本質に近づくポイントとなる。

自然の多様性「だけ」を見ていてはダメ

人の多様性

キャンプはレジャーの他にも自然教育という側面を持つ。平成20年に改訂された学習指導要領の中には、林間学校を含めた自然体験活動を通して道徳性の育成を図るよう配慮する必要があるという表記もある通り、文科省も認めた教育の一環でもある。

キャンプを通した学習の中でよく取り上げられるのは「自然の多様性」だ。普段街中で見かけることの少ない虫や植物に対しての興味を深めたり、川の流れや星の動き、火のおこし方などからも自然の多様性を感じ取るのは確かに重要。しかし、学習指導要領にもある通り、育まれるべきは「道徳性」、つまり集団生活においてどう過ごせるのかという事にも気を配る必要がある。

そうなると考えないといけないのは、自然の多様性だけでなく「人の多様性」。周りの人間が自分とどう違い、全員が快適に過ごす為にはどうするべきかというのを考える必要がある。これは子どもはもちろんだが、大人でも意識をしなければならない。

根底にあるのは「協力」と「共生」

義足の男性

「ユニバーサルキャンプこそが自然教育の本質である」と本題でも書いたのは、自然の多様性も観察しつつ、集団生活における「協力」と「共生」が出来る意識を育むという意味でユニバーサルキャンプが適当である、という意味だ。

普段、街中で困っている人に声を掛けられるのは、こういった「協力」と「共生」の意識がある方達だろう。困っていると認識しても、中々声がかけづらいというのは、私自身も経験するところであり、反省しないといけないとも思う。

ユニバーサルキャンプは今後拡大すべきコンテンツ

義足

上で述べたことを総括すると、ユニバーサルキャンプはキャンプ場をユニバーサルデザインのもと誰もが楽しめるキャンプ場にするという考えではなく、参加する方たちがユニバーサルキャンプを念頭に置いて協力、共生していく考えが肝要である。

レジャーという枠組みだけで考えればそこまで肩肘を張る必要はないが、子どもの教育の一環としてキャンプを考えているご家庭はこういった取り組みにも積極的に参加してほしい。今はまだまだ開催数は少ないが、非常に有意義な取り組みなので、今後様々な団体での実施が増えることを期待している。

紹介
ギア
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  • 岩本利達
  • 岩本利達キャンプクエストNEWS編集部
  • NCAJキャンプインストラクター/JACオートキャンプ指導者
    『子どもを育む場としての「キャンプ」こそ持続可能な社会の第一歩』をテーマに、環境意識やサバイバル知識を高めるために日夜活動。ガジェット/ギアマニアの視点から最新アウトドアニュースをお届けします。

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