先日Twitterで“シーズニングの謎の3大誤情報“というワードが目に飛込んできました。
- シーズニングにオリーブオイルを使う
- クズ野菜を炒める
- 使用後に洗剤を使ってはいけない
この呟きをしたのは約1年前からキャンプギアを取り扱い始めた岡田鋳物さん。自身で作った製品を何百枚もシーズニングをしてきた結果辿り着いた結論とのこと。
「謎の3大誤情報?ぜ…全部やってるけど?間違い…!?」そう思ったのは自分だけではないはず。シーズニングしたはずなのにくっ付くし、それなのに洗う時は洗剤禁止…しかも得意気にクズ野菜を炒めてたぞと…。
正直スキレットなどを使うのが億劫になってたところでもあったので、3大誤情報の理由と実際に行っているシーズニング方法を教えて頂きました!
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目次
正しいシーズニング方法を岡田鋳物さんに教えてもらいました
出典:岡田鋳物今回教えて頂いた方法だけでなく、色々と調べている中で得た情報も含めています。
最終的にはくっつかなくなれば良いのでこれが正解!というわけではありませんが、これまでやってきたシーズニングに不満がある方は騙されたと思ってやってほしい方法です!
実は間違い?思い込み?クズ野菜を炒めるのは無意味?
「きちんとお手入れすれば鋳物は一生物(岡田鋳物さん談)」
これからシーズニングを実践するにあたって、これまで自分が参考にしてきたシーズニング方法を振り返ってみます。
今までやってきたシーズニング方法
スキレットの注意書き、そしてアウトドア雑誌から得た知識でやっていたシーズニングは以下の通りでした。
- 食器用洗剤でよく洗う
- 水分をよく拭き取る
- 食用油を薄く塗る(サラダ油orオリーブオイル)
- 火にかける
- 煙が出てきたら(出る前に)火を止めて冷ます
- 3〜4を3回程度繰り返す
- 最後にくず野菜を炒める(香りが強いネギなどがオススメ)
- 完成
どうでしょうか?正しいシーズニング方法を知らなければ、これの何がおかしいの?と思うでしょう。実際、キャンプ仲間に聞いてみても何がおかしいのか分からないとの回答ばかりでした。
正しいシーズニング方法
今回学んだ正しいシーズニング方法は、今までのやり方と同じような工程を経ていますが、よく見ると若干違います。
- 食器用洗剤でよく洗う
- 水分をよく拭き取る
- グレープシードオイルを薄く全体に塗る
- 中火で火にかける
- 煙が出始め、煙の量が落ち着いてきたら火を止めて冷ます
- 3〜5を3回程度繰り返す
- 完成
その若干の差が仕上がりに大きな差をつけることになるんです!
シーズニングはポリマーの被膜を形成させること!
これまでは雑誌で読んだ方法で“とりあえずやっとくか“程度にしか思っていましたが、ちゃんと理解しておかないとシーズニングの効果はかなり薄くなってしまいます。
シーズニング本来の目的
今までは特に考えもせず油を塗って火にかけていましたが、正しいシーズニングとは塗った油を熱することで起こる化学反応(重合化)を利用して、重合体(ポリマー)という皮膜を表面に形成していくことだそうです。
油が重合化すると元の油とは分子構造が違う別の物質に変化し、その物質は油を弾いたりせずに良く馴染む性質(新油性が高い)を持っているので、結果調理の時に油を弾かなくなって油の馴染みが良くなるということでした。
専門的な話が山ほどあったんですが、難しいので簡単にまとめると…
ちなみにコンロの周りにあるボコボコの正体もポリマー
ポリマー、ポリマー…と、書いている自分もくどく感じますが、正しいシーズニングでは油を重合化させたポリマーの被膜をきちんと作ることが非常に大事になってきます。
※自分も勘違いしてましたが、シーズニングで出来る被膜は塗った油の被膜ではなく、塗った油が変化したポリマーの被膜だそうです。
オリーブオイルはシーズニングに不向きです
それではこれまでの方法と、正しいシーズニング方法の違いを順を追って説明していきたいと思います。
シーズニングにはグレープシードオイル一択!
シーズニングには「グレープシードオイル」という油が適しています(自分は存在すら知りませんでした)。
グレープシードオイルは乾性油という種類の油で、上述したポリマーを効率良く形成し易い“ヨウ素価“の値が124〜143と高い点が推奨される理由です。
乾性油とは空気中で徐々に酸化することにより、固化する油のこと。[出典:Wikipedia]
グレープシードオイルのヨウ素化は124〜143
このヨウ素価が130以上のものは乾性油、100〜130までは半乾性油、100以下は不乾性油に分類され、乾性油は加熱しなくても空気中で完全に固化する性質を持ちます(固化すると油が重合化してポリマーになる)。
サラダ油のヨウ素価は111前後、オリーブオイルは79〜90
グレープシードオイルがシーズニングに推奨される理由は、加熱しなくても固化するグレープシードオイルを、加熱することで“効率良く短時間でポリマーの被膜を作れる“からなんですね。
オリーブオイルは料理に使おう
本来専門誌であるアウトドア雑誌などでさえも「オリーブオイルを使ってシーズニングしよう」という記述をしているのもありますが、オリーブオイルは被膜を作り難い不乾性油に分類されています。
グレープシードオイルは寒くてもサラサラが特徴!
自分もキャンプ仲間もずっとオリーブオイルでシーズニングをしていました…。知らなかったとは言え、これでやった気になってたと思うと切ない…。
オリーブオイルは寒いと固まる…!
一応オリーブオイルでやることが全く無意味なわけではなく、加熱することで多少は重合化するみたいですが、グレープシードオイルはおろかサラダ油よりもヨウ素価の低いオリーブオイルでやる必要性はないみたいでした。
アマニオイルは熱に弱い
調べている過程で、アマニオイルのヨウ素価が168〜190とかなり高く、仕上がりも綺麗になるというのを発見しました。
ならばアマニオイルの方が良いのでは?と思ったんですが、アマニオイルは熱に弱い性質を持っているからか、使っているうちに形成した被膜がペリペリと剥がれてくるとの話もあるようです。
仕上がりが綺麗になるとはいえ、被膜が剥がれるリスク、そしてアマニオイルの値段が結構高いので、シーズニングにはグレープシードオイルの方が推奨されているんだとか。アマニオイルもオリーブオイル同様、料理に使って美味しく頂きましょう!笑
回数さえこなせば良い!?くっ付かないのラインはどこから合格?
シーズニングをする回数はあくまで目安なので、ポリマーの膜がしっかりと形成されれば何回でも良いそうです。
今回色々と教えてくれた岡田鋳物さんの合格ラインは目玉焼きがくっ付かなくなればOKということで、それが大体2〜3回。3回くらいやって1度試してみる感じでも良いと思います。
教えてもらったシーズニング方法を実践してみた
早速注意するポイントを押さえてシーズニングを実践してみました。
手順1. 洗剤でよく洗う
まずは中性洗剤とスポンジで余計な汚れや付着物を綺麗に洗い流します。
汚れや水分は錆びの原因に。しっかり洗いましょう!
金たわしなどはコーティングが剥がれたりするので使わないように。
手順2. 水分をよく拭き取る
水分が残っていると錆びの原因になるので、自然乾燥ではなくすぐに拭き取ります。
拭き取った後に軽く火にかけても水分を飛ばしても良いかも
手順3. グレープシードオイルを薄く全体に塗る
シーズニングは薄く塗って回数をこなすのが効果的かつ綺麗に仕上げるポイント。
ついつい沢山塗ってやりたくなっちゃうんですが、油の量が多いと被膜を形成する時にダマになってしまうんだとか。
使う表面だけでなく、裏面や取手部分、横にも塗るのも忘れずに。
ポリマーの被膜は錆びを防いでくれるので、使う部分以外にも塗る意味は大いにあるんです。
手順4. 中火で火にかける
グレープシードオイルを全体に塗ったら中火で火にかけます。推奨される温度(諸説あり)は200℃前後で、ガスコンロを使うと大体そのくらいになります。
※加熱は重合化を効率良くする為なので温度管理はきっちりしていなくても問題はないそうですが、熱し過ぎるのは皮膜を作る過程で必要な油が飛んでしまうので逆に効率が悪くなるみたいです。
ちなみにオーブンだと温度設定も時間設定も楽でムラ無く加熱出来るので、入るサイズならばオーブン推奨。
我が家には大きいオーブンがなく、3つ同時にやっていたのでコンロでやりましたが、他にはオーブンの代わりに魚焼きグリルを使っても上手く出来るみたいでした!
手順5. 煙が出始めるので、煙が落ち着いてきたら火を止めて冷ます
火にかけてしばらくすると煙が出始めてきますが、そのまま煙が落ち着くまで加熱します。大体煙が出てから10〜15分くらい加熱していると煙の量が少なくなってくるので、その辺りで火を止めて自然に冷まします。
写真で見るより結構出ます
加熱時間は30分から1時間を推奨している方もいたので、それを目安にしても良いと思います。
写真だと分かりづらいですが、この時出る煙は結構沢山出る上に臭いので、換気扇は必須。むしろ換気扇の真下でやっても匂いが部屋全体に充満するので、カセットコンロを使って屋外でするのが良いかも。
※改めて自分が持っていた雑誌を見返すと「煙が立つ前に火を止めて冷ます」と確かに書いてありました…。
手順3〜5を3回程度繰り返す
火を止めて自然に冷めたら、再びグレープシードオイルを塗って火にかける…を、3回程度繰り返していきます。
が!早く工程を進めたいからといって、急熱と急冷は厳禁。急激な温度変化は熱衝撃が起き、破損の原因になるので注意です。
焦らず丁寧に工程を繰り返した先には、心強いしっかりとしたポリマーの被膜が覆ってくれています。
正直やり方が上手いだけで自分がやったら失敗するのでは…?と不安でしたが、オリーブオイルを使い、適当に加熱してやっていたものとは仕上がりが全然違います(写真だと分かりづらいのが残念!)
しっかりと油が化学反応を起こしてくれたのか、ベタつかず手触りも良い感じです!
完成!
これまた写真だと分かりづらいですが、最初の頃より黒光ってくれています!
手触りは結構サラサラになります
オリーブオイルを使っていた時は加熱してもベタベタ、しまう時も塗っていたのでさらにベタベタ…。1度この方法をやれば以前のやり方には戻れないくらいの仕上がりの差を感じています。
シーズニングのビフォーアフター
手持ちのギアを改めてシーズニングをしてみたら違いがさらによく分かりました!
しっかりシーズニングが出来ました!
愛用しているチャムスのスキレットは最初からシーズニング済みの製品ですが、早く汚れを落としたくて何度もゴシゴシ洗ってしまっていたので、今回改めてシーズニングをしてみました。
部分的にくっ付くようになってきていました…
シーズニングの前に食器用洗剤でしっかり汚れを洗い流してから挑むことに。
買った時よりも黒さが薄くなっている感じ
これまではオリーブオイルをベタ塗りしていましたが、学んだ通りグレープシードオイルを薄く塗って回数をこなしました。
すると一部で挙がっていた“茶色を経て黒光る“と、噂の現象が発生。2回目くらいから茶色っぽい感じに変化して見えます。
2回目に熱している最中
そしてこれが完成品。ちょっと薄い色をしていたスキレットが茶色を経て立派な黒光りに復活!というかパワーアップ!
再シーズニング前とかなり違いが出ました
少し黄身を硬めに…と思ったら水を入れ過ぎてしまってパリッと焼くのは失敗してしまいましたが、とりあえず目玉焼きはスルンと一切くっ付かずに剥がれてくれたのでヨシ(笑)
料理の腕を上げたい…笑
1度やればもう戻れないくらいの仕上がりの差を感じています(2度目)
人はなぜクズ野菜を炒めるのか
「鉄臭さを消す為にシーズニング最後の仕上げにクズ野菜を炒める」というのはかなり有名な工程ですが、実はこれは“多くの方が実践しているのに根拠がない工程“だったんです。
紹介してきた通り、ポリマーの被膜がしっかりと形成されれば食材は素材の鉄に触れ無いので、食材が鉄臭いと思ったら正しくシーズニングが出来ていない証拠なのだそう。
過去の自分、めっちゃやってた…悲しい
シーズニングの意味をしっかり理解すれば納得ですが、「クズ野菜を炒めても、クズ野菜に火が通るだけ」。これは正しいシーズニングを知らなかった時はかなりのパワーワードでした。
使用前と使用後はどうすれば良い?
シーズニング方法は紹介した通りですが、使う前と使った後も結構悩みポイントだったりします。
- 使う前はシーズニングをした後なのでそのまま使う
- 使った後はスポンジを使って水洗い(洗剤NG)
というのが自分がキャンプを始めた時に聞いて以来ずっと信じてきた情報。
金属製のたわしなどはNG。スポンジで洗って下さい
この点についても聞いてみたところ、
- 使う前に洗ってもOK
- 使用後も洗剤を使って洗ってOK
とのことでした。
先に紹介した正しいシーズニングがきちんと出来ていれば、洗剤で洗った程度では被膜は落ちないので大丈夫。むしろ逆にきちんと洗わないのは不衛生なので、ちゃんと洗いましょうと教えてもらいました。
使った後は洗って再びシーズニングをしてはグレープシードオイルを薄く塗って保管するのがオススメですが、すぐに使う予定があるならそのままでもOKだとか!
育てる…とはよく言ったもので、使う度にシーズニングすればどんどん被膜は強くなる鋳物…恐るべしです!
使う時は弱火〜中火で
ちなみにきちんとシーズニングしていても扱い方が悪いと焦げ付きの原因になるみたいです。
鋳物製品は蓄熱に優れていて食材を乗せても温度が下がりにくいのが特徴なので、強火にしなくてもちゃんと火が通ってくれます。逆に強火にしてしまうと焦げ付いてしまうので注意が必要です。
きちんとシーズニングしてもくっ付くんだけど!という方は、少しだけ火を弱めてみると上手く使えるかもしれません。
プロも実践しているシーズニング方法を実践してみて
実践する前は腕が良いだけで自分がやっても上手くいかないかも…と半信半疑な気持ちもありましたが、ポイントさえしっかり抑えれば簡単に全然くっ付かないシーズニングをすることが出来ました。
なかなか写真だと伝わりにくいのが残念ですが、オリーブオイルを使っていた方は仕上がりの差に驚くことでしょう。最低でも半日はかかるので時間のある時じゃないと難しい部分もありますが、騙されたと思って試して欲しいシーズニング方法でした〜!
ギア
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