鋸山は千葉県で最も有名な山で、代表的な観光名所の1つでもあります。筆者もロープウェイを使って観光目的で行ったことがありますが、鋸山の山頂には行ったことがありません。何故なら鋸山の観光ルートは鋸山山頂から離れた場所にあり、山頂自体が観光スポットに含まれていないからです。そのため、多くの方が鋸山山頂の存在を知らないのではないでしょうか。
そこで今日は、まだ見ぬ山頂を求めて、ロープウェイや観光ルートを使わずに登山コースから登ってみることにしました。
目次
千葉県で最も有名な山なのに山頂の存在感が薄い「鋸山」
千葉県鋸南町と富津市の境にある「鋸山(のこぎりやま)」は、東関東自動車道館山線富津金谷インターから車で10分。房総丘陵の山の一つでもある標高329mの山です。
正式名称は乾坤山(けんこんざん)で、鋸山は実は愛称だったりします。南房総国定公園、関東の富士見100景、房州低名山、日本百低山に選定されています。
鋸山は良質な石材の産地として江戸時代から昭和末期まで採石が行われていた山。長きに渡り盛んに採石が行われた結果、山肌がノコギリの刃のようにギザギザになり、これが鋸山の山名の由来になっています。
石切場跡は今や千葉県屈指の観光名所で、地獄のぞきや、ジブリの世界のようだと評判の「ラピュタの壁」、日本寺の日本一巨大な仏像など、見どころ満載です。
観光コースはロープウェイや駐車場が完備されているので交通のアクセスが良好。多くの観光客が訪れます。
しかし先述の通り、観光ルートは鋸山山頂から離れた場所にあり、山頂自体が観光スポットに含まれていないので、山頂の存在感が薄いという可哀そうな山でもあります。
山頂からはどんな景色を拝むことができるのでしょうか。気になりますよね。
「鋸山」登山コース
出典:たび旅富津鋸山山頂へは観光ルートからも行くことが可能です。観光ルートを含めると登山コースは6つありますが、そのうち「安兵衛井戸と沢コース」と、JR保田駅から関東ふれあいの道「東京湾を望むみち」を使うコースは現在通行止めです。
現在利用できる登山コースは以下の4つです。
関東ふれあいの道コース
- JR浜金谷駅から山頂を目指す、標高差約320m/片道約2.4km/徒歩約100分~120分程度の登山コース
- 最寄りの駐車場は、駅や登山口周辺に民間の有料駐車場が沢山あるのでお好きな駐車場を利用
車力道コース
- JR浜金谷駅から山頂を目指す、標高差約320m/片道約2.6km/徒歩約80分~100分程度の登山コース
- 最寄りの駐車場は、駅や登山口周辺に民間の有料駐車場が沢山あるのでお好きな駐車場を利用
鋸山山頂ロープウェイから山頂を目指すコース
- 鋸山ロープウェイ山頂駅から日本寺を経由する、標高差約60m/片道約1.8km/徒歩約45分~60分程度の観光コース
- 最寄りの駐車場は「鋸山ロープウェー山麓駅駐車場」(駐車可能台数約100台/無料・トイレ有)※ロープウェー利用の方のみ駐車可能
鋸山山頂駐車場から山頂を目指すコース
- 鋸山登山自動車道から日本寺を経由する、標高差約60m/片道約1.8km/徒歩約45分~60分程度の観光コース
- 最寄りの駐車場は「鋸山山頂駐車場」(駐車可能台数約50台/無料・トイレ有)※但し通行料が1000円かかります
ロープウェイや鋸山山頂駐車場を利用すると、鋸山で有名な観光スポットへ行くことができます。日本一大きい大仏や、鋸山の崖に突き出た地獄のぞき、ラピュタの壁といった有名スポット満載ですが、入場料700円が必要です。
鋸山山頂を目指す場合は、日本寺北口管理所から外に出て登山道に合流します。
登山道を利用する場合、「関東ふれあいの道コース」か「車力道コース」を選ぶことができます。どちらもスタート地点は一緒なので、周回コースで利用する登山者が殆どです。有名な観光スポットへも入場料を払うことで入場可能なので、登山と観光を一緒に楽しむことができます。
今回は、がっつりと登山を楽しみたいので登山道を利用します。登りは「車力道コース」から山頂を目指し、「関東ふれあいの道コース」から観光を楽しみつつ下山する周回コースのご紹介です。
登山中は、観光ルートでは見ることができない名所を含め、以下のルートを周回します。
車力道・関東ふれあいの道周回コース
- 駐車場 → 車力道・関東ふれあいの道分岐 → 車力道 → 猫丁場 → 関東ふれあいの道合流地点 → 東京湾を望む展望台 → 鋸山山頂 → 切通し跡・観音洞窟・岩舞台 → 関東ふれあいの道 → 駐車場
順を追って説明しますね。
駐車場 → 車力道・関東ふれあいの道分岐
最寄りの駐車場は特に決まっていません。JR浜金谷駅や登山口周辺には民間の有料駐車場が沢山あるので、お好きな駐車場を利用することになります。筆者は「かぢや旅館」の駐車場を利用しました。
かぢや旅館の駐車場は1日700円と有料ですが、日帰り温泉の入浴料込みなので大変お得です。下山後に温泉に入ることができるので大変おすすめな駐車場ですよ。しかもトイレの利用や喫煙所もあるので大変ありがたいです。
車力道・関東ふれあいの道分岐までは舗装路を歩きます。かぢや旅館から右手をみるとミートショップの赤い屋根が見えるので、そちらを右折します。分かりづらいのはここだけです。
あとは道なりに400メートル程度進みます。ところどころに標識があるのでこの先は道に迷うことは無いかと思います。
車力道・関東ふれあいの道分岐に到着です。急な階段が「関東ふれあいの道」で、左手の側道が「車力道」です。どちらに進んでも山頂手前で合流するので、お好きなルートを使ってください。
筆者は「車力道」を選択しました。車力道のほうが若干距離が長くなりますが、比較的緩やかな道のりで、見どころが満載なのでお勧めですよ。
車力道・関東ふれあいの道分岐 → 車力道
車力道までは500メートル程度で到着します。暫くはアスファルトで舗装された道路を歩きます。
段々とダート道になり、広場に到着です。ここが車力道コースのスタートで、この広場は索道跡なんだそうです。車力道は元々は登山道ではなく、鋸山山頂付近で切り出された石を運ぶための道でした。
石を運ぶのは女性の仕事で、車力(しゃりき)と呼ばれていました。1本80kgの石3本を麓まで運ぶ作業を1日3往復も行っていたんだそうですよ。
石畳には車力達が石を運ぶ時に使用した、ネコ車(ねこぐるま)と呼ばれる荷車の轍(わだち)が残っていて歴史を感じます。
石畳の緩やかな坂道も段々と急になり、石でできた階段になっていきます。女性の方がこの道を使って石を運んでいたと思うと頭が下がります。
暫く進むと分岐点に到着します。猫丁場は令和3年7月に新しくできたスポットなんだそうです。寄り道してみましょう。
車力道 → 猫丁場
猫丁場へ進むと登山道からは外れてしまうのですが、観光ルートからは拝むことができないインスタ映え間違いなしのスポットがあるんだそうです。徒歩数分でそれらしき場所に到着です。
石切り場の奥へ進むと、石切職人の遊び心を楽しむことができます。ハート形に切り取られたこのスポットは、鋸山の新名所になること間違いなし。
断崖絶壁の石の壁を見上げると、なんと猫の絵が彫られていました。だから猫丁場(ねこちょうば)なのですね。
猫丁場から先は行き止まりになっているので元の道に戻ります。寄り道になってしまいますが、車力道を使うのであれば是非とも寄りたいスポットでした。
猫丁場 → 関東ふれあいの道合流地点
関東ふれあいの道合流地点までは階段が続きます。意外と急な階段ですが距離にして100メートル程度なのであっという間です。
途中でラピュタを思わせる壮大な石切り場が右手に見えてくるのですが、下山の時に寄り道するのでいったんスルーして真っすぐ進みます。
石を削って作られた階段を登りきると関東ふれあいの道合流地点に到着します。
因みに、関東ふれあいの道合流地点を500メートル程度真っすぐ進むと、地獄のぞきやラピュタの壁といった観光スポットへ行くことができます。
関東ふれあいの道合流地点 → 東京湾を望む展望台
次のチェックポイントとなる展望台までは距離にして200メートル程度と短いのですが、標高差なんと80mを登ります。
途中に吹抜洞窟という石切り場が右手に見えてきます。砕石跡地は奥まで採掘されていて、まるで洞窟のようです。レンガで組まれた崩落防止の柱が印象的です。
吹抜洞窟より先は階段地獄が待ち受けています。鋸山登山で最もハードな区間であることは間違いありません。
階段は段々と段差が激しくなり、傾斜もすごくなっていきます。写真でも十分に伝わるのではないでしょうか。石を削りだした天然の階段は鋸山ならではです。
階段を登りきると分岐に到着です。展望台までは距離にして50メートル程度のようです。絶景ということなので寄り道してみましょう。
東京湾を望む展望台に到着です。大変見晴らしがよく、ベンチもあるので休憩スポットとして賑わっていました。
展望台からは保田の海岸線や東京湾を一望できます。「東京湾を望む展望台」は鋸山で一番解放感があるパノラマスポットです。
鋸山山頂へ
鋸山山頂までは距離にして500メートル程度です。一見近そうに見えますが、一番長く感じる道のりでした。
というのが、鋸山山頂まではアップダウンの繰り返しなのです。登っては下りてを繰り返しながら、少しづつ標高を上げていくイメージです。
今までの道のりは正直登山感があまりなかったのですが、山頂手前で、登山をしている感をすごく感じることができます。
そろそろ山頂でしょうか。まだ見ぬ山頂まであと少しです。
鋸山に到着です。標高329m。想像していた以上に地味な山頂標識で肩透かしを食らいました。肝心の景色はどうなのでしょうか。
山頂は木々に囲まれていて景観はほぼゼロという残念な景色でした。なんとも地味な山頂ですね。
鋸山山頂までの道のりは史跡あり、迫力満点の石切り場あり、パノラマスポットありと、見どころ満載の登山道が続いていたので絶景を期待していたのですが、山頂だけ残念な景色の山なのですね。千葉県で最も有名な山なのに山頂の存在感が薄い理由も頷けました。
鋸山山頂 → 切通し跡・観音洞窟・岩舞台
下山では「関東ふれあいの道」を使います。関東ふれあいの道合流地点までは、同じ登山道に戻ります。
関東ふれあいの道合流地点からは階段を下り、JR浜金谷駅方向へ進みます。この先はジブリの世界のような幻想的な石切場跡が目白押しです。
まずは登りの時はスルーをして、後の楽しみにとっておいた「切通し跡」に到着です。まるで壁のように垂直に切り出された石の壁は写真に納まらない程の規模感です。
切通し跡を進むと階段があるので左に進みましょう。既にこの道自体、ジブリしていますよね。
次に目に飛び込んでくるのが観音洞窟です。まるで廃墟のようですね。良質な石を求めて切り進んだ結果、このような複雑な形になったんだそうです。奥まで掘り進められているので洞窟のようになっています。
更に歩き進めると「岩舞台」という場所に到着です。目の前まで進むと、石に「安全第一」と刻まれた壁を見ることができます。
関東ふれあいの道の分岐点の手前からは、「地獄のぞき」の全容を見ることができます。まるで要塞のようで、圧巻です。
地獄のぞきは鋸山で最も有名な観光名所で、断崖が垂直に切り立つ突き出した岩肌から下を覗くことができます。いつも行列ができる人気のスポットです。
筆者は以前に地獄のぞきに行ったことがあるので、今回は寄り道しませんでしたが、下山がてらに是非とも寄っていただきたいスポットです。高所恐怖症の方には酷ですが、地獄のぞきからの景色は写真のように圧巻です。
切通し跡・観音洞窟・岩舞台 → 関東ふれあいの道 → 駐車場
鋸山の幻想的な石切場跡をたっぷり満喫し終わったら、あとは下山するのみです。JR浜金谷駅方向へ進みます。
関東ふれあいの道は、高台を歩く解放感のある道のりですが、アップダウンが激しく、思っていた以上に足腰に負担がかかります。
途中にトイレがあります。鋸山の登山道ではトイレはここにしかありません。トイレのことを考えると周回ルートを使ったほうが得策です。
観月台という場所は広場のようになっていて、休憩スポットとして最適です。展望台からは石切場跡を見ることができるんだそうですよ。
関東ふれあいの道は、車力道とは違って階段地獄が続きます。登りで選択していると大変な目にあいそうです。下山ルートとして使うのがベターだと思いました。
車力道・関東ふれあいの道分岐に戻ってきました。あとは温泉でゆっくりするだけです。
鋸山に登ってみてわかったこと
鋸山は山頂以外は見どころ満載の、登山と観光を同時に楽しむことができる楽しい山でした。鋸山に登ってみてわかったことをまとめました。
まとめ
- 千葉県で最も有名な山で代表的な観光名所の1つ
- 登山道を利用する場合「かぢや旅館」の駐車場を利用すると温泉がサービスでついてくるのでお得
- 車力道コースは比較的緩やかな道のりで見どころが満載なのでお勧め
- 車力道コース途中にある猫丁場は令和3年7月に新しくできたインスタ映え間違いなしのスポット
- 山頂手前の「東京湾を望む展望台」は鋸山で一番解放感があるパノラマスポット
- 鋸山山頂は木々に囲まれていて景観はほぼゼロという残念な景色
- 「関東ふれあいの道」は幻想的な石切場跡が目白押し
- 関東ふれあいの道は階段地獄とアップダウンの繰り返しなので下山ルートとして使うのがベター
- 標高が低く、比較的温暖な気候なので冬場でも安心して登山が楽しめる
- 登山と観光を同時に楽しむことができる楽しい山
想像以上にボリューム満点!登山と観光を一緒に楽しめる見どころ満載の山
鋸山は千葉県有数の観光名所だけあって見どころが満載の山でした。今回は観光コースは省略しましたが、がっつり観光地まで周回すると1日がかりのボリュームです。低山だからといって油断していると、あっという間に日が暮れてしまうことでしょう。
念願の鋸山山頂は少しだけ残念でしたが、鋸山は登山と観光を同時に楽しむことができるので、いつもとは違った登山を楽しむことができますよ。
ギア
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