山形県にある「月山」は、たおやかな稜線に広がる緑と残雪のコントラストが美しい日本百名山です。池塘が美しい湿原に高山植物が咲き乱れる花の百名山だったり、東北屈指の霊山だったりと様々な顔を持っています。
今日は登山初心者に嬉しい、リフトが使える日帰りコースをご紹介いたします。コースバリエーションが多彩で、体力や気分に合わせて自由にアレンジができる見所満載のコースですよ。
目次
出羽三山の主峰「月山」
「月山(がっさん)」は山形県の中央部に位置する標高1984メートルの山です。「日本百名山」、「新日本百名山」、「花の百名山」、「新・花の百名山」、「一等三角点百名山」、「東北百名山」に選定されています。
日本三大修験道の1つで、出羽三山「月山(過去)→羽黒山(現在)→湯殿山(未来)」を巡る「出羽三山参り」で多くの巡礼者が訪れる山岳信仰の山です。月山山頂には月山神社本宮が祀られ、祈祷を受けることができます。
山域一帯は磐梯朝日国立公園の特別区域に指定されています。夏スキーのメッカで、夏でも残雪が残る日本有数の豪雪地帯です。美しい稜線に織りなす残雪と緑のコントラストは、ただただ絶景です。
山頂からは360度大パノラマが広がるのは勿論のこと、たおやかな稜線に広がる湿地帯には様々な高山植物が咲き誇り、秋には高山植物に代わり紅葉が彩ります。山行中、見どころしかない絶景の山です。
「月山」登山コース
月山は初心者向けから健脚者向けまで7つも登山コースがあり、バリエーション豊かです。今日はその中からリフトが使える姥沢コースに絞ってご紹介いたします。
姥沢コースは登山レベルや、見たいスポットに応じて柔軟に登山計画を立てることが出来るのが魅力です。目的別でモデルコースをまとめてみました。
1.リフトを利用して月山を往復(ピストン)
- 標高差約460m / 片道約3.0km / 約110~120分程度のコース
2.リフトを利用して姥ヶ岳を縦走(周回)
- 標高差約460m / 総距離約6.3km / 約200~230分程度のコース
3.リフトを利用しないで月山を往復(ピストン)
- 標高差約830m / 片道約4.5km / 約170~190分程度のコース
4.リフトを利用しないで姥ヶ岳を縦走(周回)
- 標高差約830m / 総距離約10.8km / 約380~410分程度のコース
5.下山でリフトを利用して月山を往復(ピストン)
- 標高差約830m / 片道約4.5km / 約170~190分程度のコース
6.下山でリフトを利用して姥ヶ岳を縦走(周回)
- 標高差約830m / 総距離約7.8km / 約260~300分程度のコース
今日ご紹介するのは「5.下山でリフトを利用して月山を往復(ピストン)」です。コースは以下のような流れになります。
モデルコース 標高差約830m/総距離約7.5km/コースタイム約270~290分程度
姥沢駐車場→リフト乗り場分岐→牛首下分岐→牛首→鍛冶小屋跡→頂上小屋→月山山頂→月山神社→牛首→牛首下分岐→リフト上駅→姥沢駐車場
順を追って説明しますね。
最寄りの駐車場・公共交通機関
最寄りの駐車場は、山形自動車道月山インターから車で約20分の場所にある「姥沢駐車場」です。アスファルト舗装で約300台停めるスペースがあります。入庫の際は駐車協力金が1日1000円必要です。
駐車場にはトイレや自動販売機があるので便利です。広大な駐車場ですが、紅葉シーズンや夏の休日は満車になる可能性が高いので、いつもより早く家を出たいところです。
公共交通機関を利用する場合、JR山形駅から山交バス鶴岡・酒田行きの高速バスに乗り、西川バスストップで下車。西川ICより西川町路線バス月山志津温泉線に乗り換え、姥沢で下車です。本数が少なく、乗り継ぎも大変です。
姥沢駐車場→リフト乗り場分岐
第一のチェックポイントとなる「リフト乗り場分岐」までは距離にして約0.5km、標高差約40メートル程度を約5分程度です。アスファルト舗装された一本道を進みます。
暫く進むと月山登山口の標識が見えてきます。そのまま真っすぐ進みましょう。
橋を渡ると分岐に到着します。リフトを使う方は左手の坂を5分程度登るとリフト乗り場に行くことが出来ます。リフトを使わない場合は右に進みます。今回は朝5時登山開始なので必然的にリフトを使わないコース取りです。
月山ペアリフトの夏山営業期間は6月末から10月中旬まで。運行時間は8時から16時半までです。リフトを利用して登山をする場合、運行状況を公式サイトで確認のうえ、事前にしっかりとした登山計画を立てましょう。
リフト乗り場分岐→牛首下分岐
牛首下分岐までは距離にして約2.0km、標高差約320メートル程度を約90~100分かけて登ります。出だしは緩やかな樹林帯歩きが続きます。道は比較的整備されていますが、足場の悪いぬかるんだ道も随所にあります。
歩き進めていくうちに段々と木々が低くなり、視界が開けていきます。道は木道で整備されていて、尾瀬散策をしている気分になりますよ。
森林限界を超えると一気に視界が開けます。目の前に湿原が広がり、高山植物や池塘が美しく、たおやかな稜線が絶景です。月山登山ではこの先、日差しを遮る場所が無いので日焼け対策はしっかりとしましょう。
牛首下分岐までは緩やかな道のりで、360度絶景が広がる天国ロードが続きます。ただ距離が長いので、なかなかチェックポイントに到着しないもどかしさがあります。
牛首下分岐に到着です。リフトを使って登ってきたコースとの合流地点です。手前の木道を登るとリフト乗り場があるリフト上駅へ行くことが出来ます。下山でリフトを使う方はこちらを進みましょう。
牛首下分岐→牛首
牛首までは距離にして約0.8km、標高差約180メートル程度を約30分かけて登ります。この辺り一帯は夏でもスキーができるメッカで、残雪で覆われた場所が多々出現します。
この区間は月山登山の中で最も天国ロードです。まるで尾瀬のような美しい木道が続き、色とりどりの高山植物に覆われた草原と残雪と緑のコントラストが美しい稜線を拝むことが出来ます。
リフト上駅と月山山頂の中間地点には標識があるので良い目印になります。この場所にはベンチがあるので、休憩ができますよ。
中間地点から先は石畳に覆われた道になり、段々と勾配があがっていきます。なだらかな稜線の先に見えるたおやかな山が月山です。近そうで遠い山頂ですね。
牛首に到着です。姥ヶ岳との合流地点で周回コースになっています。姥沢コースは月山と姥ヶ岳を縦走する周回コースが人気です。時間と体力に余裕がある方は周回コースがお勧めですよ。
牛首→鍛冶小屋跡
鍛冶小屋跡までは距離にして約0.7km、標高差約230メートル程度を約30~40分かけて登ります。稜線の先からは今までの緩やかな道のりとは打って変わって、岩場の急登が続く修行の道のりが待ち受けています。
岩がゴツゴツとした登山道は思っていた以上に急こう配で登りごたえがあります。とはいえ、360度絶景が広がるのでなかなか足が前に進みません。
疲れたら後ろを振り返ってみてください。今まで歩いてきた道のりが信じられない絶景なので疲れが吹き飛びます。美しい稜線に織りなす残雪と緑のコントラストと、色とりどりの高山植物が目の前に広がります。
チェックポイントが近づくにつれ登山道が狭くなっていき、場所によってはすれ違い困難な個所が多々出現します。足元も滑りやすくなるので慎重に登りましょう。
鍛冶小屋跡は元々山小屋があった場所で、今は解体されて広場になっています。小休止にはもってこいです。跡地の側には延命地蔵尊や祠が鎮座しています。
鍛冶小屋跡→頂上小屋
頂上小屋までは距離にして約0.3km、標高差約40メートル程度を約10分かけて登ります。引き続き岩場の心臓破りの急坂が待ち受けていますが、距離は短いので最後の力を振り絞って登りましょう。
急坂を登りきると広場のようになっています。右手には方位盤があり、どの方向にどんな山があるかが一目でわかるので便利です。
正面に目を向けると、小山の上に聳え立つ要塞のような建造物が目に飛び込んできます。出羽三山神社の1つ。月山神社本宮です。手前に見える建物が頂上小屋です。
月山頂上小屋は月山頂上直下にある山小屋で、宿泊が可能です。売店や食事をはじめ、トイレもあるので大変便利です。
頂上小屋→月山山頂
月山山頂までは距離にして約0.2km、標高差約20メートル程度を約5分かけて登ります。真っすぐ進むと月山神社ですが、山頂標識は別の場所にあります。神社には向かわないで神社に続く階段の脇を進みましょう。
神社を左手に脇道を進みます。以前は月山神社から山頂標識のある場所へ直接行くことが出来たようなのですが、現在は通行止めになっているので注意が必要です。
暫く進むとロープが張られた場所に到着します。山頂標識はここを登った先にありますよ。
月山山頂に到着です。標高は1,984m。月山の山頂標識がある場所については、不親切なことに一切の案内板が無いので、山頂標識を見つけられないで諦める方も数知れずなんだそうです。
山頂標識のある場所は大変狭く、山頂に立てるのは頑張って10人程度です。一通り景色と記念撮影を楽しんだら次の方と交代しましょう。
月山山頂→月山神社
頂上小屋がある場所まで戻って月山神社を目指しましょう。頂上の「おむろ」に建てられている月山神社本宮は東北屈指のパワースポットで、白装束で登頂する巡礼者も数多く訪れます。
月山神社には守護神、月読命が祀られています。特に卯歳(うさぎ年)は月山の御縁年で、御縁年に参拝すると12年分のご利益があるんだそうです。そんなこともあり、2023年は多くの登山者が訪れたんだそうですよ。
月山神社本宮内は撮影禁止なので中の様子をお見せすることはできませんが、お祓い料は1人500円で、お祓いの後に御朱印をいただくことができます。
月山神社→牛首→牛首下分岐
月山では姥ヶ岳を縦走する周回コースが人気なのですが、天気が悪くなってしまったので姥ヶ岳は諦めてそのまま下山することにしました。牛首下分岐までは同じ道を進みます。
牛首までは滑りやすい岩場の急こう配が続くので慎重に下りる必要があります。しかも登山道が狭く、すれ違いが困難なのでタイミングが悪いと大渋滞をします。流石は人気の山です。
牛首下分岐まで戻ってきました。下山は楽勝かと思っていましたが思っていた以上に時間がかかります。大渋滞に巻き込まれ、滑りやすい岩場の急こう配に大苦戦しました。
牛首下分岐→リフト上駅→姥沢駐車場
牛首下分岐からはリフト上駅へ向かうか、姥沢駐車場へ直接下りるかを選択できます。折角なので今回はリフトを使ってラクチン下山をすることにしました。
リフト乗り場のあるリフト上駅まではまさかの登り返しが待ち受けています。下山での登り返しは精神的ダメージが大きいですよね。距離にして約1.0km、標高差約30メートル程度を約30分と、意外と大変です。
リフト上駅に到着です。トイレや自動販売機があるので助かります。リフト料金は片道大人1人800円。子供500円です。
歩いて下山すると1時間以上かかる道のりも、リフトを使うと僅か15分で下山出来てしまいます。文明の力は偉大です。
姥沢駐車場が見えてきました。姥沢コースはリフトを使えば最短で登頂できるとはいえ、意外と距離があるので登りごたえがあります。体力に応じて上手にリフトを使うと、より一層楽しい登山を満喫できるのではないでしょうか。
月山に登ってみてわかったこと
月山は、がっつり登山といった雰囲気ではなく、のんびりと雄大な景色を楽しみながら絶景ハイクを満喫できる、登山のイメージが覆ること間違い無しの素敵な山でした。月山に登ってみてわかったことをまとめました。
まとめ
- 出羽三山の主峰で高山植物と山岳信仰で有名な日本百名山
- たおやかな稜線に織りなす残雪と緑のコントラストが絶景
- 初心者向けから健脚者向けまで7つも登山コースがある
- 姥沢コースはリフトを使えば最短で登ることが出来る
- 姥ヶ岳を縦走する周回コースが人気。チャレンジしたい
- 山行中、絶景ハイクを満喫できるが距離が長く感じる
- 牛首から山頂まではすれ違い困難な滑りやすい岩場の急登
- 月山神社は撮影禁止。神社から山頂へ行くことが出来ない
- 山頂標識のある場所までは案内板が無く大変わかり辛い
- 下山では滑りやすい岩場の急こう配と人混みで苦戦する
- 日差しを遮る場所が無いので日焼け対策はしっかりと
- 夏山登山も最高だが紅葉シーズンが一番人気
登山適期は7月から10月中旬。紅葉シーズンを狙いたい!
月山の登山適期は7月から10月中旬で、月山の山開き行事がある7月1日は多くの登山者や参拝客が参加します。夏には高山植物のお花畑が広がり、秋には見事な紅葉を楽しめるのでリピート要素満載です。
月山は夏山登山でも最高に楽しい山ですが、紅葉シーズンが一番人気です。月山は赤や黄色に美しく染まる草紅葉が絶景の屈指の紅葉スポットです。次回は紅葉シーズンに訪れようと思います。
ギア
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