角谷剛
ソロキャンプで料理をしないという選択。有り余った時間と自由はこう使う

ソロキャンプで料理をしないという選択。有り余った時間と自由はこう使う

ソロキャンプでは「死なない程度に食べる」のが私の原則だと前回の記事で書きました。今回は「そこまで食の楽しさを犠牲にして、一体全体どんな良いことがあるのか」について書いてみます。

最初に誤解を解いておきたいのですが、私はけっしてキャンプ料理を否定しているわけではありません。きれいな景色、新鮮な空気、そして楽しい仲間と一緒に食事をするのは至福の時間だと思いますし、そんな経験をしたことも数多くあります。

普段は食べることは大好きですし、料理をすることがとくに嫌いなわけでもありません。ただ、ソロキャンプに限ると、食事の楽しみをあえて捨てることによって、得られるものもたくさんあると思っていますので、今回はあえてその部分にフォーカスをあてます。

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1日のサイクルは食事の時間に左右されている

キャンプとは日常生活から離れた自由な時間であることに意味があります。少なくとも私にとってはそうです。ところが、その自由な時間が「食べる」ことを考えた途端にある種の制限がかかってきます。

試しに「これから丸々1日、何をしてもいい。100%自由に時間を使っていい」と言われたと想像してみてください。さあ何をしようかとワクワクするでしょうけど、実際にその1日が始まると、人はそれほど普段とかけ離れた時間を過ごせるわけではないことに気づくでしょう。

なぜなら普通の人は朝、昼、夜の1日3回食事をします。朝食を食べたら、次は昼食をどうするかを考えなくてはいけません。外食をするか、コンビニ弁当を買いに行くのか、家にあるもので料理するのか。どれを選んでも自由だとしても、食事をする時間までは無制限に自由になるわけではありません。

お昼ごろにはお腹は空いてきますので、それまでにどうするか決めておかないといけないからです。そうして昼食を済ますと、数時間後には夕食がやってきます。

人はかくも「食べる」行為に時間をコントロールされているのですが、頼るものが自分しかいないソロキャンプではその影響がさらに大きくふりかかってきます。

誰もあなたのために料理してくれない、誰もあなたのために食器を片付けてくれない。特に食器の後片付けは誰にとっても嫌なものですが、ソロキャンプではそれをやらないわけにはいきません。それならば、いっそのこと、料理も片付けもしないで済むようにしたらどうでしょうか。

食事にこだわらないとキャンプはこうなる

キャンプで食事にこだわらないと色々なメリットがあります。荷物が少なくなるという物理的なメリットが1つ。おカネがかからないという経済的なメリットもあります。私にとっては、最大のメリットは1日の中で自由に使える時間が長くなることです。

一日でもっとも美しい景色を見逃さない

湖畔や川原あるいは海岸など、キャンプ場は「水」の近くにあることが多いですね。私の主観では、そうした場所が1日の中でもっとも美しくなるのは早朝です。それもまだ完全に夜が明けていない時間から日が上がるまでの2時間ぐらい、夏なら朝4時から6時くらいまでがキャンプ場のゴールデンアワーです。繰り返しますが、これは主観です。

朝4時なんて普段ならそれから寝る時間だって人も、試しにその時間にキャンプ場の周りを歩いてみてください。清冽であったり、荘厳であったり、幻想的であったり、その日その場所によって様々ですが、どんな水辺であっても、夜が明けつつある時間の景色は見逃すには惜しいものです。

早朝の湖畔

私はカフェイン中毒なので、目を覚ましたらすぐにお湯を沸かし、インスタント・コーヒーだけは作ります。それを水筒に入れ、エネルギーバーをポケットに入れ、景色の良さそうなところを散歩します。気に入ったところで腰を下ろし、あるいは立ったままで、水面にかかった霧が晴れていくところを見る以上に幸せな時間を私には考えつきません。

私にとっては、キャンプ場の早朝はとても神聖な時間であると同時に、形而上学的な考え事をするのにもっとも適した時間であります。そこに「朝ごはんは何にしよう」だの「後片付けは面倒だな」などといった俗事を頭の中に入り込ませたくはないのです。

アウトドアの楽しみを中断しない

太陽が昇ってくると、キャンプ場の景色も本来の姿に戻ってきます。そうなると活動開始です。私は元々スポーツ馬鹿でして、キャンプの目的はトレッキングやトレイルランをすることであるときがほとんどです。それ以外に、マウンテンバイクに乗ったり、カヤックを漕いだりもします。

どちらにしてもアウトドアで体を使った遊びをするわけですので、当然お昼ごろにはお腹が空きます。しかし、ここできちんと食事をしようと思うと、またまた料理+後片付けがのしかかってきます。あるいは食事をするために一旦キャンプ場に戻らなくてはいけなくなるかもしれません。

私はそんなことをしたくないので、バックパックの中に水と携帯食を入れて遊びに行きます。もちろん、美味しいお弁当なんかを作ってくれる人がいれば、それに越したことはないのですが、ソロキャンパーにそれは望めません。

トレイルランに出かける前の準備。これだけで半日は十分にもつ。

別に食べることを拒否しているわけではなく、要は遊びを中断したくないだけですので、出かけた先で食料を調達できる売店や外食できる店があれば、そこで済ますこともあります。その点にこだわりは全くありません。

焚火とお酒は最高のぜいたく

夕方キャンプ場に戻ってくると、当然のことですが、へとへとに疲れています。それから慣れない調理道具を使って料理をする余力なぞ残っていないときがほとんどです。よほどの料理好きの人でないと、うんざりしてしまうのではないでしょうか。

とは言え、キャンプ料理をするためにアウトドアの遊びをセーブするというのは、私のような人間にとっては本末転倒になります。

それより、キャンプ場に戻ったら暗くなる前に私がやらなくてはいけない最重要事項は焚火の準備です。キャンプ場の売店で焚き木を売っていれば、それを買うだけで済むのですが、その辺りの枯れ木を拾い集めなくてはいけないときもあります。

私は頭のてっぺんから足の先までお酒大好きの男ですので、これまでに様々なシチュエーションで色々な種類のお酒を飲んできましたが、パチパチと燃える焚火の前で飲む缶ビールやバーボンこそがこの世で最高のお酒の飲み方だと思っています。

肴はあぶったイカでもいいですが、それがなければビーフジャーキーやミックスナッツでも全然構いません。

カヌーイストである野田知佑さんの著書にアルミホイルで魚や肉を包んで焚火の中に放り込む料理法がよく出てきます。野田さんは私にとって好きな作家というだけはなく、人生の師匠のような存在ですので、そのやり方を真似することもあります。

野田さんのように釣った魚や銃で撃ち落とした鴨を包めたら格好いいですが、キャンプ場の売店で買ったソーセージでも私には十分です。中身はともかく、鍋も皿も要らず、後片付けも不要、ゴミも出ない、3拍子揃ったソロキャンパーにおススメの料理方法です。

いずれにせよ、私にとっては気持ちよく酔っぱらうことこそがもっとも大切なわけですので、そのようなときに鍋を洗うことや、生ゴミを分別するなんてことを考えたくはないのです。こうして改めて考えてみますと、私は食事の準備や食べることより、それについてくる後片付けを憎悪しているのかもしれません。

自分がキャンプに求めていることは何なのか

言うまでもありませんが、これらはすべて私の好みにすぎません。そんなことにまったく興味がないよって人もいるでしょう。アウトドアで食事をすることが何よりの楽しみだ、という人はどうかここで私が書いたことは忘れてください。人それぞれ自分の好きな時間を自由に過ごせるのがソロキャンプの醍醐味なのですから。

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  • 野田知佑氏の著作に影響を受けてアウトドアに目覚める。ひとり旅キャンプをこよなく愛し、自転車や徒歩やカヌーなど自力での移動が得意。クロスフィット、陸上長距離、野球と異なるスポーツのコーチを務めるかたわら、多くのスポーツ・アウトドア関連のウェブサイトに寄稿するライターでもある。

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