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超ハイスペックテント「HILLEBERG SAIVO(ヒルバーグ サイボ)」忖度無しでレビューします

超ハイスペックテント「HILLEBERG SAIVO(ヒルバーグ サイボ)」忖度無しでレビューします

HILLEBERGのテントは、キャンプをされている方であれば一度は憧れるのテントの1つだと思います。テントの最高峰と名高い同社の製品は非常にハイスペックなテントなので、日本のオートキャンプで使うにはオーバースペックとよくいわれます。実際のところどうなのか気になる方も多いのではないでしょうか。

そこで今日はヒルバーグレーベルシステムの最高峰である「ブラックレーベル」の中でも、最も過酷な環境に強い3人用テント「サイボ」の使用感と忖度の無いレビューをお届けいたします。

HILLEBERG(ヒルバーグ)について

「HILLEBERG(ヒルバーグ)」について

HILLEBERG(ヒルバーグ)は、1971年にBo Hilleberg氏が設立したスウェーデン生まれのテントメーカーです。ヒルバーグの正式名称は「Hilleberg the Tentmaker」。名前の通り、正にテント作り一筋のトップメーカーです。

過酷な環境での使用を想定した作りが最大の特徴で、フライシートとインナーテント一体型の画期的なテントを生み出したのがヒルバーグです。

軽量で強度があり

軽量で強度があり、過酷な環境でも安心して使うことができるテントは、妥協の無い超高品質な素材を使っており、フライシートに使われている「ケルロン」という素材は、テントの寿命である「加水分解」がほぼ無いと言われていて、何十年も長く使うことができる丈夫なテントに仕上がっています。

ヒルバーグのSAIVO(サイボ)とは

「ヒルバーグ サイボ」について

HILLEBERGのテント「SAIVO」は4シーズン対応の3人用自立式テントです。サイボの名前の由来は、スカンジナビア北部に住むサーミ人の言葉「聖なる湖」から。

サイボは最も過酷な環境下での使用を前提に作られた最上級レーベル「ブラックレーベル」に属すハイスペックテントで、4人用テントのSAITARIS(サイタリス)、2人用テントのTARRA(タラ)とあわせて「ヒルバーグハイスペック3兄弟」と呼ばれたりしています。

日本ではあり得ない過酷な環境下での使用を想定したテントで

日本ではあり得ない過酷な環境下での使用を想定したテントで、エベレスト級の標高の雪山や猛吹雪の中での長期滞在が可能という、驚異のスペックです。主にベースキャンプとして利用されることが多く、南極大陸の遠征チームで使われた実績があります。想像以上のガチなテントですね。

サイボの仕様

モデル:BLACK LABEL
カラー:サンド/レッド/グリーン
サイズ:W430×D170(cm)
室内最大高:115cm
フロア広さ:3.7㎡
前室広さ:2×1.3㎡
最小重量:4.6kg
総重量:5.3㎏
収容人数:3人用
設置タイプ:自立型
出入口数:2か所
ポール本数:4本
素材:Kerlon 1800(耐水圧:5500mm)
アウターテント生地:40D High Tenacity Ripstop Nylon66
アウターテント処理:両面100%シリコン加工(合計3レイヤー)
アウターテント重量:55g/㎡|||1.82oz/yd2
アウターテント引裂き強度:min.18kg(ISO13937-4)
アウターテント耐水圧:5500mm/54kPa(ISO811)
インナーテント生地:40D Ripstop Nylon
インナーテント処理:耐久性撥水加工(DWR)
インナーテント重量:43g/㎡|||1.27oz/yd2
フロアー生地:100D Nylon
フロアー処理:ポリウレタン3層コート
フロアー重量:110g/㎡|||3.24oz/yd2
フロアー耐水圧:20,000mm/196kPa(ISO811)
付属品
フレームポール:アルミポール( φ10mm) 393cm×4
ペグ:Yペグ×24本
その他:スペアポールセクション、リペアスリーブ、スタッフバッグ、ポールバッグ

収納サイズは不明なので計ってみました

収納サイズは不明なので計ってみました。ざっくりW60×H25×D25(cm)位の大きさです。重さはペグ・ポールを含めて5.3kg。3人用テントとしては標準的な大きさと重量ではないでしょうか。バックパックキャンプで使うには重すぎるのでオートキャンプ向けです。

テントの素材にはヒルバーグの代名詞ともいえるKerlon

テントの素材にはヒルバーグの代名詞ともいえるKerlon(ケルロン)という、高い耐摩耗性と耐穿刺性を備えた素材が使われています。恐ろしく頑丈で、引き裂き強度は少なくとも18kg以上はあります。一般的なテントの引き裂き強度は2~3kg程度なので、いかに丈夫かが判るかと思います。

耐水性もずば抜けていて

耐水性もずば抜けていて、フライシート耐水圧は5,500mm以上、フロアー(床)にいたってはなんと20,000mmもあります。一般的なテントの耐水圧は1,000~2,000mmなので圧倒的です。大雨や強風といった過酷な環境でも安心して使うことが出来ます。

繊維の太さ(重さ)の単位であるデニールは

繊維の太さ(重さ)の単位であるデニールは、フライシートやインナーテントが40デニールと軽量で高強度です。フロアについては100デニールと分厚くなっています。一般的に数字が大きいほど生地が厚くなり、強度が上がる反面、重量が増えます。登山用途やウルトラライト系テントでは、一般的に30D~40Dの生地が使われることが多いです。

フレームポールにはDAC社製の「Featherlite NSL」

フレームポールにはDAC社製の「Featherlite NSL」を採用することにより、強度・軽さを高次元で融合したポールになっています。DAC社というと馴染みが無いかもしれませんが、ヘリノックスの親会社と言えば伝わるかと思います。

サイボの最大の特徴は

サイボの特徴はフライシートとインナーが一体型になっているので同時に設営できるところです。設営や撤収時に、インナーテントを濡らすことなく設営できる上に、設営スピードが大幅に短縮できる仕組みです。勿論、分離もできるのでメンテナンスも容易にできますよ。それでは早速使ってみましょう。

ヒルバーグ サイボを設営してみた

「ヒルバーグ サイボ」を設営してみた

「サイボ」は過酷な環境下で手袋をしたままでも簡単に設営できる工夫がされています、慣れると10分で設営ができそうですよ。

収納袋からペグとポール、本体を取り出します

収納袋からペグとポール、本体を取り出します。テント本体は初めからフライシートとインナーテントが合体した状態になっています。

ペグは24本あり

ペグは24本あり、ヒルバーグ社製のY-PEGというペグで長さは1本18cm、16グラムです。ペグ単体でも購入できて、10本入りで6000円程度します。使うのが恐れ多いので手持ちのペグを使いますね。

ポールは色分けされていませんが

ポールは色分けされていませんが全部同じ長さなので設営で迷う心配はありません。先に組み立てておきましょう。この辺りは、過酷な環境下でも簡単に設営できる工夫がされています。

悪天候での使用を想定しているので

悪天候での使用を想定しているので、ポールが折れた時に備えてポールの収納袋のポケットにスペアポールセクション(予備のポールの一部)とリペアスリーブが入っています。

フライをしっかり広げます

フライをしっかり広げます。フライシートとインナーテントが一体型なので、重量感があります。広げても風で飛んでいくことは無さそうです。

ポールを通します

ポールを通します。ちょっとわかり辛いですが、写真の1にある外側のスリーブから先にポールを通し、テントを立ち上げます。

サイボはスリーブが一方通行になっていて

サイボはスリーブが一方通行になっていて、片側からしかポールを通すことが出来ない珍しい構造になっています。袋とじになっていない側を探してポールを通してみましょう。

反対側は袋とじ状態になっていています

反対側は袋とじ状態になっていています。袋にポールの先までしっかり入るようにポールを通しましょう。これを両側で行います。

ポールを通した側には黒いポール受けがあるので

ポールを通した側には黒いポール受けがあるので、ポールを差し込みます。この時、ベルトを緩めた状態にするのを忘れないでくださいね。

テントを立ち上げた状態です

テントを立ち上げた状態です。この時点ではお饅頭みたいですね。残り2本のポールを通して形を整えましょう。

先ほどの写真の②にある内側のスリーブから

先ほどの写真の2にある内側のスリーブから、クロスするようにポールを通します。こちらもスリーブが一方通行になっていて、片側からしかポールを通すことが出来ません。

テントの外側に向けてクロスするように

テントの外側に向けてクロスするようにポールを通しましょう。ちなみにサイボはスリーブとポール受けがブカブカな作りになっています。これは1つのスリーブにポールを2本通せるように設計されているからです。徹底して悪天候を想定した作りになっているのは流石です。

反対側は袋とじ状態になっていているのでポールの先までしっかり入るように

反対側は袋とじ状態になっていているので、ポールの先までしっかり入るようにポールを通しましょう。これを両側で行います。

ポールを通した側には黒いポール受けがあるので、ポールを差し込みます

ポールを通した側には黒いポール受けがあるので、ポールを差し込みます。勿論、ベルトを緩めた状態にするのを忘れないでくださいね。

ポールにフックを引っかけていきます

ポールにフックを引っかけていきます。フックは互い違いになっていて、強度が確保できる設計になっています。

両側の前室を作ります

両側の前室を作ります。両側のベルトを緩めた状態にした上でひっぱって形を作り、それぞれにペグダウンします。

ベンチレーションを成形します

ベンチレーションを成形します。ガイロープを引っ張ってペグダウンします。

ベルトやガイロープを調整して仕上げをします

ベルトやガイロープを調整して仕上げをします。

前室の出来上がりです

前室の出来上がりです。反対側の前室も同じ要領で仕上げます。

次に、真ん中でクロスしたポールにガイロープを巻き付けます

次に、真ん中でクロスしたポールにガイロープを巻き付けます。

ペグダウンをしたあと、ガイロープを調整して仕上げます

ペグダウンをしたあと、ガイロープを調整して仕上げます。

あとは状況に応じて

あとは状況に応じてフライシートが動かないようにぞれぞれペグダウンをして、残りのガイロープを張ります。サイボ自体が悪天候に強いテントなので、筆者の場合、余程のことが無い限りこの作業は省略しています。

最後にベルトを引っ張りながらテンションをかけて設営完了です

最後にベルトを引っ張りながらテンションをかけて設営完了です。

設営時間は15分程度でした

設営時間は15分程度でした。慣れればもっと早く設営できると思います。

ヒルバーグ サイボの使用感

「ヒルバーグ サイボ」の使用感

過酷な環境下でこそ威力を発揮する「サイボ」を実際につかってみました。

横から見た姿です

横から見た姿です。どんな強風でもビクともしない流線形のフォルムが所有欲を満たしてくれます。

正面から見た姿です

正面から見た姿です。巨大なベンチレーションが特徴的です。雨が入ってこない角度と設計はよく考えられています。

前室にあるベンチレーションはかなり大きく

前室にあるベンチレーションはかなり大きく、しかもメッシュ付きです。勿論完全に締め切ることも可能です。

サイボには出入り口が2か所あるので便利です

サイボには出入り口が2か所あるので便利なのですが、出入口はかなりの鋭角なのでテントの出入りは一苦労です。しかもインナーテントの入り口も鋭角になっているので雨の日の出入りではインナーテントに確実に雨が入ります。

前室は大変狭く、低いです

前室は大変狭く、低いです。荷物を置くスペースは期待できません。ちなみに前室は半分までしか開かない構造になっています。入口はメッシュにもできるのでしっかりと風通しが出来ますよ。

3人用テントなのですが

3人用テントなので荷物が無ければちゃんと3人寝ることが出来るスペースが確保されています。大人2人で使うのであれば理想的な広さです。

インナーテントは奥行230cmと結構な長さです

インナーテントは奥行230cmと結構な長さです。辺の長さは均一で、幅は約160cmとなっています。その為、思っていた以上に広く感じるかと思います。

インナーテントの天井は115cmあります

インナーテントの天井は115cmあります。風に強い構造が仇となり、思った以上に圧迫感があります。テント内での着替えも若干大変です。あくまで就寝用と割り切る必要がありますね。

大型のメッシュポケット

大型のメッシュポケットがインナーテントの両サイドに12か所も付いています。スマートフォンや財布だけではなく、あらゆる小物を入れ放題です。

インナーテント内にも大型のベンチレーション

インナーテント内にも大型のベンチレーションが付いているので換気はばっちりです。インナーテント、フライシート共にメッシュ付きで、完全に閉めきることも可能です。天候に合わせてなんとでも出来る、汎用性がかなり高いベンチレーションです。

インナーテントの最頂部には

インナーテントの最頂部にはランタンを吊るすハンギングループが1ヶ所付いてます。

ヒルバーグ サイボのここが素晴らしい

「ヒルバーグ サイボ」のここが素晴らしい

サイボを使ってみて良かった点をまとめてみました。

所有欲を満たす美しいデザイン

所有欲を満たす美しいデザイン

ずばりこれに尽きます。無駄の無い美しい流線形のフォルムは、控え目にいってもかっこいいです。車に例えるとランボルギーニのような感じではないでしょうか。周りの目を引く存在感ある見た目は注目の的です。

悪天候でこそ本領発揮

悪天候でこそ本領発揮

元々は、爆風吹き荒れる極寒の地や、ヒマラヤ級の山でのベースキャンプ用途のハイスペックテントなので、悪天候でこそ本領発揮します。どんなに風が強い日でもびくともしません。非常に高い強度を持ったテントです。

冬キャンプで大活躍

冬キャンプで大活躍

サイボは冬キャンプで使うには最高のテントだと思います。気密性が高く、まるで包み込まれるような安心感があり、冬キャンプでは心強いでしょう。さすが北欧のテントです。

一体型のインナーテントは悪天候で大活躍

一体型のインナーテントは悪天候で大活躍

一般的なドーム型テントはインナーテントを設営したあと、フライシートを被せます。サイボはフライシートとインナーテントが合体しているので、雨の日の設営や撤収でもインナーテントを濡らすことなく設営が出来ます。

ヒルバーグ サイボの注意点

「ヒルバーグ サイボ」の注意点

正直な話、サイボのスペックは日本のキャンプではオーバースペックすぎて使いどころが難しいテントだとおもいます。そんなポイントを纏めました。

オーバースペックすぎて本領発揮する場面が殆ど無い

オーバースペックすぎて使いどころに困る

サイボは本当に実用性重視のハイスペックテントです。但し日本で使う場合、余程の悪天候ではない限り、それらの機能の恩恵を受けることは殆ど無いでしょう。

中途半端に重く、大きく、狭く、季節を選ぶテントなので、使いどころに迷うクセのあるテントです。例えるならば、渋滞の多い東京でフェラーリに乗っているようなイメージのテントです。

結露が凄い

結露が凄い

サイボに限らず、ヒルバーグ製品全てで言えることなのですが、気密性が仇となり、結露がものすごいテントです。晴れの日でもフライシートは雨漏りをしているような状態になることがあります。

夏の使用は厳しい

夏の使用は厳しい

こちらもサイボに限らず、ヒルバーグ製品全てで言えることなのですが、夏は灼熱です。とてもテント内に居ることが出来ないほど、蒸し風呂状態になります。サイボは4シーズン使用できるとありますが、あくまで北欧基準だと思います。日本で使う場合は、3シーズンテントといっても過言ではありません。

高い

高い

南極大陸の遠征チームが採用するくらいのテントなので、妥協の無い素材が使われている上に緻密な作業で手作りされたハイスペックテントです。お値段も3人用のテントとしては高額で、ハイスペックなツールームテントを買えてしまう程の金額です。

サイボについて忖度無しの正直な感想

サイボについて忖度無しの正直な感想

ヒルバーグのサイボは、日本ではあり得ない過酷な環境での使用を想定しているので、正直な話、日本のキャンプではオーバースペックすぎて本領を発揮しないどころか、デメリットが際立つテントだとおもいます。

サイボを使うキャンパーは「見た目がかっこいいから」「所有欲を満たしてくれるから」もしくは、「世界を股のかけるプロの冒険家」のいずれかではないでしょうか。サイボは車で例えるならば、フェラーリやランボルギーニのような立ち位置のテントだと思います。兎に角かっこいいテントです。所有欲はこれ以上無く満たしてくれますよ。

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