筆者のHARLEYは、TC88・キャブ最終モデルのFLSTC。ノスタルジックなモデルであり、如何にもHARLEY然とした佇まい。それはそれで良いのですが、やはり総重量が300kgを超える巨体。コーナーワークは楽しくありません。
そこで、2023のシーズンインを前にカスタムを行いました。それに合わせてリアキャリアも自作することを決意。ハイゼットの車中泊用ベッド同様、イレクターパイプで作製します。どうせですから、普段は使わず旅に出るときのみボルトオンできるよう簡単脱着を目指します。
目次
はじめに
Flstcにキャリアを取り付ける理由
私のバイクの使い方は「旅の相棒」。旅に出られなければ意味がありません。荷物が積めなければダメなのです。
まずフロント周りの余計なものは全て取り外し、フロントフェンダーは20年前に自作した小ぶりなものに。ウィンカーも変更し、8インチライザーでハンドルを上げ、黒いドラックバーで精悍な顔つきへ。
リアは中古フェンダーをカット。浅いフェンダーに加工し、サイドもカットしタイヤを見せます。無論テールライトも小ぶりなものへ。ハーネスはノーマルの中古を購入して取り付け。いつでもノーマルに戻せるようにはしてあります。これで随分軽くなりました。
両脇のサイドバックはそのまま残すとして、リアのキャリアは必需品。しかし、リアのフェンダーを加工したため、今まで使用していたキジマのキャリアは付けられません。
Flstcは00年モデル、既に23年ものです。キャリアは各種販売されていますが、どれもが高額。しかもキャリアは「簡単脱着式」にしたいのです。旅立つ前の夜にボルトオン!そうなると「自作」するしかありません。
イレクターパイプで作る理由
キャリアを自作する場合、ホームセンターで売られている鉄ステーとアルミ板を使うのが、これまでの手段。でも鉄ステーは結構高額で重量もあります。立体構造にしますから「つなぎ」をどうするかも大きな問題!
ハイゼット車中泊用ベッドを作った時に使ったイレクターパイプは、「軽さ」「価格」両面で優れています。その上、つなぎ部品である「ジョイント」の種類が極めて豊富!これは大きなアドバンテージです。素人には溶接なんて出来ませんから。
イレクターパイプはホームセンターで全てが揃います。YAZAKI化工株式会社のwebページからオーダーすることも可能。
キャリアの設計と寸法など
設計図の作製
イレクターパイプでDIYする場合、具材を買い揃えれば組み立ては簡単です。肝になるのは設計図。ここがいい加減では、組み立て時に様々な問題が生じます。
設計図は4回ほど書き直しました。キャリアは、車体と連結するベース部分と、荷物(コンテナボックス)を乗せる部分の2段構成です。
寸法など
ベース部分は600mmのイレクターパイプを2本用意します。荷物を載せる部分は、横450mm、奥行き300mmで組み立てます。それらを3本のパイプで連結して行きます。
荷物を載せるだけのキャリアならば、タンデムシートの上部に枠を組めば良い。けれど、「タンデムをしながらキャンプツーリングもしたい」という贅沢な目標があります。タンデムシートを生かすキャリアでなければならない。それであれば、荷物を載せる部分はタンデムシートよりも後方に位置しなければなりません。
その為にベース部分を600mmとしました。イレクターパイプは各種長さが選べるようになっています。600mmも、荷物を載せる部分の450mm、300mmもラインナップから選べます。後はベース部分と荷物を載せる部分を繋ぐだけ。これはテールライトとリアウィンカーの逃げを考慮し、仮組みした後、現物合わせで修正します。
キャリアの強度と安全性について
キャリアの強度は、正直「目算」でしか分かりません。これまで使用してきたキジマ製キャリアは、積載重量が5kgまで。キャリアの形状上、見た目と異なり重量物は乗せられません。
イレクターパイプ自体の強度はかなりのもので、不安要素は「バイクとキャリアのインターフェイス」。ここも金属で作製してしまえば、強度(積載能力)は10kgを超えるはず。安全性に関しては、後方からリアウィンカー・ナンバー・テールライトがきちんと見えることを優先。キャリアの高さ調節で安全を確保します。
自作キャリアの製作工程
パイプの準備
出典:ヤザキショッピング太さ28のイレクターパイプを準備します。
ベース部分:600mm×2本
積載部分:450mm×3本(長方形部分の長辺に1本づつ・真ん中にも1本)、300mm×2本(長方形部分の短辺)
連結部分:300mm×4本
基本は黒のイレクターパイプですが、ベースと積載部の連結はグレーのパイプにしました。
パイプ接合ジョイントについて
出典:ヤザキショッピング左のジョイントは積載部分の長方形を形作る際に利用。長方形の四隅を繋ぎます。購入個数は4個。
右のジョイントは積載部分の長方形の真ん中に通すパイプを繋ぐジョイント。長方形の中心にも1本パイプを通すことで強度を上げてやります。また「積載部分」と「土台部分」を繋ぐパイプの連結にも使いました。購入個数は10個。
エンドキャップ
出典:ヤザキショッピングベース部分は左右それぞれ600mmのパイプです。そのままではパイプ内部に雨などの水が浸入するので、エンドキャップで対策します。購入個数は4個。
イレクターパイプもジョイントも、それらを接着する専用接着剤も、全てYAZAKI製。近所のホームセンターで全て揃いました。
キャリアの仮組み
車体の寸法は細かく測りますが、オートバイという構造体に取り付けるのですから、最終的には「現物合わせ」が必要となります。パイプ同士の接着はせずに、先ずは車体への仮組み。
ナンバーやテールライトとの干渉もせず、良い感じで付きそうです。けれども土台部のパイプと荷物を載せる部分の連結パイプが長すぎます。
当初用意した300mmでは高さが有りすぎますね。300mm→140mmに変更しました。
この高さならば大丈夫。併せて、キャリア全体を後方へスライド。キャリアを使う時もタンデムを可能なようにしました。これで乗せたボックスがパッセンジャーの背もたれになります。
イレクターパイプの切断方法
イレクターパイプをカットするには、金属用の糸鋸やグラインダーでも切断は可能。しかし、「早く」「楽に」「美しく」切断するなら専用のパイプカッターが必要になります。けれど、このパイプカッターが結構なお値段。パイプもジョイントも安価なのにパイプカッターが高額ではお話になりません。
ネットで良い情報が無いか探ると、ダイソーさんから550円で販売中との情報をGET!早速、近所のダイソーへ走りました。ちなみにパイプを購入する際、ホームセンターで任意の長さでのカットは可能です。1カット30円程度。でも現物合わせを行いながら加工していきたい訳で、なればパイプカッターは必需品です。
出典:ダイソーネットストア
こちらは切断後の面取り刃まで付いています。これがもの凄く秀逸、ガタもありません。パイプをクランプで挟み込み、ノブを数回回したあと、カッター全体をくるくる回転させます。それを2~3回繰り返せば切断完了。
このお値段でこの精度、感涙ものです!切断可能なパイプは28φまで。これで積載部と土台部の高さ調整を行いました。
キャリアの取り付け方法
車体とのインターフェイス
今回設計時に一番悩んだのが、「車体へどのようにしてキャリアを取り付けるか」でした。パイプにドリルで穴を開けてボルトで固定する、最悪の場合はこれです。でも何か流用できないかと、ホームセンターを物色し…。
建築用のU字ボルトです。これを流用しました。
U字ボルトの固定には、アルミステーを使っています。強度不足が生じぬように、アルミステーの後ろに鉄ステーも一枚づつ噛ませています。実際にこれで旅に出て、強度が不足するようなら再考することにします。
キャリアの取り付け手順
極めて単純明快です。FLSTCの車体と、サイドバックステー(これはノーマル部品)を固定しているボルトが、左右に2本づつあります。そのボルトに噛ませるだけ。4本のボルトで固定→脱着です。
これならば旅立ちの際の荷物準備時、数分で車体にボルトオン。今回のキャリアを車体に付けるにあたり、キャリアの為の「車体側加工」は一切していません。
完成
キャリアは、バックステーの取り付けボルトに締め込みます。このバックステー、フェンダー(車体)との連結ボルトがあり、そこに取り付けています。
ノーマル車体のFLSTCは、リアフェンダーをストラットで補強していますが、今回ストラットは外しました。見た目をスッキリさせるためと、短いリアフェンダーにするためです。その分の強度を出すため、フェンダー裏側に鉄の補強を加えています。つまり、ボルトの強度は十分なのです。
合計4個のボルトで、キャリアは取り付け完了。旅立つ時に簡単ボルトオンです。
荷物積載のコツ
バイクで旅する場合、積載する荷物は大別すれば以下のようになります。
- 着替えや洗面、入浴道具
- タオル類
- レインスーツ
- 珈琲とマグ
宿を手配するバイク旅なら、これで十分。
荷物は両サイドのサイドバックに全て格納できます。ところが、キャンプツーリングとなれば…
- テント
- マット
- 寝袋
- 火器類
- 灯火類
- モバイルバッテリーや洗濯物を干す紐類などの小物
- 調味料類
- お酒/水/食材
これらの荷物が必要となります。
サイドバックに、1~6を収納。リアキャリアにホームセンターで売っているコンテナを乗せます。そのコンテナに、7~11を格納。寝袋は絶対に濡らせません。コンテナの中ならば豪雨の中でも濡れることはないのです。12はコンテナの上に乗せ、ゴムコードで固定。12はキャンプ場近くで購入しますからね。
終わりに
荷物を効率的に積む方法や便利グッズ情報は、ネットの中に山積しています。でも、そうした情報は案外アテにはなりません。「旅」のあり方は千差万別、便利も効率も人それぞれ。大切なのは、体験を積み重ねることです。
オートバイであれも車であれ、「ロングの旅」こそが私にとっては一番の醍醐味。旅には「積載」が欠かせません。今回のキャリア製作には、材料費がおおよそ8千円ほど。格安でキャリアが完成しました。しかも簡単ボルトオン。
2023夏は昨年に引き続き「北海道」を走ります。その前に春ツーリングでキャリアの試走。強度のテストも兼ねて…今から楽しみです。
今回の記事内容、動画もあります。こちらからどうぞ。
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