みなさんも、キャンプや山歩きを楽しんでいる最中に「野生の動物を見た!」という経験ありませんか?
自然の中に身を置く時間が長くなると、実際にはっきりと姿を見なくても聞きなれない野鳥の声を耳にしたり、普段は目にしない野生の動物の存在を感じたりすることって結構ありますよね。
フィールドサインにも注意を払っていると、ひそかに身を隠している生き物に気づく可能性もさらにアップします。私はいつもキョロキョロしているためか、日本で山歩きしている最中やスペインでのキャンプ中に、いろいろな生き物に出会うことができました。
出会って大喜びした体験から、ハラハラしたエピソードまで、今回はこれまで私が経験してきた中でも特に思い出深かったワイルドライフとの出会いをご紹介します!
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目次
日本で遭遇した野生動物
栃木生まれ栃木育ちの私。県内外の野山を暇さえあればソロで歩きづくしていました。身近なものから珍しいものまで、思い返すと結構たくさんの動物に会ったのですが、ダントツにインパクトの強かったのはこちら…。
ツキノワグマ
スミレを見ようと出かけた、まだ雪の残る春の山。
季節外れの山道は静かで、すれ違う人の姿もなく、聞こえるのは自分が雪を踏む音のみ。山をひとりじめした気分で野草を見ながら歩いていると、道脇の少し広くなった雪の積もったところに奇妙な足跡がありました。
ちょっといびつな、誰かが地下足袋を履いて歩きまわったような足跡。でも私の登山靴(24.5㎝)より一回り小さく、大人の足跡ではなさそうなサイズ。
なんでこの時点でピンとこなかったのでしょう。
「なんか不思議」とは思ったものの、あまり気にとめずサクサク先に進みました。
渓流にさしかかり、ちょっと一休みと岩に座りサーモスからお茶を飲んでいたときです。後ろの林の中から「ボソッ、ボソッ」という音。誰かが枝を揺らしているような音です。
山菜採りしている人がいるのかとふり向いたら、15メートルくらい離れた藪の向こうで何かが動いていました。もうちょっとよく見えるようにと立ち上がってみたら、枝の間に見え隠れする黒い姿。
クマでした。
高いお金を払って買ったベアスプレーはリュックの底のどこか。『ベア・アタックス』で読んだクマに襲われた体験談が脳裏を掠める…。
「クマを驚かしてはいけない。」
「走らず、背を見せずにゆっくり立ち去る。」
「やさしく話しかけるといい。」
いったいどうしたらとパニくりながらも、なんとか思い出したこれらのアドバイス。ゆっくり後退りしながらありったけの勇気を振り絞り、独り言のように言ってみました。
「ピクニック日和だね~。まだちょっと寒いけど、明日も天気良くなりそうかな?」
なぜクマに天気の話をしようとしたのかは、自分でも分かりません。
頭を上げ、キョトンと私の方を見るクマ。見つめ合うこと数秒。やばいかもと思った矢先、クマは背を向け林の奥の方へゆっくり去って行ってくれました。
この出来事のあと、遠くからクマを目撃するチャンスが2回ありました。運良く危険な目には遭いませんでしたが、登山などを頻繁に楽しんでいると野生動物に遭遇する機会はどうしても多くなります。
後日読んだのですが、クマに出くわしてしまったとき「これをすれば大丈夫」という確実な対処法は無いそうです。
自然を住み処とする動物のテリトリーに足を踏み入れるときはフィールドサインに注意を払い、それに応じてプランを変更することも大切と痛感したエピソードです。
ニホンジカ
もしかしたら心が通じてる?
そんな気持ちにさせてくれたこの若いシカ。木の後ろに隠れる私とバッチリ目が合いました。
逃げちゃうかなと思っていたら、おびえる様子もなく近くの葉をモグモグ。ちょこちょここちらを見ながら葉を食べ続け、ついには私から4メートルくらいのところまで近寄ってきました。
パシャッというシャッター音も気にせず、野生を忘れたかのようなリラックスした態度。
大抵は目が合うとぴょんと逃げて行ってしまう野生のシカですが、ここまで近づけたのは初めてです。
山歩きをしていて見つけたこのシカスポットは来る人も少なく、訪れるたびシカの群れに出会えたお気に入りの場所
人の気配を感じるとパッと森の中に隠れてしまう、シャイな野生のシカ。我慢くらべのように身動きせずじっとしていると、一頭、また一頭と姿を現します。
モウセンゴケが紅葉する秋には、角を突き合わせる牡鹿や「キィアアオォォー」と鳴く様子もじっくり観察できました。
ニホンザル
温泉につかる姿を見るとかわいらしいニホンザル。山中でよく見かけていたので怖いと思うことは無かったのですが、一度だけハラハラした思いが…。
野草の写真を撮ろうと、山奥の雑木林を歩いていた時のことです。
地面にへばりつくようにして写真を撮っていたら、バサバサッ、バサバサッと枝のきしむ音。おそるおそる立ち上がったら、すでにサルの群れに囲まれていました。
「やばい!」とは思っても、突然逃げ出すのはおそらくダメ。
どうしようか必死に考えつつ、刺激しないようにゆっくりと見まわすと、木の上にも地面にも約15匹のサルが私の周りにいました。
一瞬頭をよぎった「これはすごいシャッターチャンス?」という危険な考えを押しのけ、動かずに伏し目がちに近くのサルを見ると、時おり私に目線を向けながら新芽を食べ続けています。
ほかのサルもチラッとこちらを見るものの、私にはあまり気を払わず食事に没頭している様子。
こっちが気づかないふりしてれば、そのうち通り過ぎてくれるかも…。
長い時間サルに囲まれ立ち尽くしていたように感じたのですが、実際はたぶん5分くらいでしょう。
やがて先導するサルに続き、群れは林の奥に去っていきました。
怖かったです。
日本は野生の王国!
夜の神社で見た空飛ぶ座布団、ムササビ。キノコ採りの最中に遭遇したイノシシ。田んぼの周りではハクビシンやキツネに出会ったことも。数えてみたら、日本で遭遇した哺乳類は30種以上にのぼります。
野鳥の種類が豊富な日本の野山は、バードウォッチングにも最適。
やっぱり日本ってすごい!
スペインで出会った野生動物
ところ変わって。スペインと聞いて野生動物を連想する人は少ないと思いますが、スペインも意外なワイルドライフの楽園です。
市街やリゾート地から離れると自然も豊かで、日本と共通点はあるもののちょっと違った野鳥や動物を見ることができます。
アナウサギ
日本でも野生のウサギを見ることがありますよね。日本の野ウサギは英語で「hare(ヘアー)」と呼ばれ、穴を掘る習性がありません。
スペインでよく見かけるウサギはいわゆる「rabbit(ラビット)」で、地面に巣穴を掘って生活するアナウサギです。
果樹園や野原に囲まれている内陸部のキャンプ場に行くと、朝夕よく見かけます。熱い日中は穴に隠れていることが多いのですが、たまに木陰の多いハイキングルートでだら~っと伸びている姿も目にします。
テントのすぐそばまで近寄ってきた、心臓にも毛が生えているのじゃないかと思える恐れ知らずのウサギもいました。
田舎に行くと、本当にうじゃうじゃいます。
フクロウ
コキンメフクロウ
夜の山はフクロウが主役。
明かりを消しうとうとしかけていたら、テントのすぐそばの松の森から「ホー ホッ ホホホホー」と透き通ったよく通る声。モリフクロウ(Strix aluco)です。
しばらくすると森の奥の方から別の「キュエッ キュエッ」という鳴き声も。オスの鳴き声とデュエットするメスの声でした。
スペインには約20種のフクロウがいるとのこと。森の近くでキャンプすると、フクロウの声を耳にすることがよくあります。
別のキャンプ場では、2~3秒置きのソフトな「フーー」を聞きました。こちらはトラフズク(Asio otus)です。「ギュイーーーッ ギュイーーーッ」と叫び声のこうに聞こえたのはメンフクロウ(Tyto alba)。
夜行性のフクロウを見ることはなかなか難しいのですが、中には昼間も活動するフクロウもいます。
コキンメフクロウ(Athene noctua)は数も多く、畑地の塀や電線に止まっている姿をよく見かけます。小さめでずんぐりとした姿、ほんとうにかわいいです。
日本では野生のフクロウが11種生息するそうです。キャンプに行ったときは、ぜひ耳を澄ませてみてください。
ヤツガシラ
テントの前でゆったりとお茶を飲んでいると、頭の上から「ポ ポ ポ… ポ ポ ポ…」という声。
芝生のあるキャンプ場ではおなじみのヤツガシラです。
夫がテントの中でゴソゴソ立てている音にびっくりし、頭の冠羽をセンスのようにパサっと広げキョロキョロしていました。
ちょっと南国風のこの鳥。日本ではなかなか見る機会がありませんが、スペインではよく見かける旅鳥です。
シロエリハゲワシ
「はやく、はやく!」
野歩き中、ちょっと用足しにと藪の中に消えた夫を急かす私。
慌てて出てきた夫も空を見上げて「うわーっ!」。
青く澄んだ空を悠々と飛んでいく巨大な鳥は、シロエリハゲワシでした。
以前にも遠くから見たことはあったのですが、今回は手を伸ばせば届きそなほど近い頭上を3羽のハゲワシが滑空。つんと伸ばした足、ふわふわした白いエリマキのような羽毛もしっかり見ることができました。
大きく広げた翼は3メートル近く。悠然と、彼方の山へと消えていきました。
めちゃくちゃかっこいい鳥でした。
アカアシイワシャコ
野道をとことこ歩く後ろ姿。コロコロした愛嬌満点のキジ科のこの鳥、スペイン語ではPerdiz Rojaと言います。日本語ではアカアシイワシャコと呼ぶそうです。
危険を感じたときは飛ぶこともできるのですが、いざとなるその瞬間まで早足で歩き続けるかわいさ満点の鳥。川沿いの草地や野原でペアで歩いている姿をよく見かけます。
ちなみに夫は、イワシャコのことを「Dopey (ぼんやりしたという意味)」と呼んでいます。
アカリス
「フラップ開けて!そっちも!」
買い出しから戻ってテントのフラップを開けたら、テント内を猛スピードで跳ね回るリス。出口が分からなくなってパニックしたのか、突然現れた人の姿に驚いたのか、ぴょんぴょん動き回るリスを見て私の方がびっくり。
リスが食べそうなものはテントの中になかったので、なんで入り込んだのか不思議です。
松ぼっくりをガリガリかじるリスはよく見るのですが、テントに入られたのは初めてです…。
リスが食べた松ぼっくりの芯。森のエビフライ。
イノシシ
右下にくっきり見えるイノシシの足跡
日本の野山でもおなじみのイノシシ。スペインにもたくさんいます。
キャンプ場周辺の山道を歩くと必ずと言っていいほどイノシシの足跡を見るので、特に夕暮れの散歩時には注意が必要です。
ハイキング中に藪の中をザッザッと走る重量感のある足音を何度か耳にしていますが、実際に出くわしたのはたった一度。100メートルほど離れた林道の真ん中に立っていました。心臓バクバク状態だったのですが、私に気づいてすぐ林に消えて行ってくれました。
悲しいことに、車にはねられて死んだイノシシを道脇で見かけることもよくあります。
いつか見てみたい野生動物
実際に見てみたい動物はたくさんいるのですが、こちらが死ぬ前にいちどは見てみたいと思っているあこがれの動物です。
イベリアオオカミ
スペインでは有名なマルコス・ロドリゲス・パントーハさん。7歳の時から12年間、野生のオオカミに育てられました。19歳のとき警察に発見されて文明に連れ戻されたものの、人間としての暮らしに馴染めず、74歳の現在でもオオカミと一緒に暮らしていたときが一番幸せだったと言っています。
スペインの新聞エルパイースで彼の話を読んで以来、スペインに生息するイベリアオオカミを見たくて仕方がありません。
自然の恐ろしさのシンボルでありながら、優しい面を見せるオオカミ。昔から人に嫌われ、怖がられてきたイベリアオオカミは、現在は絶滅危惧種。主にスペイン北西部に生息し、現在は2500頭しかいないとのことです。
遠目でも、一目でもいいから見てみたい野生動物です。
イベリアオオヤマネコ
世界のネコ科に属する野生動物の中でも、最も数が少ないと言われるイベリアオオヤマネコ。15年前には個体数が100頭以下まで減少してしまいましたが、保護活動と繁殖プロジェクトにより現在は500頭以上に増加したそうです。
現存する生育地はスペインの南西部ですが、1~2年前、約1000㎞離れたバルセロナ近郊やバレンシアでも目撃されました。
まだまだ個体数が少なく見るのがとても難しいオオヤマネコですが、いつかその雄姿を見てみたいと思っています。
野生動物と人間の付き合い方について
アウトドアで過ごす機会の増える夏から秋にかけては、ひょっこり顔を出す野生動物に出会うチャンスも多くなります。
だからこそ「かわいい!」と思う小動物に会っても近づいたりエサをあげたりしない、クマやサルの群れにばったり遭遇しても急に動いたり大声を出したりしないといったマナー、動物が相手でも大切です。
野山は野生動物の住み処。入るときは「ちょっとお邪魔します」と、謙虚な気持ちでインパクトを最小限にするよう心がけるべきかもしれません。
自然の中で生きる動物に出会うことは、アウトドアの醍醐味のひとつ。マナーを守り、出会いを楽しみましょう!
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