加藤 正幸
【大人のためのSDGs】第一回 SDGsの歴史(成り立ち)と目的

【大人のためのSDGs】第一回 SDGsの歴史(成り立ち)と目的

今やテレビCMや様々なメディアでも見かけるようになったSDGs(持続可能な開発目標)という言葉。名前は知っているけど何をしているのか分からないという方に向けて、日本国内でSDGsの普及・啓発に取り組んでいるチャウス自然体験学校の加藤正幸さん(NPO法人チャウス理事長)に分かりやすく解説していただきます。

未来の暮らしに向けて私たちが出来ることは何なのか。自然を愛するキャンパーなら絶対に知っておきたい知識を全6回の連載でお伝えします。

イントロダクション

みなさん『SDGs』と言う言葉を知っていますか?

Sustainable Development Goals(サステナビリティデベロップメントゴールズ)の略で「持続可能な開発目標」と約されます。

これは国際連合(以下、国連)が持続可能な開発のために必要な人類の行動計画として2015年9月、アメリカ・ニューヨークの国連本部にて「国連 持続可能な開発サミット」が開催され、150を超える加盟国首脳の参加のもと「我々の世界を変革する:持続可能な開発のため2030アジェンダ(計画)」を採択したものです。

sdg_poster_jaイラスト:国連広報センター

この持続可能な開発のため2030アジェンダの中に「持続可能な開発目標(SDGs)」が明示され17のグローバル目標と、169のターゲット(達成基準)が盛り込まれ、貧困や飢餓、気候変動、平和に至るまで、発展途上国のみならず、先進国も取り組み、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指し、地球上の「誰一人取り残さない」ことを誓っています。

【おしえて!かとQ】 「持続可能な開発」ってどういうこと?

今、世界中では地球温暖化をはじめとした環境問題、貧困や飢餓、感染症のパンデミックなど多くの社会問題が起きています。

 

この社会問題は世界中の人々は誰もが「幸せになりたい」という欲求があるなかで、『長い年月、便利な生活を求めていった結果』と言っても過言ではないでしょう。

 

「人々が幸せになりたい」という欲求は世界中の人々に与えられた権利でもありますが、便利な生活を維持していくために、今も絶えずに資源は使われ続けています。

 

例えば、私達の身近な暮らしの中にある「電気」は、スイッチを入れれば明かりが灯り、炊飯器はいつも温かなご飯が炊かれます。この「電気」は『どこからきて、どうやって生まれて』いるのでしょうか?

 

家に繋がっている電線をたどって行くと、火力発電所や水力発電所、現代ではソーラー発電所、風力発電所などにも繋がっている所も多いと思いますが、日本の電力の約80%が火力発電所で生み出されています。

 

では、その「火力発電所」はどんなエネルギーを使って電気を発電しているのでしょうか?

 

日本全体の電源構成(2019年速報)図:日本全体の電源構成(2019年速報) 出所:電力調査統計などより環境エネルギー政策研究所作成

 

図を見てみると石炭やLNG(天然ガス)、石油などといった天然資源が使われていることが解ると思います。日本は島国であり、天然資源に乏しい国でもありますので、多くは海外からの輸入に頼っています。

 

「電気のスイッチを入れれば明かりが灯る」など、当たり前の暮らしですが、天然資源は無くなったらどうなるでしょうか?

 

今、世界中にある資源をこのまま使い続けると「あと40年で無くなる」と言われています。

 

今の暮らしのまま「電気を使い続けていれば」20年後、30年後という近い将来『今と同じ暮らしができなくなる』と言うことだけでなく、火力発電所などから排出される二酸化炭素などの温室効果ガスの影響による「地球温暖化」などの社会問題が次々と起こることが考えられます(もしかしたら、すでに問題が起こっているかもしれません)。

 

この様に私達が大人になる近い将来の頃だけでなく、これから生まれてくる次世代の人たちのためにも、私達の一人ひとりが『今の暮らしを見直す必要がある』のではないでしょうか?

 

「今を生きる人々も、未来に生まれてくる人々も幸せに暮らす」ために、先進国も、途上国も『世界中の人々が力を合わせて、知恵を出し合って』いく方法が「持続可能な開発(Sustainable Development)」です。

SDGsの歴史・なりたち(MDGsとリオ+20)

2015年の国連サミットにて採択された「SDGs」ですが、採択されるまでには長い歴史があります。

MDGs(Millennium Development Goals:ミレニアム開発目標)

「SDGs」の前身として位置づけられている「MDGs」と言うものがあります。

「MDGs」は2000年9月の国連サミットで147の国家元首を含む189カ国の加盟国代表が、21世紀の国際社会の目標として、より安全で豊かな世界づくりへの協力を約束する「国連ミレニアム宣言」を採択しました。

また、1990年代に開催された主要な国際会議やサミットで採択された国際開発目標を統合し、国際社会の新しい共通目標としてまとめられたもので、2015年を達成期限として、国際社会の支援のもと、主に開発途上国の貧困や飢餓、差別の撲滅など8つの目標と、より具体的に示した21のターゲット(達成基準)、そして進捗状況を測るための60の指標を掲げていました。

MDGsの8つの目標イラスト:国連広報センター

1.極度の貧困と飢餓の撲滅

1-A)1990年と比較して1日の収入が1米ドル未満の人口比率を2015年までに半減させる。

1-B)女性、若者を含むすべての人々に、完全(働く意思と能力を持っている人が適正な賃金で雇用される状態)かつ生産的な雇用、そしてディーセント・ワーク(適切な仕事)の提供を実現する。

1-C)1990年と比較して飢餓に苦しむ人口の割合を2015年までに半減させる。

2.初等教育の完全普及の達成

2-A)2015年までに、世界中のすべての子どもが男女の区別なく初等教育の全課程を修了できるようにする。

3.ジェンダー平等推進と女性の地位向上

3-A)2005年までに初等・中等教育における男女格差の解消を達成し、2015年までにすべての教育レベルにおける男女格差を解消する。

4.乳幼児死亡率の削減

4-A)1990年と比較して5歳未満児の死亡率を2015年までに3分の1に削減させる。

5.妊産婦の健康の改善

5-A)1990年と比較して妊産婦の死亡率を2015年までに4分の1に削減させる。

5-B)2015年までにリプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)への普遍的アクセス(必要とする人が利用できる機会を有する状態)を実現する。

6.HIV/エイズ、マラリア、その他の疾病の蔓延の防止

6-A)HIV/エイズの蔓延を2015年までに阻止し、その後減少させる。

6-B)2010年までにHIV/エイズの治療への普遍的アクセスを実現する。

6-C)マラリアおよびその他の主要な疾病の蔓延を2015年までに阻止し、その後減少させる。

7.環境の持続可能性確保

7-A)持続可能な開発の原則を各国の政策や戦略に反映させ、環境資源の喪失を阻止し、回復を図る。

7-B)生物多様性の損失を2010年までに有意(確実)に減少させ、その後も継続的に減少させ続ける。

7-C)2015年までに、安全な飲料水と基礎的な衛生設備を継続的に利用できない人々の割合を半減させる。

7-D)2020年までに、最低1億人のスラム居住者の生活を大幅に改善する。

8.開発のためのグローバルなパートナーシップの推進

8-A)開放的で、ルールに基づいた、予測可能でかつ差別のない貿易および金融システムのさらなる構築を推進する。(グッド・ガバナンス、開発および貧困削減に対する国内および国際的な公約を含む。)

8-B)後発開発途上国(LDC)の特別なニーズに取り組む。(LDCからの輸入品に対する無関税・無枠重債務貧困国に対する債務救済および二国間債務の帳消しのための拡大プログラム貧困削減に取り組む諸国に対するより寛大なODAの提供を含む。)

8-C)内陸国および小島嶼開発途上国の特別なニーズに取り組む。(小島嶼開発途上国のための持続可能な開発プログラムおよび第22回国連総会の規定に基づく。)

8-D)国内および国際的な措置を通じて、開発途上国の債務問題に包括的に取り組み、債務を長期的に持続可能なものとする。

8-E)製薬会社と協力し、開発途上国において、人々が必須の医薬品を安価に入手・利用できるようにする。

8-F)民間セクターと協力し、特に情報・通信における新技術による利益が得られるようにする。

「MDGs」を取り組んだ結果、極度の貧困に苦しむ人々の割合は1990年には、開発途上国の半数に近い人口が一日1.25ドル以下で生活していましたが、2015年にはその割合が14%まで減少し、10億人以上の人々が極度の貧困から脱しました。

小学校の就学率は、2000年の83%から2015年には91%まで達しました。

また、HIVへの新たな感染は2000年から2013年の間で約40%低下し、感染者数も約350万人から210万人へ減少するなどそれぞれの目標において、一定の成果を上げることに成功しました。

しかし、「MDGs」の推進だけでは十分に取り組むことができない、新たな課題も浮き彫りになり、格差、女性、子供、障害者、高齢者、難民など立場の弱い人が取り残されないようにする取り組みが重要とされました。

リオ+20(国連持続可能な開発会議)

「MDGs」が採択された同じ時代、2012年6月、ブラジル・リオデジャネイロで開催された「国連持続可能な開発会議(リオ+20)」と言うものがあります。

「リオ+20」とは、1992年に同じ、ブラジル・リオデジャネイロで開催された「国連環境開発会議(通称:地球サミット)」フォローアップ会議で、各国の首脳レベルが参加し、今後10年の経済・社会・環境のあり方を議論しました。

1992年の「地球サミット」では、「環境と開発に関するリオ宣言」とそれを実現するための行動計画「アジェンダ21」が採択され、さらに気候変動枠組条約や生物多様性条約の署名が開始されるなど大きな成果を上げ、現在に至る地球環境保全や持続可能な開発の考え方のベースが作られました。それから20年後の世界ではエネルギーや資源の有限性など「地球の限界」が明確化し、国際社会では環境保全と経済成長の両立を目指すことが課題となりました。

「リオ+20」では経済・社会のあり方を見直す「グリーン経済」と、「持続可能な開発」のための新しい枠組みづくりを主要なテーマとして議論が展開されました。

「持続可能な開発(SDGs)」に向けて活発な議論がスタート

国連サミットにてSDGsが採択写真:外務省

「リオ+20」では「持続可能な開発」についての活発な議論がスタートするとともに「SDGs(持続可能な開発目標)」について、政府間交渉のプロセスを立ち上げ、「MDGs」が「SDGs」に統合されることも合意されました。

そして、2015年9月に開催された、国連サミットにて「SDGs」が採択されました。

全人類が取り組むグローバル目標「SDGs」

国連本部写真:国連本部 ©UN Photo / Cia Pak

このように「SDGs」が採択されるまでには長い道のりがあり、多くの国々の人々が関わって生まれたグローバル目標です。

以前から取り組まれていた、途上国の経済をより良くしようという開発目標やMDGsに付け加え「経済・社会・環境」全てに対して、発展途上国のみならず先進国も取り組み、国家や企業のみならず地域や家族も取り組み、お父さんやお母さん(大人)のみならず子どもも取り組み、2030年までに持続可能でよりよい世界の実現を目指し、行動していくのが「SDGs」なのです。

【第二回】SDGsが掲げる17の国際目標と169のターゲットへつづく

参考文献
●SDGsの歴史(成り立ち)と目的
国際連合広報センターホームページ
外務省ホームページ

●おしえて!「かとQ」
国際開発計画(UNDP)ホームページ
内閣府ホームページ「国連開発計画『多次元貧困指数』を構成する項目一覧」
https://www8.cao.go.jp/kodomonohinkon/chousa/h28_kaihatsu/2_02_2_2.html

紹介
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  • 加藤 正幸
  • 加藤 正幸チャウス自然体験学校代表
  • 2000年4月~2003年3月まで(独)国立赤城青年の家(現・青少年交流の家)に勤務、自然体験活動の指導・運営マネージメントを学ぶ。2002年12月チャウス自然体験学校設立し、2017年2月にNPO法人取得。理事長。
    「汗まみれ泥まみれになって・・・夢中になって活動する」ことをモットーに、現在も現場に立ち、子ども達と同じ目線になって活動しており「かとQ」の愛称で親しまれている。

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