あなたはキャンプで何が一番楽しみですか?バーベキューなどのアウトドアクッキングが何より楽しいと感じるキャンパーもいるでしょう。それとも釣りやハイキングなどアクティビティが楽しいと答える方もおいででしょう。
けれど、長年あちこちのキャンプ場に出かけ、四季を通じて自然の中に身を置いているベテランキャンパーの多くは、キャンプで最も幸せな瞬間は焚き火の時間と答えています。特に、地面で直接火を焚くことが出来る「直火」は最高です。
その一方で、ごく限られたマナーを守らない、心ないキャンパーのふるまいが原因で、年々直火の禁止されたキャンプ場が増えているのも事実です。ただし、心配は無用。直火の許可されていないキャンプ場でも、ファイヤースタンド(和名:焚き火台)が1台あれば、その夢は叶います。
薪に火をともせば、木の香の煙と黄色い炎のゆらめきが、たちまち目の前に現れます。焚き火を囲んで仲間と語らうのも良し、独り星空の下でスキットルに入れたシングルモルトウィスキーをちびちび口に運ぶのも良し、その楽しみ方は百通りにも広がります。
この記事では、キャンプにおける焚き火の楽しみ方についてご紹介致します。どうか最後まで、お付き合い下さいね。
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目次
キャンプ場での焚き火の楽しみ方(準備~後始末まで)
直火が許可されている個人的におすすめのキャンプ場
まずは年々数は少なくなっていますが、今でも東京近郊には直火を楽しめるキャンプ場がいくつか残っていますので、その中から初心者でも安心して直火ができる特におすすめのキャンプ場をご紹介します。
山逢の里キャンプ場(埼玉県秩父市)
自然が豊富に残る埼玉県秩父市の郊外、吉田地区にあるオートキャンプ場です。オートキャンプ場なので、各サイトまで車で進入が可能です。そのため、キャンプ道具の積み下ろしが苦になりません。40カ所ある各テントサイトには、コンクリートと軽量ブロックでしつらえた直火の出来る焚き火の炉が設けられており、初心者でも安心です。
広々としたキャンプ場の中央にはレンタル用品も充実した清潔なセンター棟が建っています。焚き火用の薪はもちろん、火バサミなどの小物類も借りることが出来ます。野外トイレも水洗なので女性にも大人気。またキャンプ場内には入浴施設「かたらいの湯」も設けられ、家族連れにも好評です。直火はもちろんのこと、ペット同伴もOK。
木々に囲まれた、自然一杯のキャンプサイトの近くには小川も流れており、川遊びに最適です。スタッフも親切でいつも笑顔で対応してくれます。
住所 | 埼玉県秩父市上吉田1211 |
---|---|
電話番号 | 0494-78-0002 |
営業期間 | 通年(火曜日定休日) |
料金 | オートサイト3,240円(AC電源付き+1,050円) |
アクセス | 関越自動車道「花園IC」下車65分 |
交通機関 | 西武秩父駅下車。バスで「万福寺」下車、徒歩10分。 |
公式サイト | 山逢の里キャンプ場 |
直火禁止のキャンプ場が増えている理由
そもそも直火とは、直接地面で焚き火をすることです。燃やした灰や熾火(おきび)が飛び散らないよう石や岩、ブロックなどでかまどを作ったり、浅いくぼみを掘ったりする場合もあります。乾いた地面なら、薪を直接地面に井桁に並べて火を付ければすぐに焚き火は始まります。
直火は、実に単純な焚き火の方法です。けれど、なぜ禁止にされてしまったかというと、その理由は以下の通りいくつか考えられます。
環境への負荷
1つ目に、直火禁止のキャンプ場などに掲げてある掲示板には「環境への負荷」が高いことが詳しく説明されています。炎の熱によって植物の生育を妨げたり、土中の微生物を死滅させてしまったりするという内容です。
安全面の配慮
2つ目は「安全面の配慮」です。風の強い火に、直火で火を燃やすと近くにあるテント本体に火の粉が飛んで火災が発生します。冬枯れた時期には、周辺の林や建物への延焼などの危険性も指摘されています。
キャンプマナーの悪化
3つ目は、悲しいことに燃やし残した炭や薪をそのまま放置していったり、大量の水で火を消すために、地面をぐちゃぐちゃにしたままで帰ってしまったりするキャンパーがいます。消し切れていない薪は危険なだけではなく、次に使用する利用客にとっては迷惑千万です。地面に穴を掘って、そのまま埋めれば済むという問題ではありません。火の消え切っていない薪や炭の上に、気付かずテントを張ってしまったら大変な事故が発生します。
これ以外にも、直火が禁止されてきた背景にはいくつも理由がありそうです。北関東地区にある高規格キャンプ場の総支配人に伺った話では、直火で汚されたテントサイトを、キャンプ場の少人数のスタッフで片付け整備する事はかなりの負担になっているとのこと。
旧知の支配人も、「直火禁止」が苦渋の決断であることを、私に語ってくれました。
焚き火を始めるための準備
中々制約の多いキャンプ中の焚き火ですが、焚き火なくしてキャンプの楽しさは味わえません。この章では、焚き火を始めるために必要な準備について順番にご説明します。
直火禁止でも焚き火ができる「ファイヤースタンド」
直火が出来なくても焚き火は出来ます。それを可能にしてくれるのが「ファイヤースタンド」(焚き火台)です。直火がキャンプ場で禁止された頃から各メーカーで試作品の販売が開始されました。
例えば「スノーピーク」のファイヤースタンドなど初期に販売されたものは、堅牢ですが相当の重量があります。スチール製の焚き火台もあるので使用後の手入れには一工夫が必要です。重い上に手入れが面倒なので、ついつい使うことをためらいがちになってしまいますが焚き火台としては一級品です。現在でも尚、性能上遜色はありません。
その一方で、最近の主流は軽くてコンパクト、手入れも簡単がキャンパーに受けています。焚き火台は形状も素材も様々です。チタン製の極軽量モデルの商品もラインナップされていますが、弱点は高価なことです。1万円以上はざらであり、数万円を越えるものまであります。
そんな中ではステンレス製の焚き火台などは5千円程度で購入できます。キャプテンスタッグ製のファイヤースタンドなど3千円程度から品揃えされています。中には2千円台で購入できる他社のベストセラーモデルもあります。
焚き火のお供にあると便利な「ランタン」
焚き火をするのに、灯り取り用のランタンがあると大変便利です。火を燃やすのだから何も灯りがなくてもいいのでは?と思われるかも知れません。けれど火を付ける時と消す時は、時間帯が遅ければ辺りは真っ暗です。
何よりも暗闇の中で作業することの効率性の悪さは、経験した方ならよくお分かりのはずです。手元が暗いのは不効率の上、思わぬ怪我や火傷につながります。
焚き火をする時には必ず灯油やガス、ホワイトガソリンを燃料とするいずれかのランタンを一つ以上持参しましょう。値段は張りますがコールマンなら約2万5千円台から、人気・性能ともにNo.1のランタンが購入できます。
さらにアドバイスすると、ランタンと一緒にランタンフックも一つあると便利です。テーブルの上にランタンを置くよりも格段に周囲を明るくします。また、食事中うっかり灯りを引っかけて転倒させるようなこともありません。ランタンとランタンフックはセットで購入して下さい。
薪の調達方法と薪の種類
焚き火をするには燃料となる薪を調達しなければなりません。薪を準備するには次の各方法があります。
経費を節約するなら、もっともこの方法がベスト。ただし、そうそう薪が落ちているキャンプ場ばかりとは限りません。何よりもよほど乾燥している冬季でもない限り、地面に落ちている薪は湿っていて火が付きにくいだけでなく、もうもうと煙を出し続けます。焚き火を楽しむどころか、煙で目と喉をやられて散々な時間を味わいます。現地での調達はかなりの冒険です。薪を拾っている途中で怪我をしたり、薪に潜んでいた虫に刺されたりすることもままあります。経費は浮きますがあまりおすすめはできません。
最も確実で安全に薪を調達できる方法です。ただし難点が二つ。一つは、価格が予想以上に高い場合が多いことです。もう一点は、深夜遅くには販売していないという点です。ついつい火を囲んで語り明かしている内に、焚き火の燃料切れが発生します。補充したいと思っても管理棟はすでにクローズされています。朝になるまで待たなければ薪は購入できません。
自宅にある薪を運んでいく方法と、DIYショップ等で安く薪を購入してキャンプ場まで持ち運ぶのがこの方法です。自宅に薪のストックがない人も、ショップに行けば管理棟で買うよりもかなり低価格で調達できます。ただし、この方法にも難点がひとつ。荷物が嵩張るという点です。バタ薪ならばまだしも広葉樹の薪は重量があり相当な重さになります。それを承知で薪が運べるなら断然予算軽減に役立ちます。
また、薪は次の2種類を用意してください。
どんなに高性能な着火剤を使っても、いきなり密度の高い広葉樹の薪に、火を着火するのはほぼ不可能です。まず、杉や細い枯れ枝を燃やして熾火を作らなければ広葉樹は燃えません。キャンプ場の管理棟には2種類薪が用意してありますので、必ず一束は「バタ薪」を購入することを忘れないようにしましょう。針葉樹で出来た薄く燃えやすいバタ薪が焚き火には必須です。
バタ薪である程度かまどが暖まり、熾火が出来たら広葉樹の薪を火にくべます。次第に薪全体に火が回り、ゆっくりゆらゆらと火が燃え始めます。2,3本の広葉樹の薪を井桁に置いて、上手に火が回るように注意すれば、かなり長い時間焚き火を楽しめるはずです。
着火剤の準備
焚き火は、まずバタ薪に火を付けることから始めますが、効率よく燃やすには着火剤が至って便利です。何より着火剤があれば雨の日であろうと多少薪が湿っていようと必ず短時間に火が付きます。焚きつけ用に使う新聞紙だけでは中々そうは行きません。
着火剤は原料や値段によって様々な商品が販売されています。それぞれ一長一短あるので中々どれが良いのかおすすめしにくいところですが、Amazonの人気ランキングなどで見るとロゴスの着火剤がかなり売れているようです。ヤシガラを原料としており、マッチ一本で簡単に着火する上に固形燃料としても使用可能です。
固形でなくても、チューブ入りの液体タイプやジェルタイプのもの等も市販されています。ぜひ一度それぞれ購入して使ってみると、その良さや欠点が分かるはずです。
薪の並べ方と火のつけ方・消し方
直火にせよ焚き火台を使うにせよ、火を燃やすのは案外簡単です。バタ薪や小枝は、すき間を空けて空気が入るように重ねて並べ、着火剤に火を付けるだけで焚き火は始められます。
ただ、次の注意点があるのでお忘れなく。
風の強い日は、焚き火はあきらめましょう。特に乾燥した冬の時期は、山火事や建物火災の原因になりかねません。風があったら、テントの中で静かに過ごしましょう。
焚き火を行う場所の周りには火が燃え広がるような物を置いてはいけません。その意味で、枯れ葉や新聞紙など灰が舞い上がる焚きつけは使ってはいけません。特に直火は灰が舞い上がりやすいので要注意。ごみを一緒に燃やすことなど、ゆめゆめしませんように。
焚き火の楽しみ方
薪に火が回ったら、いよいよ焚き火の始まりです。焚き火には色々な楽しみ方があります。手軽に出来るいくつかの方法をご紹介します。
調理を行う
燃やした炎を最大限有効活用する方法が、調理をすることです。燃やしている途中の炎は火力が強すぎるので、いったん熾火にしてからコンロやフライパン、金網を乗せます。遠赤外線の炎は思った以上に火力を残し、炒め物や煮物、炙り物など様々な調理が楽しめます。
キャンプ料理の定番であるバーベキューも、熾火なら上手に肉や野菜に火を通すことが出来ます。専用鍋(ダッヂオーブン)を使って煮込み料理に挑戦しても良いかも知れません。普段は奥様の手料理に舌鼓を打っているご主人も、この時ばかりは腕の見せ所です。
暖を取る・炎を見つめる
晩秋から初春にかけて、キャンプ最大の楽しみは焚き火であると言って良いかもしれません。しんしんと冷え込むアウトドアでは、炎の温もりが何よりうれしく感じるものです。加えて、炎の重要性は寒い季節に限ったものというわけではありません。
標高の高い高原のキャンプ場なら、真夏でも夜間は20度以下になります。冷えた体を暖め、心をほっこりさせる炎には魔法のような力があります。気の合った仲間と焚き火の傍らで語り明かすのも良いでしょう。ソロキャンプなら、炎をぼんやり眺めているだけで、過ぎ去った懐かしい思い出が走馬燈のように浮かんでくることでしょう。
焚き火には見つめている人間の心を柔らかく解きほぐし、癒やしてくれる力があるようです。
コーヒー・お茶を沸かす
コーヒー好きにはたまらないのが、キャンプで口にするコーヒーの香りです。普段カフェや自宅で飲んでいるコーヒーとはまたひと味違った味わいを感じさせます。ドリップコーヒーのパッケージを開けて、一杯ずつ丁寧に抽出したコーヒーに勝るものは有りません。
もしもコーヒーが苦手なら、ハーブティーやココア、ホットレモンなどを持参しても良いでしょう。焚き火で沸かしたお湯なら、コーヒーも紅茶も、ホットレモンも断然美味しく感じるはずですから。
アルコールを楽しむ
キャンプで嗜むアルコールは大人だけの喜びです。子どもたちが寝静まり、起きているのはご夫婦か、夜を楽しむことを許された大人ばかり。少量のアルコールを専用の「スキットル」で口に運ぶ幸せは、一度でも経験したことがあるキャンパーならご理解いただけることでしょう。因みにスキットルにはシングルモルトウィスキーが良く合います。
夜の静寂(しじま)を楽しむために、焚き火とお酒があるのだということを再確認します。
読書を楽しむ
焚き火の温もりを感じながら独り静かに読書に耽るのはソロキャンプの醍醐味です。普段は忙しさの中に読書する余裕などない子育て世代の方はむろんのこと、企業戦士として働き、今は第一線をリタイヤしたみなさん方に、ぜひおすすめの過ごし方です。
焚き火の炎だけではやや光源に暗さを感じるかも知れません。そんな時に役立つのがツーマントル型の高容量ランタンです。値段は1万円以上しますが、明るさは抜群です。キャンプで読書を楽しみたいなら、ぜひ一度ご検討下さい。
焚き火の楽しみ方は千差万別です。気の合った仲間と出かけるキャンプなら、炎を見つめながら友と一晩、語り明かすのも良いでしょう。ソロキャンプなら、独りでいることの「心地良い孤独」を噛みしめることができます。それは、焚き火をしていると孤独と寂しさが全く別物であることをキャンプで実感するからだと私は思っています。
焚き火の後始末
後始末の基本
火を消す時には、必ず薪を燃やし尽くしてから焚き火を終了させます。途中で水を使って無理に消したり、火の付いたまま穴を掘って埋めたりすることなどルール違反です。灰は燃やし尽くします。それでも熱さを感じるなら、少量の水を振りかけます。
冷めた灰はキャンプ場内の灰捨て場にきちんと捨てます。「火消し壺」を持っているなら、灰を持ち帰るのも一つの方法です。
直火の後始末
焚き火の中でも直火の後始末には、さらに一工夫が必要です。そのポイントは次の通りです。
直火をした場所は、焚き火をする前の現状に必ず戻す。地面を焼け焦げたままにしておくのは次に利用するキャンパーにとっては不快です。
火を消した後、必要以上に水をまいて地面をドロドロにするのは止めましょう。キャンプサイトが使いにくくなるのと同時に、思わぬ転倒や怪我の原因になります。
直火で使った岩や石は、所定の場所にきちんと戻しましょう。薪は原則燃やし尽くしますが、燃え残った薪に土を被せて埋めてしまうようなことをしてはいけません。灰捨て場など決められた場所に持っていって安全に処理して下さい。
マナーを守って焚き火を楽しむことが大切
焚き火はキャンプの醍醐味です。男のロマン?いえ、女性にとってもキャンプの楽しみを一番感じさせてくれる、かけがえのない瞬間かも知れません。特に何の制限もなく直火で楽しめる焚き火なら、その感激を一層感じることでしょう。
けれど、ご紹介したようにキャンプで焚き火を楽しむためにはいくつものマナーがあることもお分かりいただけましたでしょうか?ルールを守って快適で安全な焚き火を楽しむことが何より大切です。
直火の焚き火は格別ですが、ファイヤースタンドを上手に使えば、暖かい炎はすぐに最高のご馳走になってくれることでしょう。皆さんもぜひ一度、キャンプで焚き火にトライしてみて下さい。
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