とんでもない低山を見つけてしまいました。よくある里山なのですが、登山というよりは、もはやロッククライミングです。「里山だから楽勝でしょ!」なんて舐めてかかっていると、痛い目に遭うこと間違いなしです。
今日ご紹介するのは、栃木県鹿沼市の市街地にある「岩山」です。山名の通り、岩稜歩きが続くアスレチック感満載の低山ですよ。
目次
スリリングな岩稜歩きが楽しめる「岩山」
栃木県鹿沼市にある「岩山(いわやま)」は、東北自動車道鹿沼インターから車で約20分。鹿沼市の市街地にある標高328mの山です。山名の通りの岩山で、スリリングな岩稜歩きが楽しめる地元で愛される山です。栃木百名山に選定されています。
岩山は市街地にありますが、周りに山が無いので低山とは思えない大パノラマが広がります。山頂からは鹿沼市街や日光連山を一望できることは勿論のこと、所々にある岩峰群からの展望も最高です。
岩山はロッククライミングの練習場としても人気で、多くのクライマーが岩峰を登ります。本格的なクライミング装備が必要なので、登山コースとは別のコースです。
一見、登山者には全く関係のない話のように思えますが、岩山には登山者でも本格的な岩下りを体験できる有名スポットがあります。
高低差70m以上の滑りやすい、ほぼ垂直の岩場を鎖一本で下る「猿岩」は、登山道の途中にある名所で、多くの登山者がチャレンジを試みます。
そして、多くの登山者が猿岩を目前に「思ってた以上に本格的で下りるのは無理!」となり、引き返します。筆者もその一人です。
猿岩は登山の域を超えた岩場で、毎年のように滑落死亡事故が発生している危険スポットです。
しかも、下山道の分岐にあるエスケープルートが大変分かりづらく、油断をしていると高確率で猿岩に誘導されます。前情報無しで猿岩にたどり着くと、疑いもなく猿岩で岩下りする可能性大です。
そんな危険すぎる体験を避けるためにも事前の下調べは重要です。岩山の登山では、猿岩さえ避けてしまえば標高差が少なく、比較的登山道も整備されているのでアスレチック感満載の岩登りを楽しむことができます。
「岩山」登山コース
岩山はエスケープルートを含むと何種類かの登山コースがあるのですが、どの道も荒れた急斜面であまりお勧めできないんだそうです。
人気の登山コースは日吉神社からスタートする「岩山ハイキングコース」です。ピストン(往復)と周回コースがあります。
岩山ハイキングコース(周回)
- 日吉神社登山口から岩山を周回する、標高差約150m/総距離約4.1km/徒歩約180~210分程度のコース。
岩山ハイキングコース(ピストン)
- 日吉神社登山口から岩山をピストン(往復)する、標高差約150m/総距離約3.6km/徒歩約200~230分程度のコース。
同じ登山道を往復するピストンコースを使うと危険な猿岩を回避することができますが、終始岩稜歩きが続くアスレチック感満載のハードな道のりです。
周回ルートを使った場合、猿岩さえ回避すれば後半は緩やかな登山道と舗装路歩きなので、ピストンコースよりも楽です。そんな事情もあり、周回コースのほうが人気のようです。
今日は「岩山ハイキングコース」の周回コースをご紹介いたします。コースは以下のような流れになります。
ルート概要(周回)
- 富士山公園駐車場 → 日吉神社 → 日吉神社登山口 → 3番岩展望台 → 3番岩 → 2のタルミ → 2番岩 → 1のタルミ → 1番岩(岩山山頂) → 分岐点 → 猿岩(断念)→ 分岐に戻り安全なエスケープルートへ
順を追って説明しますね。
富士山公園駐車場 → 日吉神社登山口
登山口でもある日吉神社の周辺には駐車場がありません。日吉神社周辺は私有地につき駐車禁止なので、路上駐車しないようにしましょう。
最寄りの駐車場は約1.5km離れた場所にある「富士山公園駐車場」なのでそちらを利用します。
富士山公園には3か所駐車場があるのですが、道路沿いにある駐車場が最も登山口に近く、約20台以上は駐車できそうです。しかも嬉しいことに無料です。仮に駐車場が満車だった場合、富士山公園内にも駐車場があるのでそちらを利用しましょう。
日吉神社までは幹線道路を歩きます。駐車場を出て右側を進み、突き当りまで歩きましょう。距離にして1km程度です。
至る所に「中央地区ハイキングコース順路」の看板があるので、道迷いの心配はありません。
保育園を左手に見ながら進むと、階段が見えてきました。登山口でもある日吉神社です。階段を昇りましょう。
日吉神社に到着です。折角なので登山の安全祈願をしましょう。
日吉神社登山口は境内を出た左手に進んだところです。「中央地区ハイキングコース順路」の看板と案内板があるので、すぐにわかると思います。
日吉神社登山口 → 3番岩展望台
岩山は1~3番岩から成る岩山で、山頂は1番岩にあります。第一のチェックポイントとなる3番岩までは距離にして約700メートル、標高差約100mを約30分~40分かけて登ります。出だしは歩きやすい緩やかな道です。
段々と岩だらけの道のりに代わっていき、本格的な登山の予感がします。岩には足をかける穴が掘られているので、登りやすいです。
番号付きの標識がポイントごとに設置されているので良い目印になります。遭難やケガをした時に、どのあたりに居るか判り易くするための目印でもあり、座標が書かれています。1番の看板の先は本格的な岩登りです。
第一の難関は岩溝の岩場です。急峻な岩稜ですがロープはありません。苔が生えた場所もあり、滑りやすいので慎重に登りましょう。
道迷いしそうな箇所には案内板があるので安心です。急峻な岩稜は意外と距離があるので、一気に標高を稼ぐことになります。
岩場を登りきるとベンチが見えてきました。3番岩展望台です。岩山は絶景スポットにベンチがあるので良い休憩になります。
とんでもない場所にベンチがあるこの場所はC峰という岩峰で、クライミングコースのゴール地点です。ここからの景色は絶景です。
ベンチのあるC峰からはA峰やB峰といった2つの岩峰越しに鹿沼市を見渡せます。展望台の岩峰を含め、これらの岩峰群すべてがロッククライミングの練習で使われるコースです。
3番岩展望台 → 3番岩
絶景を楽しんだら先へ進みましょう。第二の難関は岩の隙間を通り抜けるアスレチックなエリアが続きます。
中には斜めになった岩の隙間を通り抜ける場所もあり、すんなりとは進めません。
岩の隙間エリアをクリアすると開けた場所にでます。目の前の岩が3番岩のようです。
3番岩の標識に到着です。標高は275m。標識は何か所かにあるのですが、見つけづらい場所にあるので、3番岩に気づかない登山者は数知れずなんだそうです。
ちなみに3番岩は登ることができます。木々に囲まれて景観はあまりよくありませんでした。3番岩頂上の木に標識が掛かっていましたよ。
3番岩 → 2のタルミ
次のチェックポイントとなる2のタルミまでは距離にして約200メートル、標高差約30mを下ります。距離は短く、下りではあるのですが、ハシゴ場と岩場が続くアスレチック満載のコースで、約20~30分と、思っていた以上に時間がかかります。
少し下ると、いきなり岩の隙間を通り抜ける箇所に遭遇です。岩山には随所に岩くぐりをする場所があります。
3番岩から2のタルミまでは3か所のはしご場があります。最初のはしご場は高さも無く、普通のはしごです。むしろハシゴを利用するよりも、脇道をつかったほうがすんなり登ることができるという、存在意義が不明なはしごなので、使わなくても大丈夫です。
謎のはしご場の先にはベンチがあります。展望はよくありませんが、休憩スポットとして重宝します。相変わらずベンチの設置場所のクセが凄いですね。滑落しないように気を付けましょう。
2番の看板の先は、本格的なはしご場が続きます。2のタルミまでの核心部です。
2か所目のはしご場は、高さはそこまでではないのですが、登り切った場所に岩が突き出ているので、頭をぶつけないように慎重に登る必要があります
見た目以上に本当に岩が突き出ているので結構な難所です。特にハシゴを登り切り、岩場に移動するときは細心の注意が必要な個所です。
3か所目のはしごは、高さが5m近くもある本格的なはしご場です。アスレチック感満載です。
はしご場をクリアした後も岩稜の岩下りが続きます。岩には足をかける穴が掘られている個所もあるとはいえ、全体的に滑りやすく、冬場は落ち葉も堆積して更に滑りやすくなります。
2のタルミに到着です。2番岩と3番岩の間にある鞍部(山と山を結ぶ稜線上で尾根が一番低くなっているところ)で、下山道があります。
2のタルミにある下山道はショートカットができるエスケープルートですが、利用者が殆どいない大変荒れた急斜面で、危険なんだそうですよ。
2のタルミ → 2番岩
次のチェックポイントとなる2番岩までは距離にして約300メートル、標高差約60mを約20分~30分かけて登ります。スリリングな岩稜歩きが楽しめますよ。
岩の隙間を通り抜ける箇所も健在で、岩山ではいつもとは違った登山を楽しむことができます。
4番の看板が中間地点にあります。この先はやたらと「危険」と書かれた目立つ看板を目にすることになります。
岩登りが必要な個所も増えていき、滑落注意の看板が至る所に掲げられています。慎重に登りましょう。
2番岩に到着です。3番岩とはうってかわって、大変立派な標識なので誰もが一発で気づきます。
ちなみに2番岩も登ることができます。少しだけ危険ですが景観がすばらしく、最高の展望でしたよ。
2番岩 → 1のタルミ
1のタルミまでは距離にして約300メートルを約15分~25分かけて登ります。アップダウンの激しい、スリリングで道迷いしやすい道のりです。
急こう配の岩登りと岩下りが連続するので両手を使う機会が増えます。岩山ではストックは邪魔になるのであまり役に立たないかもしれません。
ロープ場も増えていき、本格的な岩登りを楽しむことができる箇所が増えていきます。
登り切ったかと思うと、今度は急斜面のロープ場の下りが待ち受けていたりと、体力勝負のアスレチックコースです。
中間地点にある展望の良い岩峰からはゴルフ場越しに栃木県の名峰、古賀志山を望むことができます。山頂からはここまで古賀志山が美しく見えないので、ここは隠れた絶景スポットです。
1のタルミまでの道のりは、本当に急こう配の岩下りが続きます。足を滑らせると大変です。慎重に下りましょう。
1のタルミに到着です。2番岩と1番岩の間にある鞍部で、こちらにも下山道がありますが、2のタルミにある下山道同様、利用者が殆どいない大変荒れた急斜面なんだそうです。
1のタルミ → 1番岩(岩山山頂)
山頂でもある1番岩までは距離にして約200メートル、標高差約30mを約20分~30分かけて登ります。ラスボスは直登と急登の岩登りです。
山頂までは本当にひたすら登りです。岩には足をかける穴が掘られているとはいえ、両手を使うシーンが増えていきます。
残り100メートル。岩山の標識が見えてきたら山頂はすぐそこです。
とはいえ、最後の最後は、うんざりする急登です。山頂は目の前です。心を無にしてラストスパートをかけましょう。
岩山山頂に到着です。標高は328m。山名の通り本当に岩山で、距離も標高差も少ない割には思っていた以上に時間を要してしまいました。
岩山からの景色
岩山山頂は期待していた以上に絶景です。山頂は狭く、休憩に適さないのですが、この日は団体の登山客が陣取って昼食を楽しんでいました。
北西側に目を向けると視界の先は男体山や女峰山といった日光連山を一望できます。
南西側も開けていて絶景です。冬季だったので落葉で見晴らしが良くなっていますが、夏は葉が生い茂り、景観が良くないのかもしれません。
東側は木々に遮られていて景観が望めません。よく見ると地味に山頂標識が木に掲げられていますね。
360度パノラマビューとはいきませんでしたが、思っていた以上の絶景で満足です。景観狙いで岩山に登るのであれば晩秋から冬が狙い目だと思います
1番岩(岩山山頂) → 分岐点 → 猿岩(断念)
下山は周回コースを使います。距離にして約2.3kmと若干距離が増えますが、同じ登山道を戻るピストンコースよりも早く下山ができるのでお勧めです。
迂回ルートを目指して歩きましょう。「クサリ場・迂回ルートこの先」の標識がありますが、ここは分岐点ではありません。
暫く歩いても迂回ルートの標識を見つけられず、展望の良い場所に出てきました。ここからは山頂からは拝めなかった東側の景色を楽しむことができます。
展望の良い場所を降りると、何やら看板があります。「この先70mの崖 引き返し・迂回不可」と書かれていますね。しかも、うっすらと小さな文字で「50m手前エスケープコースあり」と書かれています。
エスケープコースらしき場所は通り過ぎてしまったようです。
反対側を見下ろすと、傾斜がほぼ垂直の一枚岩と、鎖が見えます。先が見えない吸い込まれそうな傾斜。どうやらここが噂の「猿岩」のようです。はっきりいって想像の斜め上をいく断崖絶壁でした。
あわよくば猿岩下りを。と思っていた筆者でしたが、そんな気持ちは一瞬で吹き飛びました。
猿岩は足がかりがないうえに滑るので、ほぼ腕力だけで下りていくんだそうです。迂回も引き返すこともできないので、正に天国の片道切符です。
猿岩を降りるのであれば自力で帰着ができる装備やスキルが不可欠なことは勿論のこと、万が一の事故に備えて1人で挑まないことをおすすめします。
標識に書いてあった通りに50m手前まで戻ると分岐がありました。物凄く慎重に確認しながら歩いてやっと発見できました。普通に歩いていたら絶対に気づかない、やっつけな分岐ですね。分岐に気づかないと間違いなく猿岩に誘導されてしまうので、もっと分かりやすい標識にしてほしいです。
分岐に戻り安全な迂回路から下山
無事に迂回ルートを発見できたのでいよいよ下山です。今までとは違い樹林帯の道のりです。下山ルートで人気な理由も頷けます。
そう思っていたのも束の間。流石は岩山でした。急斜面のロープ場の岩場が待ち受けていました。下山でもアスレチック感満載です。
猿岩ほどの高度感はありませんが、迂回ルートでも岩下りを体験することになるようです。迂回路なのにちっとも安全ではありません。
岩場の急こう配を一気に下ると、猿岩のゴール地点が見えてきました。改めてみても、とんでもない傾斜です。もはや登山の域を超えています。
猿岩以降は緩やかな樹林帯の道のりが続きます。登山道は荒れていて歩きやすくはありませんが、久々にリラックスして歩くことができます。
距離にして1km程度でしょうか。樹林帯を抜けると道路に出ました。
あとは道なりに進むと日吉神社近くに到着します。まるでクライマーのような体験ができる、筆者の期待を裏切る最高の山でした。
岩山に登ってみてわかったこと
岩山は登りはじめから下山まで、岩稜歩きが続くアスレチック感満載の山でした。鹿沼岩山に登ってみてわかったことをまとめました。
まとめ
- スリリングな岩稜歩きが楽しめるアスレチック感満載の低山
- 人気の登山コースは「岩山ハイキングコース」でピストンと周回コースがある
- 周回コースは猿岩さえ回避すれば緩やかな登山道と舗装路歩きなので下山でおすすめ
- 登山口でもある日吉神社の周辺には駐車場が無い
- 標高差は少ないが、はしご場や岩くぐり、ロープ場が続くアップダウンの激しい登山道
- 岩は全体的に滑りやすく、冬場は落ち葉も堆積しているので更に滑りやすい
- 市街地にある山だが、周りに山が無いので低山とは思えない大パノラマが広がる
- 岩山の名物「猿岩」は高低差70メートル以上の鎖場で滑落死亡事故も発生する危険スポット
- 猿岩下りは自信が無い方や初心者は避けるべき。迂回路ルートからの下山を強く推奨
- 下山道の分岐が大変分かりづらく、高確率で迂回ルートをスルーして猿岩に誘導される
- 迂回ルートでも急斜面のロープ場の岩場が待ち受けているのでちっとも安全ではない
- 景観狙いで岩山に登るのであれば晩秋から冬が狙い目
童心に帰れるアスレチック感満載の山
正直な話、岩山を舐めていました。ここまで本格的な岩登りが続くとは思ってもいなかったからです。とはいえ、はしご場やロープ場が続く岩登りはまるで大人の為の自然のアスレチックコースのようで、童心に帰った気分でした。
栃木県には岩山をはじめ、以前ご紹介した大小山のような、登っていて楽しい里山が沢山あるんだそうです。また面白い山を発見したら紹介いたします。
ギア
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