キノコ狩りをする際、一番難しいのはキノコの種類の同定です。
現在の日本には分かっているものだけでも約4000~5000種類のキノコがあり、これを全て覚えるのはまず不可能と言っても良いほど困難ですが、その上、毎日のように新種のキノコも見つかっており完璧に判別するのは専門家であっても難しいです。
そのため、この記事ではキノコ狩り初心者のために、夏のキノコの種類をある程度絞る方法について書いていきます。
専門家でも難しいキノコの判別を初心者が行うと言うのは多少の危険も伴いますが、図鑑だけで覚えるのと実物を見ながら覚えるのとでは効率が全く違いますので、一度チャレンジしてみてはいかがでしょうか。
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目次
生えている場所からキノコを特定する
キノコは大雑把に分別すると腐生菌(ふせいきん)と菌根菌(きんこんきん)の2種類に分けることが出来ます。
これらを簡単に説明すると、腐生菌とは主に朽ち木や落ち葉、動物のフンなど“死んだもの(有機物)“を分解して栄養を得ているキノコのことを指し、比較的容易に栽培が可能です。
一方で、菌根菌は主に地面から発生するキノコで、生きている樹木から栄養を分けてもらって成長するため、栽培するためには生きている木ごと管理する必要があるため非常に難しいのです。
更にキノコによって寄生する木の種類は異なるため、上記の2種類と合わせて近辺の樹木をよく観察することでそのキノコをある程度判別することが出来ます。
ここからはキノコが生えている場所と樹木の種類別に夏のキノコの特徴をまとめました。
身近な場所の雑木林(神社など)
ヤマドリタケモドキ
初心者の方はよく勘違いしがちですが、キノコはわざわざ山奥に入らなくても身近な場所にたくさん生えています。
特にブナ科広葉樹(いわゆるドングリの木)の多い神社には夏場、多くのキノコが発生し、ヤマドリタケモドキにはじまる高級キノコが大量に採取できることもあります。
また、公園や神社などの木々は良く管理されており立ち枯れしているものも少ないため多くのキノコが菌根菌であり、その点からも多少判別が容易になります。
低山の雑木林(ブナ科広葉樹&スギ・ヒノキなど)
ニガクリタケ
低山の雑木林には主にスギやヒノキなどの人間が植えた人工林と、その場所にもともと植わっていた原生林があります。
原生林の場合には神社等と同じく、ブナ科広葉樹が多いため優秀な食用キノコを見つけることもできますが、自生している樹木には立ち枯れしているものも多くニガクリタケ(有毒)などの腐生菌も発生します。
腐生菌にはきくらげなど食用のキノコも存在しますが、菌根菌と比べても有毒なものが多いため注意が必要です。
また、スギ・ヒノキの人工林にはスギヒラタケなど体質によっては中毒するものや有毒なものが多いほか、そもそも発生数自体が広葉樹林に比べると少ないためキノコ狩りには向きません。
里山の雑木林(ブナ科広葉樹・マツの混生林など)
ハツタケ
標高が500mを超えると、アカマツ・クロマツなどマツ科の針葉樹が増え始め、たいてい人工林は逆に少なくなります。マツは同じ針葉樹であってもスギ・ヒノキなどとは違ってハツタケやヤマドリタケ属の美味しいキノコが多数発生します。
しかし、標高が高い場所になると気温の違いによる発生時期のズレが生じることもあるため、キノコの特徴をよく観察する必要があります。
柄や傘など見た目の特徴からキノコを特定する
見た目の特徴はキノコの同定に最も大事な要素です。傘や柄の色や形、ひだの特徴、香り…などキノコにはそれぞれ特徴があり、そこからある程度種類を絞ることができます。
ここからはキノコの見た目の特徴から種類を判別する方法についてまとめました。
傘が漏斗型(中央がくぼんでいる)
カワリハツ
傘の中央がくぼんでいると言うのは、ベニタケ科のキノコの特徴で、特に夏場に発生するものの多くは同科の可能性が非常に高いです。
ベニタケ科にはチチタケやハツタケなど非常に良い出汁が出るキノコが多く、致命的な強毒を持つものも少ない(※ニセクロハツなど例外も有)ため見つけたキノコを図鑑と見比べたりしてみましょう。
ただし、中央がくぼんでいるものであってもドクササコなど全く別種のキノコであったり、昨年死者が出てニュースになったニセクロハツもベニタケ科に含まれます。
そのため、よく言われることですが、初心者はまず猛毒キノコから覚えることをオススメいたします。
傘の裏が管孔になっている
ヌメリコウジタケの管孔
傘の裏が管孔(ひだではなく気泡のようなブツブツ)になっているものはイグチと呼ばれ、夏キノコの代表格として知られています。
同科のキノコには強い毒性を持ったものが少なく、一昔前には“イグチに毒なし”とも言われていましたが、最近になってドクヤマドリなど毒菌も少しずつ見つかっているため注意が必要です。
とはいえ、イグチ科のキノコは初心者にも見分けやすく、美味しいものも多いので、実際に食べて見たいという場合にはまずこれらから覚えると良いでしょう。
また、イグチ科のキノコには管孔部分を傷つけると変色する性質を持つキノコがあり、この特徴は種名の同定に非常に役立ちますので以下に種名と共に一例を記します。
変色するもの | 変色しないもの |
---|---|
アカジコウ(青変) | ヤマドリタケモドキ |
アメリカウラベニイロガワリ(強く青変) | アカヤマドリ |
オニイグチ(赤褐色に変色) | ムラサキヤマドリタケ |
イロガワリ(強く青変) | ススケヤマドリタケ |
ドクヤマドリ(弱く青変) | アケボノアワタケ |
※緑文字(美味しいキノコ)・黒文字(可食)・赤文字(有毒)
柄にツバ・ツボがある
タマゴタケ
柄(キノコの茎の部分)に上の画像のようなツバ(柄上部のヒラヒラ)やツボ(柄基部のタマゴ様のもの)がある夏のキノコの多くはテングタケ科に属します。
テングタケ科のキノコには毒菌が非常に多いですが、厄介なことにその多くが強い旨味を持っており、誤って食べてしまう事故が後を絶ちません。
更に、同科にはドクツルタケやタマゴテングタケにはじまる世界的にも有名な猛毒キノコ(一本食べただけでも死の危険性がある)も含まれているため、基本的に初心者のうちは上の画像のタマゴタケ以外は全部無視するのが得策です。
また、これは筆者の持論ですが、時期に限らず“白いキノコ“には強毒を持つものが多いような気がするので避けるようにしましょう。
正しい判別法を覚えて楽しいキノコ狩りを
ここまで場所や特徴別に夏のきのこを判別する方法について書いてきましたが、初めにも書いた通り、キノコの同定は専門家でも間違えることがあるほど難しいです。
ここでは出来るだけ汎用性の高い情報のみを書いたつもりですが、いまだ見つかっていない種類や私の知らないキノコには当てはまらない可能性があるほか、地域や個体によって見た目や毒性が大きく変化するキノコも多数報告されています。
そのため、キノコ狩りをする際には図鑑やネットの情報を安易に鵜呑みにせず、実際に現地に赴いて自分の眼で確かめ、自分だけのデータベースを構築することが大切になります。
最後に脅すようなことを書いてしまいましたが、しっかり注意して正しい知識をもって臨めばキノコ狩りは非常に楽しく、また奥深い趣味です。皆さんもキノコ狩りを行う際には正しい判別法を覚えて自然を存分に楽しみましょう。
毒キノコを食用のキノコと誤って食べて食中毒になる事例が確認されています。
食用と確実に判断できないキノコは、絶対に採らない、食べない、売らない、人にあげないようにしましょう。
キノコによる食中毒の発生場所はほとんどが家庭であり、食用キノコと外見がよく似た毒キノコを間違って食べてしまうことが主な原因です。外見で毒キノコを見分けることは困難です。安易に採って食べたり、人にあげたりしないでください。万が一、野生のキノコを食べて体調に異常を感じたら、直ちに病院を受診してください。
食品安全委員会 毒キノコによる食中毒にご注意ください
ギア
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