氷室玲
日光白根山の日帰りロープウェイ登山と上級者向けコースを紹介します

日光白根山の日帰りロープウェイ登山と上級者向けコースを紹介します

栃木県日光市と、国内屈指の高層湿原「尾瀬」の入口・群馬県片品村の、ちょうどその境界にある「日光白根山」は標高2578mの成層火山。関東以北では最高峰であり、深田久弥の名付けた日本百名山の一つです。

初夏には薄むらさき色のシラネアオイが咲き誇り、山頂から望む360°の大展望や眼下に見下ろす瑠璃色の高山湖「五色沼」の絶景は、息を飲む美しさです。数多くの高山植物が登山者の目を和ませてくれる、百名山「日光白根山」の魅力をご紹介します。

日光白根山の魅力

日光白根山は最高峰の奥白根山が2578mもありながら、盛夏であれば家族日帰りで楽しむことのできる安全で、登りやすい百名山のひとつです。日光白根山の魅力とその見所は次の通り。

高山植物と池沼・大展望を堪能できる関東屈指の百名山

登山の起点となる「日光白根山ロープウェイ駅」付近には、国道120号線沿いに火山の噴火による堰止め湖「丸沼」「菅沼」という二つの湖、さらに登山道周辺には「弥陀ヶ池」そして「五色沼」というあまたの池沼が点在しています。

丸沼・菅沼は周辺に数多くのホテルやペンションを抱えた高原リゾート地ですが、山中にある弥陀ヶ池や五色沼は歩いてしかたどり着くことができません。それだけに、周辺には手付かずの自然が残り、その美しさに目を奪われます。

特に、残雪期から初夏にかけて花開く高山植物の多さは、登山者ならずとも多くの観光客の目を楽しませてくれます。5月から花開くシラネアオイはもとより、シラネニンジンやシラネセンキュウ、高山植物の女王であるコマクサなど、数多くの可憐な草花が登山道沿いに咲き誇ります。

また、日光白根山には「奥白根山」や「前白根山」「五色山」など、いくつかのピークがありますが、そのいずれの山頂からもさえぎるものの無い大展望が広がっています。もちろん、眼下には丸沼、菅沼、弥陀ヶ池、五色沼といった大小様々な湖や湖沼を見渡せます。急な登山道を昇りつめてきた登山者に、忘れられない感動を与えてくれます。

アクセスの良さとロープウェイを使った楽々登山

日光白根山で日帰り登山 (4)

日光白根山の魅力のひとつが、そのアクセスの良さにあります。最もポピュラーな登山口である日光白根山ロープウェイ駅にたどり着くには、東北自動車道宇都宮IC経由で、最終地点の清滝ICからおよそ60分、関越自動車道沼田ICからなら約50分です。

新幹線や路線バスによるアクセスも良く、栃木県側にある国道120号線の最高地点「金精峠」が閉鎖される厳冬期を除けば、通年ストレス無く登山口まで到達することができます。しかも、各登山口には無料の広々とした駐車場が整備され、安心してマイカーで出かけられます。

こうしたアクセスの良さ以上に、日光白根山が人気なのは、群馬県丸沼側から運航している「日光白根山ロープウェイ」が通年運航していることです。ロープウェイをうまく利用し、標高2000mの山頂駅まで一気に標高を稼ぐことができれば、整備された登山道をたどって5~6時間で山頂往復が可能です。

ベテランの登山者だけで無く、登山初心者やファミリーでも安心して楽しむことができるゆえんがここにあります。

白根山おすすめ登山ルート2選

山頂からの大展望やあまたの高山植物、そしてアクセスの良い楽々登山を楽しめる日光白根山には、いくつかの登山ルートが整備されています。代表的なふたつの登山コースをご紹介します。

ロープウェイを利用した白根山往復最短コース

難易度 日帰り:初級者向け
所要時間・距離 往復約4時間40分
距離約6.9km
標高差 約817m
ポイント 往復ロープウェイ利用

コースタイム

ロープウェイ山頂駅
│(60分)
七色平南分岐
│(110分)
日光白根山
│(60分)
七色平北分岐
│(50分)
ロープウェイ山頂駅

ロープウェイを利用した、最も初心者向けで、かつ最短のコース。標高2000mの山頂駅から、整備された登山道を進みます。しばらくはなだらかな樹林の間を歩きますが、森林限界を超えた辺りから急登に変わります。コマクサをはじめとする高山植物が、登りの辛さを忘れさせてくれるはず。岩場もわかりやすいコースなので安心。

到着した山頂からは360°の大展望が広がっています。晴れていれば遠く富士山の雄姿や浅間山の噴煙が望めます。眼下には丸沼、菅沼をはじめとする多くの湖沼や五色沼の青い水面が見下ろせます。復路は、元来た道を山頂駅目指して歩きましょう。

日程と体力に自信があれば、弥陀ヶ池や五色沼の周遊コースもおすすめです。白根山の山頂で大展望を満喫したら、下山路は北にある座禅山(2017m)を目指すコースです。右手に五色沼、前方には弥陀ヶ池を眺めながら、岩場の急坂を慎重に下っていきます。雨の後は滑りやすいので、十分注意が必要です。

1時間ほどガレ場の下りと悪戦苦闘すれば、透き通った水面の弥陀ヶ池に到着。右手に五色沼への分岐もあるので、時間があれば木道が敷設してある湖畔を周遊するのも楽しみです。座禅山を経て途中避難小屋を通り過ぎれば1時間半位で山頂駅に戻ります。

日光白根山で日帰り登山 (7)

上級者向け日光湯元本格登山コース

難易度 日帰り又は一泊:中・上級級者向け
所要時間・距離 往復約9時間
距離約11.8km
標高差 約1091m
ポイント 登山口は奥日光湯本温泉。
避難小屋で一泊。

コースタイム

日光湯元温泉
│(130分)
外山鞍部
│(60分)
前白根山
│(30分)
避難小屋
│(80分)
日光白根山

日光白根山で日帰り登山 (6)

湯本温泉を起点とする健脚向きのコースです。前白根山を経由として日光白根山を目指しますが、登山道には木の根が多く、急登の上、登りづらい箇所もあるので、残雪期や悪天時は十分注意が必要です。登り約5時間、下りが4時間、登り応えのあるコースです。

標高2373mの前白根山からはやや下って、いよいよ最後の急登が待っています。五色沼避難小屋を経由して約1時間登れば、目指す日光白根山に到着です。復路は元来た道を戻るのも良いですし、バテたなと感じたらロープウェイ山頂駅を目指してエスケープするのも一つです。日帰りで登山口に戻るにはかなりの体力を要しますので、くれぐれも無理をせず登山計画を立てて下さい。

日光白根山の登山のポイント

日光白根山は首都圏からのアクセスも良く、ロープウェイを利用すれば、あっという間に2000m級の山岳地帯に足を踏み入れる事のできる人気の百名山。けれど、下記の通り、注意点がいくつかあるので、登山する際には要注意。

楽々登山できても、最低限の装備は万全に!

日光白根山で日帰り登山 (5)

白根山は、標高3000mに満たない登山初心者にも手頃な山岳です。しかし、白根山など日光山系の特徴として、年間を通して強風が吹きやすい地帯であり、夏季は特に雷が多く、天候が急変します。「道迷い」が頻発するのもそのせいです。

午前中は晴れ渡った快晴の空が、午後になると突如雷雲がむくむくと湧き出し、突如大粒の雹や豪雨に見舞われる事もしばしば。森林限界を超えた稜線上で雷雲に襲われたら命の危険に関わります。雨具はもちろん、コンパスや防寒具、万が一の非常食、ヘッドランプやツェルトなどは必携です。

また、標高の割に気象変化が激しい山域の為、積雪期や残雪期には山岳遭難が頻発しています。強風で飛ばされた岩場は氷結しており、アイゼンやピッケルが必須です。夏場冬場を問わず、登山計画には十分余裕を持たせて入山するとともに、装備の点検は入念に行って下さい。

地震・噴火情報や入山規制の確認を忘れずに!

日光白根山は現在尚、活発に活動している「噴火警戒レベル1」の活火山です。有史以来、幾度となく水蒸気爆発を繰り返し、1649年には戦場ヶ原に数十cmの灰を積もらせています。特に、2011年3月11日に発生した「東日本大震災」以降、日光白根山を含む地域一帯の火山活動は活発化しています。

入山する際には、下記に示した気象庁のホームページをクリックして、山域の火山警戒レベルや地震の発生状況を確認してから入山して下さい。たとえ、噴火警戒レベル1でも、国内の活火山では、突如予想もしなかった水蒸気爆発を起こし、多数の被害者を出しています。ゆめゆめ注意を怠りませんように。

日光白根山付近の観光案内

登山の前後に名湯秘湯を

白根温泉引用:白根温泉 加羅倉館

日光白根山は活火山のため、周辺には名湯秘湯に溢れています。登山口であるロープウェイ乗り場周辺はもちろん、気軽に日帰り入浴できる施設が随所に設けられているので、登山の後は、心地良い温泉にたっぷり浸かって下さい。

特におすすめは、国道120号線を群馬県側に下って、利根川の源流大滝川沿いにある「白根温泉 加羅倉館(からくらかん)」です。毎分600リットルの無色透明の源泉掛け流しの温泉は、保温効果も抜群。湯治はもちろん、白根山や尾瀬登山の基点に最適です。

風情ある木造建築の宿泊棟と、国道をはさんで建てられた入浴棟は、渓谷の雰囲気に溶け込んだノスタルジックな旅情を感じさせてくれます。掃除の行き届いた清潔な浴槽で、旅の雰囲気を堪能してみて下さい。

加羅倉館の基本データ

所在地 〒378-0414 群馬県利根郡片品村東小川4653-21
電話番号 0278-58-2251
料金 日帰り入浴(7:00~21:00)410円
年中無休(要確認)

観光と果物天国「日本ロマンチック街道」

日光白根山で日帰り登山 (3)

日光白根山の登山口である丸沼高原や秘湯「加羅倉館」が点在している国道120線は、別名「日本ロマンチック街道」と呼ばれています。栃木県日光市と長野県上田市を結ぶ、全長320kmに及ぶロマン溢れる街道として有名です。

ロマンチック街道沿いには世界遺産の日光や白根山付近にある丸沼・菅沼周辺、少し足を伸ばすと高層湿原地帯として人気の「尾瀬」の登山口にも通じます。「東洋のナイアガラ」と称される「吹割の滝」も直ぐそばに。長野県内に入れば戦国武将の城跡や歴史的遺構も数多く点在しています。

さらに、街道周辺はフルーツ天国。りんごやぶどう、もも、さくらんぼなどの各種果物はもちろんの事、特にとうもろこしが名物です。街道沿いに並んでいるあまたのお店から、焼きトウモロコシの香ばしい香りが車窓から漂ってきます。

秋になると別名「コスモス街道」と呼ばれるロマンチックな街道を、あなたも一度ぜひ訪ねてみて下さい。

まとめ

日光白根山で日帰り登山 (2)

日光白根山は、登山のプロからファミリーまで楽しめる魅力溢れる関東屈指の百名山です。日帰り登山も十分可能ですが、日程に余裕があれば、周辺の観光を楽しむ事で魅力は百倍に。ロープウェイを利用して2000mの山頂駅にたどり着くだけで、高山植物の女王「コマクサ」の美しく可憐な姿を鑑賞する事さえ可能です。

ただし、ご紹介した通り日光白根山周辺は活火山であり、噴火・地震情報には十分な注意が必要です。また、熊をはじめとする野生動物も数多く生息しており、被害に遭わないような細心の注意も怠ってはいけません。

必要十分な装備と事前の情報を入手して、安全に登山を楽しんで下さい。日光白根山の山頂から見渡す大展望が、きっとあなたを待っています。

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  • 年間100日程度、登山とキャンプ、オートバイツーリングや釣り、キノコ取りなどアウトドアライフを楽しんでいます。もともとキャンピングカーで国内を旅していましたが、最近は駐車スペースを取らない車中泊(ハイブリッドミニバン)が主体で、気の向くままに自然を楽しんでいます。

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