現在でも料理によく使われるハーブや香辛料ですが、昔は今ほど娯楽が多くなかったことから食事と言うことが非常に大きな意味を持っていたため、臭みのある肉や魚をよりおいしく食べるためのこれらは非常に重宝されており、なんとこれを巡って戦争が起きたほど生活において無くてはならない存在でした。
更に多くの香辛料・ハーブは抗菌作用やリラックス作用、香りによる虫除けの効果などを持っており、それを利用した健康食品や生活用品などは現在でも広く使われています。これらのことから、もはや人類の歴史は香辛料と共に発展してきたと言っても過言ではありません。
今回の記事ではそんな香辛料やハーブ達を“わざわざ買わずとも採って楽しもう!“という趣旨のもと、日本に自生している種の見分け方と探し方について書いていきます。
日本に自生している香辛料・ハーブたち
一般にハーブや香辛料として使用されるのはシソ科、あるいはセリ科のものが多く、これは日本の自生種においても同様です。今回はそれらの中でも見つけやすく、かつ利用価値の高いものに絞って紹介していきますので、以下を参考にして実際に探してみてくださいね。
ミツバ
ミツバの茎・葉‐著者撮影
お店で丼物を頼むと上に乗っていることの多いミツバですが、こちらは綺麗な水の流れている場所に自生していることが多いです。同種はセロリなどと同じくセリ科の植物で、特有の良い香りを持つことから東アジアでは昔から香味野菜として重宝されてきました。
ミツバの見分け方としては名前の通り葉っぱが三つあること、葉を揉んだ時に特有の香りがすることから見分けることが出来ます。野生種のミツバは栽培品よりも香りが強く、サイズも大きくなるのでぜひ試してほしいものの一つです。
セリ
セリもミツバと同様セリ科の多年草ですが、その香りは少し異なります。本種は春の七草としても有名で、陽だまりでは1~2月ごろのかなり早い時期から新芽を伸ばし、その年の冬までほぼ通年で利用することが出来ます。
栄養素にも富み、発汗作用があることから薬草としても利用されてきた本種ですが、よく似た植物に“ドクゼリ”というかなり強い毒性をもったものがあるため注意が必要です。
見分け方としては食用になる“セリ”は根っこがひげ根であること(ドクゼリは筍のように太い根茎を持ちます)、更には特有の香りからも見分けることが出来ます。
シソ
渓流沿いに生える野生の赤紫蘇
一般にはスーパーなどでお目にかかる機会の多いシソですが、実は赤紫蘇・青紫蘇ともに全国の山野に自生しており、特に渓流沿いなどで見かけることが多いです。
本種は9月~11月頃になると大量に種子を作り、地面に落とすため群生していることが多く、一か所ポイントを見つければ大量に採取することが出来るのも魅力です。
大量に採取した青紫蘇は天ぷらやふりかけなどに利用する
しかし紫蘇も他の多くの植物と同じく、葉っぱを一度に取り過ぎると枯れてしまい種子が作れなくなってしまうため、採取する際には上の方から数枚だけを頂くようにしましょう。
赤紫蘇は一面緑の山の中でかなり目立つのですぐに分かると思いますが、青紫蘇は対生の葉と香りに注意してよく探すようにしましょう。
カキドオシ
カキドオシ。青紫蘇が生えていた場所に群生していた
このカキドオシもあまり知られていませんがシソ科の自生する植物で、最近は健康食品としても利用されています。
本種はこれまで紹介してきた種よりも生息域が広く、田んぼのあぜ道や道路のわきなどでも普通に見ることができ、蔓性の茎を持つことから大量に群生します。
カキドオシの全草にはミント系とも言えるような爽やかな香りがあり、肉の臭み取りなどのほか、ハーブティーとしても利用することが出来ます。
本種の見分け方としては、チドメグサのような丸く波打った葉、蔓性の茎。さらには葉を揉んだ時の強い香りからも同定することが出来ます。
ヨモギ
ヨモギの葉と茎。田舎でも都会でも山でも川でも道沿いでも藪の中でもどこでも生える
誰もが一度は見たことがあり、食べられることも知っている事でしょうが意外と実際に調理したことのある人は少ないのではないでしょうか。
本種は多くの香味野菜と異なりキク科の仲間ですが、特有のよい香りを持つことから和製ハーブとして古来より利用されてきました。
利用法としては有名なヨモギ餅にはじまり、ヨモギ茶、お浸し、天ぷら…など様々な方法で食べることが出来ます。同定も特徴のある葉っぱと香りのお陰で非常に容易で、山菜採り初心者にもオススメです。
このように非常に利用価値の高いヨモギですが、本種は根から他の植物の成長を抑制する成分を分泌しておりますので、庭などに生えてきた場合には即刻駆除したほうが良いでしょう。
山椒
山椒の葉と完熟した実
山椒も多くの薬味と同様にスーパーで購入することが多い植物ですが、その原産国は日本であるため当然、山野にも自生しています。とはいえ本種も多くの山菜と同じく枝を折ったり、株ごと持って帰るようなマナーの悪い人たちのせいで生息数を減らしており、見かける機会はさほど多くありません。
さらに山椒は雌雄異株であるため雌株にしか実をつけず、収穫するためには群生しているポイントを見つける必要があります。
このようにこれまで紹介した他の植物に比べると若干レア度の高い種ですので、見つけた際には実や、せいぜい葉を少し採取する程度にとどめ、いつまでも楽しめるように保護していきたいものです。
本種の見分け方としてはヌルデ・漆などを小さくしたような羽状複葉と全体にある鋭いトゲ、更には近づくだけでも分かる特有の香りからも同定できます。
山椒の枝にあるトゲ。刺さると相当痛いので気をつけること
ミント(日本薄荷)
ミントと言うと海外から入ってきたイメージが強いですが、実際には日本在来の種であり、現在でも川沿いなどで見つけることが出来る…らしいです(私は残念ながら未だお目にかかったことがありません)。
本種も他のミント類と同じくメントールを含有しており、葉からはハッカ油やハッカ飴を作ることが出来ます。
見分け方としてはシソ科特有の対生の葉、葉の基部につく花、特有の香りから同定できます。
自生しているハーブを探して身も心も健康になろう!
ここまで日本に自生しているハーブ・香辛料の紹介をしてきましたが、いかがだったでしょうか。
通常、シソや山椒などの香味野菜はお店でお金を出して買うものであると認識している方が多いと思いますが、自分の眼と足、鼻を使って探すことで市販品よりも数段香りが強く、サイズの大きいものが無料で手に入ります。
これは今回に限らず山菜採り全体においての醍醐味の一つであり、自然の中を歩くことで心身の健康にもつながりますので、これを機会に一度試して見るのも良いのでは?
ギア
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