冬季は閉鎖する日本屈指の山岳リゾート地「上高地」が、いよいよ開山間近です。毎年4月27日には山の安全を祈願する「上高地開山祭」が行われるので、ゴールデンウィークに上高地に行く計画を立てている方も多いのではないでしょうか。そこで上高地で個人的にオススメのトレッキングコースをご紹介いたします。
目次
日本屈指の山岳リゾート地 上高地
長野県松本市にある「上高地」は、標高約1500mの立地にある日本屈指の山岳景勝地です。中部山岳国立公園の一部として「特別名勝」と「特別天然記念物」の2つの国の文化財に指定された非常に貴重な場所で、日本で初めてマイカー規制が実施された場所でもあります。
上高地へのアクセスはバスかタクシーのみと交通の便が悪いにも関わらず、年間120万人もの観光客が訪れる人気の高いエリアです。北アルプスの雄大な絶景と、森に囲まれた大自然が広がる排気ガスのない綺麗な空気は、上高地最大の魅力です。
キャンプや登山といったアウトドア好きであれば、一生に一度は行ってみたい日本屈指のリゾート地です。
上高地を歩こう!お勧めのトレッキングコース3選
出典:上高地ウォーキングコース前述の通り、上高地へは車で行くことが出来ないので、上高地での唯一の移動手段は徒歩です。上高地は物凄く広大で、全ての場所が見どころ満載なのでどこを歩けばよいか迷うかと思います。しかも有名な観光スポットは点在しているので、1日で全ての名所を周るのは無理でしょう。
そこで、実際に筆者が歩いたお勧めのトレッキングコースを3つご紹介いたします。
全てのトレッキングコースのスタート地点は、上高地で最も有名な「河童橋」に統一しています。上高地散策の参考になれば幸いです。
1. 河童橋から大正池を周回する初心者におすすめの定番のコース
原生林を抜けた場所にある田代池の周辺に広がる田代湿原と、1915年の焼岳の噴火で梓川を堰き止めて出来た大正池を周回する、河童橋から梓川下流側へ向かうコースです。道が大変整備されていて、スニーカーなどの普段履きでもハイキングが出来るので、初めての上高地散策におすすめです。
河童橋から田代池~大正池を周回するコースは総距離約7.8km、約2時間半の道のりです。距離が長くて面倒!という方は、大正池からバスで河童橋に戻ることも出来るので復路の省略が可能です。
周遊中はこれだけの見どころスポットが待ち受けています。
往路(約4km/徒歩約80分程度)
河童橋→田代橋(約1.8km/徒歩約35分)梓川左岸コース
田代橋→田代池(約1.0km/徒歩約20分)林間コース
田代池→大正池(約1.2km/徒歩約25分)
復路(約3.8km/徒歩約75分程度)
大正池→田代池(約1.2km/徒歩約25分)
田代池→穂高橋(約1.0km/徒歩約20分)梓川コース
穂高橋→ウェストン碑(約0.5km/徒歩約10分)梓川右岸コース
ウェストン碑→河童橋(約1.1km/徒歩約20分)梓川右岸コース
【往路】 河童橋→田代橋(約1.8km/徒歩約35分)
スタート地点の河童橋は上高地バスターミナルからも近く、周りには旅館やお店が充実しています。本当に多くの観光客で賑やかな、上高地の象徴ともいえるスポットではないでしょうか。
橋の上からは梓川越しに穂高連峰や岳沢、梓川、焼岳を望む、超絶景ポイントです。一度見たら一生忘れられない景色がそこにあります。
今回のルートでは河童橋を渡らず梓川の左岸沿いを歩きます。左岸にはお店が無いので飲み物は先に買っておきましょう。
田代橋までは平坦で大変整備された道を歩きます。梓川から見える山々は絶景です。歩いていて楽しい道です。
田代橋手前の中ノ瀬園地にはベンチや東屋、トイレがあり、休憩スポットとしておすすめです。
田代橋に到着です。穂高橋と並んでかかっている田代橋はカラマツが用いられています。プレストレスト木床版の桁橋としては長支間の木橋なんだそうです。まったく意味は分かりませんが、なにか凄そうなのは伝わってきますね。
【往路】 田代橋→田代池(約1.0km/徒歩約20分)
田代橋は渡らずに、林間コースを進みます。木々に囲まれたコースは森林浴や野鳥観察に最適です。
木道が整備されていて、とても歩きやすいコースになっています。
森を抜けると、突然視界が開けます。田代池のある田代湿原は、枯れた水草などが少しずつ田代池に積もってできた湿原地帯で、穂高連峰を望む絶好の展望ポイントです。
田代池からは六百山や霞沢岳を望むことができます。天気の良い日はリフレクションが美しい絶景ポイントです
当時は水深5mもあった田代池は、大部分が湿原化していて、浅瀬になっています。霞沢岳や六百山からの伏流水が絶えず湧き出ています。
【往路】 田代池→大正池(約1.2km/徒歩約25分)
大正池までは原生林に囲まれた林道を歩きます。道は整備されていて、歩きづらい場所には木道もあります。
暫く歩くと突然開けた場所に出ます。「中千丈沢の押し出し」と呼ばれる土砂が流れ込んでできた川原からは、立ち枯れした木と梓川から焼岳を望む、隠れた絶景ポイントです。
この先は木道と整備された木の橋を歩きます。
大正池に到着です。大正4年(1915年)の焼岳の大噴火で梓川が堰き止められ、一夜でできた池です。
大正池からは大噴火を起こした焼岳を望む絶景ポイントです。大正池は梓川の上流から流れ込む土砂によって、どんどん小さくなっているんだそうですよ。
【復路】 大正池→穂高橋(約2.2km/徒歩約45分)
大正池から穂高橋までは歩いてきた道を引き返します。大正池にはバス停があるので、歩くのが億劫な方はバスを利用して河童橋付近まで戻ることが出来ますよ。
バス停付近には売店やトイレ、喫煙所があるので良い休憩スポットになります。
田代橋を渡ると、穂高橋が見えます。大正池と河童橋のほぼ中間に位置する穂高橋・田代橋からは、霞沢岳や六百山の絶景を楽しむことが出来ますよ。
【復路】 穂高橋→ウェストン碑(約0.5km/徒歩約10分)
穂高橋を渡ると西穂高岳登山道が見えるので、右手に進み、梓川の右岸コースを歩きます。
梓川の右岸コースは左岸コースよりも道が整備されていて、売店やホテルが点在する、多くの観光客で賑わう人気のスポットです。
上高地温泉ホテルやレストラン、売店もあるので休憩にはもってこいです。丁度お腹も空くタイミングでレストランがあるのはありがたいですよね。
ウェストン碑は、上高地ルミエスタホテルのちょっと先にあります。思っていた以上に地味なので油断していると通り過ぎてしまいます。
ウェストン碑というのは、「日本近代登山の父」である英国人宣教師ウォルター・ウェストの功績を称えるために掲げたレリーフです。日本に「趣味としての登山」を広めた偉大な方なんだそうです。
【復路】 ウェストン碑→河童橋(約1.1km/徒歩約20分)
ゴールである河童橋までは平坦で大変整備された梓川右岸コースを歩きます。左岸から見えた景色とはまた違った絶景を楽しむことが出来ます。
ちなみに、上高地では高確率で野生の猿に遭遇します。野生の猿とはいえ、人に慣れてしまっているので写真を撮り放題ですよ。
河童橋が見えてきました。橋の付近もホテルや売店が充実しています。全体的に道のりも険しくなく、丁度良い運動になったのではないでしょうか。
2. 河童橋から明神池を周回する定番のトレッキングコース
明神岳の麓に広がる針葉樹に囲まれた神秘的な池「明神池」や、原生林に囲まれた岳沢湿原を周回する、河童橋から梓川上流側へ向かうコースです。道はそこまで整備されていないので、最低でもスニーカーで歩きたいところです。こちらも多くの観光客で賑わう超定番のコースですよ。
河童橋から明神池~岳沢湿原を周回するコースは総距離約5.5km、約90分の道のりです。
周遊中はこれだけの見どころスポットが待ち受けています。
河童橋→小梨平(約0.5km/徒歩約10分)梓川左岸コース
小梨平→明神(約2km/徒歩約40分)梓川左岸コース
明神→明神池・明神橋(約0.5km/徒歩約10分)
明神池・明神橋→岳沢湿原(約2km/徒歩約20分)梓川右岸コース
岳沢湿原→河童橋(約0.5km/徒歩約10分)梓川右岸コース
河童橋→小梨平(約0.5km/徒歩約10分)
スタート地点の河童橋から小梨平までは徒歩10分です。河童橋を渡らず、梓川左岸コースを歩きます。河童橋の先にある清水川の橋を渡りましょう。
右手に「上高地ビジターセンター」が見えます。上高地の情報から山関係の資料まで、見所満載の公共施設です。立ち寄ってみてはいかがでしょう。
小梨平には「森のリゾート小梨」が運営するキャンプ場があります。上高地バスターミナルから徒歩10分程度の好立地なので、上高地でキャンプデビューするにはもってこいのキャンプ場です。
小梨平→明神(約2.0km/徒歩約40分)
キャンプ場の中を突っ切る形で明神方面へ進みます。この先はトイレや自動販売機が暫くありません。飲み物の補充やトイレは今のうちに済ませておきましょう。
小梨平より先はトレッキングシューズ推奨になっています。最悪でもスニーカーで歩きたいところです。
前半は原生林に囲まれた林道が続きますが、梓川沿いということもあり、段々と景色の開けた場所が現れてきます。
景色の開けた場所からは梓川越しに明神岳を眺めることが出来ます。絶景ですよね。
明神に近づくにつれ、景色が開けてくるのでとても開放的な道が続きます。歩いていて楽しい道です。
明神に到着です。明神館には宿泊施設や自動販売機、トイレもあり、休憩スポットとして多くの観光客や登山者で賑わっています。
明神→明神池・明神橋(約0.5km/徒歩約10分)
明神を左に進むと明神橋が見えてきます。吊橋をバックにした明神岳が美しい人気の撮影スポットでもあります。
現在の明神橋は2003年に架け替えられた比較的新しい橋です。河原に降りる人も多い人気のスポットです。
橋を渡った右岸はお店が充実していて「Cafe do Koisyo」では手作りケーキと、こだわりの焙煎ドリップコーヒーを頂くことが出来ます。
「Cafe do Koisyo」の先を右手に進むと「穂高神社奥宮」や「明神池」に行くことが出来ます。
穂高神社奥宮の鳥居が見えてきました。穗髙神社は日本アルプス総鎮守と崇められています。
鳥居をくぐると、左手に「嘉門次小屋」が見えます。食事処兼宿泊施設で、焼きたてのイワナは大人気です。
明神池の入り口は穂高神社奥宮の横にあります。入場は有料です。社務所で拝観料300円を納めます。
穂髙神社奥宮の境内にある明神池は、一之池と二之池の大小2つからなる池で、穗髙神社の神域です。
透明感あふれる水面のリフレクションが美しく、「鏡池」と呼ばれていたそうです。明神池のいたるところがパワースポットですよ。
上高地で最も有名なスポットの一つでもある、一之池にある鳥居です。この絶景をシャッターに収めるために、本当に多くの観光客が順番待ちをしていました。
明神池・明神橋→岳沢湿原(約2.0km/徒歩約20分)
明神橋近くまで戻ります。梓川右岸は開放感のある広場のようになっていて多くの観光客が休憩していました。
明神池近辺だけで半日楽しむことが出来る程、観光名所や絶景ポイントが充実しているので、個人的に一番お勧めなスポットです。
岳沢湿原までは木道が整備された原生林を歩きます。多少のアップダウンはあります。森林浴を楽しむのであればオススメのコースです。
紅葉シーズンともなると、一番紅葉が美しい場所なんだそうですよ。紅葉シーズンでは絶対に外せないコースですよね。
岳沢湿原は原生林に囲まれた小さな湿原で、六百山を望むことができます。天気の良い日はリフレクションが美しい絶景ポイントです。
岳沢湿原→河童橋(約0.5km/徒歩約10分)
ゴールである河童橋までは原生林に囲まれた梓川右岸コースを歩きます。足元が悪く、傾斜がある景観の無い道のりです。
しかし、河原の方に一歩足を進めると、穂高連峰を一望できる絶景スポットが広がります。人工物が一切視界に入ってこない、ありのままの自然を満喫できますよ。
河童橋が見えてきました。絶景やグルメを余すことなく楽しむのであれば梓川右岸コースの往復がオススメかもしれませんね。
3. 河童橋から徳澤・横尾を歩く本格的なトレッキングコース
涸沢カールや穂高岳へ向かう登山ルートの途中にある徳沢と上高地の最深部である横尾を歩く、本格的なトレッキングコースです。
奥地へ進むに従って足場が悪くなるので、トレッキングシューズが推奨されたコースです。距離が長く、ほとんどの道のりが山道なので、観光というよりは純粋にトレッキングを楽しむコースです。
河童橋から徳澤~横尾を往復するコースは総距離約18km、約6時間の道のりです。徳沢で宿泊する方であれば往復する必要が無いのでお勧めのコースです。
河童橋→徳澤(約5.5km/徒歩約110分)梓川左岸コース
徳澤→横尾(約3.5km/徒歩約70分)梓川左岸コース
河童橋→徳澤(約5.5km/徒歩約110分)
明神までの道のりは既に紹介済みなので、その先の道のりをご紹介します。明神から徳澤までは距離にして約3km。60分の道のりです。
明神より先は観光客が殆どいなくなるので、静かなトレッキングを楽しむことが出来ます。大自然を満喫できますよ。
道は本格的な登山道といった感じですが、高低差はそこまで無く、技術的な難易度はありません。その代わり徳澤までは一切の売店、トイレがありません。
全体的に木々に囲まれた林道が続きますが、時々景色の開けた場所が何ヶ所かあります。そういったスポットでは、やはり多くのハイカーが立ち止まります。
しばらく歩くと、徳澤ロッジが見えてきます。徳沢にあるトイレは嬉しいことに無料で利用できます。
徳澤は元々牧場があった場所で、北アルプスの雄大な絶景と森に囲まれた大自然が広がる開放的な立地です。個人的には避暑感が半端ない一番好きな場所です。
牧場跡地を改装した「徳沢ロッジ」は、宿泊地として、キャンプ場として、蝶ヶ岳・常念岳・槍ヶ岳・涸沢・奥穂高岳への登山基地として、多くの登山客で賑わっています。
徳澤園にある「みちくさ食堂」は大変美味しいことで有名で、名物のソフトクリームとオリジナル窯焼きピザは、多くの観光客がわざわざ足を運ぶ人気のメニューです。
徳澤→横尾(約3.5km/徒歩約70分)
上高地の最奥地、横尾を目指します。この先を進む人は涸沢カールを目指す登山者か、横尾にある山荘や野営場を登山基地とする登山者が殆どです。
横尾へ向かう途中に「新村橋」というつり橋があります。パノラマコースと呼ばれる、屏風の耳を経由して涸沢へ向かう危険個所満載のコースの入り口です。
新村橋からは前穂高岳の岩峰を眺めることが出来ます。この絶景を拝めるスポットは限られているんだそうで、貴重な景色です。
横尾までも基本、木々に囲まれた林道が続きますが、景色の開けた場所も随所にあります。気持ちの良いトレッキングを楽しむことが出来ますよ。
暫く歩くと横尾山荘が見えてきます。お風呂や売店、トイレもある立派な施設です。年間20数万人もの人々が行き交う、長野県下屈指の登山口なんだそうですよ。
野営場には多くの登山者がテントを設営していました。槍ヶ岳や穂高岳への登山の拠点地です。
梓川上流に架かる「横尾橋」は、涸沢や穂高岳へ続く登山道の出発点となる象徴的な場所です。この先は本格的な登山道になるので、しっかりとした装備が必要になります。
横尾橋から先は、14時以降の入山が推奨されていません。涸沢カールまで3時間の道のりなので、当然なのかもしれません。
いつかはこの先へ行ってみたい。と心に誓う筆者なのでした。
上高地散策で備えておきたいこと
上高地は日本屈指の観光地ではありますが、売店や施設が充実した利便性の高い場所ではありません。いつもの感覚で散策すると思わぬアクシデントに見舞われるかもしれません。
上高地散策で備えておきたいことをまとめました。
トイレが少ない上に有料。100円玉は沢山用意しよう
上高地はトイレの数が少ない上に、ほとんどのトイレが有料です。徒歩30分圏内にトイレが無いこともザラです。お腹が痛くてやっとの思いでトイレにたどり着いても「小銭が無い!」となってしまったら目も当てられません。100円玉は多めに用意して、いつでも取り出せるようにしておきましょう。いざという時に困りません。
雨具の準備はマスト
上高地は山の中にあるので天候が変わりやすい場所です。朝は快晴だったのに、昼過ぎには雨なんてことはよくあることです。折りたたみ傘やレインコートといった雨具は必ず準備しましょう。万が一雨に見舞われても、雨宿りできる場所は無いに等しいですよ。
上着はもっていこう
上高地は標高1500mの場所にあるので、真夏でも20度前後と大変涼しいのですが、山岳地帯なので寒暖差が激しく、早朝や夕方は想像以上に冷え込みます。こまめに体温調整ができるように上着やフリースといった羽織るものはザックにいれておきましょう。
最低でもスニーカー必須
上高地にはアスファルトで舗装された道が殆どありません。河童橋から離れれば離れる程、足場が悪くなります。上高地を散策するのであれば最低でもスニーカーがマストです。可能であればトレッキングシューズで散策したいところです。
水は持ち歩こう
上高地には自動販売機が数えるほどしか無く、徒歩30分圏内にお店や自動販売機が無いこともザラです。ペットボトルでも水筒でも構いませんので、飲み物は持ち歩くようにしましょう。
日本屈指の絶景!上高地を歩いて楽しもう
多くの方を魅了する上高地は、日本で数少ない手つかずの自然が残った山岳景勝地です。徒歩が唯一の移動手段なのは、一見不便に感じますが、どこを切り取っても信じられない絶景しかありません。キャンプ好きであれば一度は行きたい場所です。アウトドアの幅が広がる新たな発見があるかもしれませんよ。
ギア
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