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【田沢湖高原】雲上のティータイム。日帰りトレッキングのすすめ

【田沢湖高原】雲上のティータイム。日帰りトレッキングのすすめ

岩手山八幡平頂上の八幡沼、ガマ沼の湿原をトレッキングして以来、稜線トレッキングが好きになりました。

山を登って、稜線や鞍部に出るととても気持ちがいい。歩き廻って、もし周りに高層湿原があれば、もう言うことなし。

例えば、尾瀬ケ原は高層湿原で有名です。尾瀬は、本当に美しい場所ですね。大きい小さい、有名、無名とは関係なく全国にはいい場所が沢山あります。

高層湿原はちょっとした楽園で、景色もよく、山によってそれぞれ違う高山植物が育ちます。八甲田山、八幡平、早池峰山、月山、蔵王など。早池峰山なら、ヨーロッパアルプスの名花エーデルワイスに例えられるハヤチネウスユキソウに出会えるチャンスがあります。

そこで地図を広げアプローチが楽な山を探しました。秋田駒ヶ岳と烏帽子岳(1478m=乳頭山)の間に千沼ヶ原があります。千沼ヶ原がいいなと見込みました。ただ、千沼ヶ原は雫石側の葛根田から平ケ倉沼経由で登った方が良く、登山口までがとても遠い。

秋田駒ヶ岳と烏帽子岳のルート地図

千沼ヶ原に続く少し北の鞍部は田代平となっています。田沢湖高原の奥、乳頭温泉から短い登山道がありアプローチもキツくない。それならば田代平に真っすぐ登って湿原を巡ろうと考え、ここを日帰り登山でやってみることにしました。

仙台から田沢湖高原までの距離・時間を考えると、登って降りて半日くらいしか時間はないので、田代平のどこかでコーヒーを点て休憩し、後はさっと降りてこよう。こんな登山計画を立てて実行しました。以前、蔵王高原を散策してコーヒーを飲みながら景色を楽しみました。その時はインスタントコーヒーだったので、今回は豆コーヒーをドリップで点ててみようと思いたちました。

乳頭山(烏帽子岳)と高層湿原

秘湯と乳頭山、田代平高層湿原

乳頭山と田代平~秋田駒ヶ岳周辺登山地図

乳頭山は、東北自動車道から奥羽山脈を眺めると、その名の通りきれいなおっぱいの形をした山容が見えます。その先端がつんと立った乳首に見えます。この乳首が乳頭山です。

この名前に惹かれて登りたくなったのかというと、そうではなく田沢湖温泉郷の奥にある乳頭温泉がいい。妙乃湯、大釜湯、蟹場、孫六、黒湯と秘湯中の秘湯が揃っている場所です。その上、あの鶴ノ湯もあります。

田沢湖高原温泉郷から舗装道路を山に向い、乳頭山キャンプ場の手前を左折して山あいに入って行くとどん詰まりが鶴ノ湯です。古い木造茅葺き屋根の宿泊棟に、真っ白いお湯の露天風呂が有名です。

鶴の湯温泉の露天風呂

冬に鶴ノ湯に泊まりました。最高です。雪を冠った真っ黒い宿泊棟と真っ白いお湯と湯気。雪の露天風呂に白い温泉の温かさで極上の気分を味わいました。

高層湿原なら、八合目まで車で行ける秋田駒ヶ岳の方が楽です。主峰男女岳(おなめだけ・1637m)の周辺にコマクサやニッコウキスゲの群落が広がる花の名山。駒ヶ岳に連なる千沼ヶ原、田代平と高層湿原が続く花の山々です。

高層湿原の花だけを楽しむなら秋田駒ヶ岳がおすすめですが、登山者も少なくひっそりとした場所で静かに山の空気と高層湿原の佇まいを満喫するなら、田代平、千沼ヶ原がいいでしょう。田代平は、ハクサンチドリ、ショウジョウバカマ、ヒナザクラ、アカモク、そしてチングルマも楽しめます。

チングルマの花穂と蓮華岳

花の季節なら撮影や花の種類を楽しみ、季節外れなら高層湿原の静寂を堪能して歩きます。田代平を巡って乳頭山を下りれば、温泉が待っています。というか、日本の山と温泉はほとんどセットのような関係なので、山を登り降りたらどこか温泉宿に泊まり疲れを癒すというのが、正しい日本の登山コースだと言いたいほどですね。

雲上のティータイム

コンロとコッフェル・ドリッパー

乳頭温泉から田代平へのアプローチは蟹場湯、孫六温泉、黒湯からそれぞれ三本の登山道がのびて、真っすぐ乳頭山の尾根線に出る道となっています。

時間の都合で蟹場コースを取り、樹林の中を登って行きます。結構急な登りですが、他の2コースよりも距離が短かいので、ここからアプローチ。平日の昼過ぎです。登山地図では登り1時間と書いてありますが、休み休みゆっくり登って行きました。

およそ1時間ちょっとで樹林を抜け視界が開けます。この標高をティンバーライン=森林限界線といい、背の高い木々が育たなくなる高さを示します。

森林限界の紅葉

ティンバーラインは、山の緯度や地形、気候によって左右されるので、一定の標高とは決まっていません。ここからは背丈の低いハイマツと岩場が目立ってきます。稜線が近いのか、風の通りも良くなってきました。ふっと目の前の山道が消え、空が広がって稜線に出ました。

ここからは平坦な尾根道となります。地図を出して田代平の方向を確かめたあと、ゆるい登り下りの尾根道をしばらく歩きます。

下界はまだ暑さが残る夏の終わりですが、標高1000mを越える高原は秋の入口です。霧がかかってきました。そして誰もいません。やがて、標高1200m余の田代平湿原に到着。

田代平湿原

霧がなければ、天上の池沼と草原が見渡せます。道は木道になり、その上をこつこつと歩いていきます。20分ほど散歩したあと木道に座り込んで、ザックを開きました。EPIガスコンロとコフェッル、そして今回初めて持って来たドリッパーを取り出します。

山で使うので割れないプラスティック製を持参。お湯を沸かす間に、ドリッパーにペーパーフィルターを差し込み、ジップに入れてきたコーヒー豆を出します。

コーヒーを淹れる男性

霧に包まれた夏の終わりの高層湿原。今は池塘と草原、苔だけの風景。ここでコーヒーを野点し、ゆっくり味わいます。登りで熱くなった体も景色のように静まって行きます。こうして人っ子ひとりいない雲上のティータイムを楽しみました。

乳首は!

乳頭山

コーヒーを飲み終え乳頭山の方向に向かうと、途中に山小屋が見えてきます。ここが田代平山荘です。

山荘と言っても、避難小屋なので誰もいません。登山者が休憩や泊まりに使う場所で、トイレ、寝場所(棚)と石油ストーブがあるだけです。ここで、体力回復のため15分くらい休みました。地図を見ると乳頭山の直下に登山道があります。ここから下ることにしました。

田代平山荘を出ると、霧の中から、何か巨大なものがにゅっと現れました。見上げると、何とゴジラ。ゴジラが東を向いて立っている姿。これが乳頭山か。

遠くで見たきれいなおっぱいの乳首は、何とゴジラでした。この形なら見る角度によって烏帽子岳と呼ばれるのもうなづけます。

この頂上にアタックしたら泊まりになるので登りません。本日の目的は高層湿原でティータイムを楽しむこと。あとはさっさと降りてどこか温泉で汗をながそう。登山道を見つけ山を降りました。

黒湯と人影

夕方の山

登山道を下って麓へ。夕陽の中を足元を確かめながら降りて行きます。

明るいうちに登山口に着かなければなりません。登りなら2時間かかる道ですが、下りは1時間半。ゆっくり歩いているつもりですが、陽が落ちる速度も早いので、気持ちもはやります。

山の影が伸びてきて周囲は暗くなってしまいました。一本道なので、迷うことはありませんが、途中ガレ場もあり慎重に足を進めます。随分降りてきたかなという時に、樹々の間に灯りが漏れてきました。

近づくと裸電球と湯浴みする人影。湯けむりで人のシルエットが揺らいでいます。ああ温泉だ、黒湯温泉露天風呂の脇に出ました。ここが登山口です。

黒湯温泉は、乳頭温泉の中でも一番秘湯の雰囲気を残しています。温泉にじっくり浸って疲れを癒したいと思いましたが、そうすると泊まりたくなる。今日中に戻る予定なので、温泉でひとっ風呂。ざっと汗だけを流し、これで全行程終了です。車に戻り帰るだけ。

霧に囲まれた高層湿原と木道の映像を想い浮かべながら、夜の山道を下って行きました。

山と自然をどう楽しむか

車山高原・山頂の眺め

登山は幾つかに分類できます。

  1. 純粋に高い山を制覇する登山
  2. 山頂と山頂を結ぶ稜線をトレッキングする登山
  3. 高原やお花畑を散策する登山

2.はピークハンターと言って幾つもの山頂をこなすことが目的の人もいます。
自分は2.と3.の中間で、登頂よりも稜線や高原の散歩が大好きです。その後はもちろんゆっくり麓の温泉に浸るの一番。高山植物や山岳風景の撮影に関心の高い人は3.の登山が多くなります。

山と自然をどう楽しむか。自分に合った山との付き合い方をみつけて楽しみましょう。

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  • 男3人、雪山をジムニーで登るいう日本初?の大胆な挑戦をした。実態は男どもがせっせと除雪し車が進むというアホな登山だが大成功。本物の雪山登山訓練隊に嫌な顔をされた。日本海を望むキャンプ場ではUFOを見ながら美酒に酔い、凍てつく砂浜では大規模焚き火宴会。都市のど真ん中を流れる清流を、徒歩でとぼとぼ遡上し上流の川原で宴会を開催。バカバカしくて、真面目なアウトドア遊びをしてきた。

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