ここ数日は秋雨前線による雨がよく降り、8月中旬のうだるような暑さと比べると比較的過ごしやすい気温が続いていますが、雨の影響で湿度も高くなる日も多く、地域によっては気温も30度を超えることもあると思います。
このように夏と秋の中間のような気候においては、夏のキノコと秋のキノコの両方が発生することがままあり、その点ではキノコ狩りにおけるベストシーズンだとも言えます。
そのため今回の記事では、初秋の時期に発生する美味しいキノコを調理法や発生場所とともに紹介していきます。
初秋のキノコ狩りを満喫する
書き出しでも書いた通り、初秋には秋に発生するキノコ、夏に発生するキノコの両方が見られることがあります。
しかし、両方の発生時期が重なる期間は非常に短く、気温がある程度下がってしまうとシメジ類などの秋のキノコが優勢になり、夏キノコは来年に向けて休眠状態に入ってしまいます。
そのため今この時期、キノコ狩りのゴールデンタイムともいうべきこのタイミングを逃さないように、以下の見出しからしっかりとポイントを押さえておきましょう!
ニオウシメジ
ニオウシメジはキシメジ科キシメジ属のキノコで、主に夏から秋に畑地や堆肥上などの肥沃な土地に発生します。
同種は“仁王占地”の名の通り、一つの株が非常に巨大に成長することが多く、時には数十キロもの巨大な個体も見つかるため、しばしば書面をにぎわせます。
その分、非常に珍しいキノコではありますが、一度見つければいくら食べてもなくならず、こっくりとした旨味をもつため味も良く、キノコ狩りを趣味とする人々にとっては憧れのキノコの一つです。
オススメの料理法としては多くのキシメジ科の食菌と同じく、天ぷら・フライなどの揚げ物や味噌汁・吸い物などの汁物、また和食や中華のいずれの料理にもよく合います。
シイタケ
シイタケはキシメジ科シイタケ属のキノコで、豊富なうまみ成分を含むことから古来より食用として利用され、現在では手軽にお店でも買える非常に有名なキノコのひとつです。
本種は一般には秋に発生するイメージが強いですが、実際は春・秋の2シーズンにわたってブナ科広葉樹の枯れ木に発生し、時には冬場にも見ることが出来ます。
天然のものは木から発生するため栄養価も高く、味・香りともに菌床栽培に比べて良いですが、秋には見た目のよく似た毒菌である“ツキヨタケ”を誤食したことによる中毒が毎年のように報告されているので注意が必要です。
ちなみに“ツキヨタケ”は傘を裂くと中心部に黒いシミがあるため、これから見分けることが出来ます。
ツキヨタケの子実体。誤食すると下痢や嘔吐などの消化器症状を引き起こし、少数ではあるが死亡例も報告されている。
シイタケのオススメの料理法は、吸い物や鍋物、炊き込みご飯などの和食全般のほかに、中華料理にも利用できます。
バカマツタケ
バカマツタケはキシメジ科キシメジ属のキノコで、“マツタケ”に酷似しますが、比較的早い時期に松林ではなくコナラ・ミズナラなどの雑木林に発生するため“馬鹿”な“松茸“と言う意味でこの名が付けられています。
“馬鹿”という名前からはあまり良いイメージがわきませんが、同種は“マツタケ”と比べても遜色がないほどに香りも強く、味もとても良いため、地域によっては“さまつ(早松)“と呼ばれ珍重されています。
また、2018年10月には多木化学株式会社がバカマツタケの完全人工栽培に成功したことが大々的にニュースに取り上げられましたが、未だに私はスーパーなどで売られている所を見たことがありません。・・・結局どうなったのでしょうか?
バカマツタケのオススメの料理法は、マツタケと同じく土瓶蒸しや炊き込みご飯などの香りを活かした食べ方のほかに、たくさん採れた時には一本を丸々炭火で焼いて、スダチをしぼって醤油で食べれば非常に贅沢な気分を味わえるでしょう。
タマゴタケ
タマゴタケはテングタケ科テングタケ属の主に夏、ブナ科・カバノキ科の広葉樹林やマツ科針葉樹林などでよく見られるキノコですが、初秋にもよく発生します。
特に筆者の住んでいる近畿地方では例年7,8月よりも9月中旬の発生量のほうが多く、これからの時期に期待が持てるキノコのひとつです。
(関東辺りでは例年7月頭に生えることが多いようです。)
また、本種は多くの天然キノコの中でも非常に味が良く“ダシキノコ”とも呼ばれるほどにこっくりとした強い旨味を持つため、古くから海外では優秀な食菌として利用されてきました。
日本ではその見た目の鮮やかさから毒キノコだと誤解されることもままありますが、全くそんなことはないので見つけ次第食べてみましょう。
(※タマゴタケによく似た毒キノコに“ベニテングダケ”や“ヒメベニテングタケ”があります。採取する際には十分注意しましょう。)
オススメの料理法はフライやオムレツ、パスタなど和食よりもむしろ西洋料理によく合います。また、本種は生食のできる珍しいキノコであり、サラダなどの飾りつけやマリネにも利用できます。
ヌメリスギタケ
ヌメリスギタケはモエギタケ科スギタケ属のキノコで、名前に“杉“とつくのにも関わらず、ブナなど広葉樹の切り株に発生します。
本種は柄・傘など全体に強いヌメリがあり、これから近縁種であり中毒例も報告されている“スギタケ”や“スギタケモドキ”と見分けることが可能です。
(※スギタケ・スギタケモドキも以前までは食用とされていましたが、人によっては胃腸系の軽い中毒を引き起こします。注意しましょう。)
また、傘のみにヌメリがあるものは“ヌメリスギタケモドキ”と呼ばれ、こちらも食べることが出来ます。
味は比較的温和であるため、特有のヌメリを活かして汁物や焼き物などに利用されるほか、鍋物に入れても美味しく頂くことが出来ます。
ルールとマナーを守って楽しいキノコ狩りを
さて、ここまで初秋にとれる美味しいキノコについて紹介してきました。
はじめに初秋はキノコが多く発生するベストシーズンだと書きましたが、全体の発生数が増えるという事は当然、毒キノコも多くなるわけで、特に秋には日本の毒キノコ御三家である“クサウラベニタケ”・“カキシメジ”・“ツキヨタケ”のすべてが同時多発的に出るため十分な注意が必要になります。
いまだに毒キノコを食べても「軽くお腹を壊す程度で済むだろう」と言う甘い考えのもとでお遊びのような気持ちで試食する人がいますが、これは非常に危険です。
確かに“毒キノコ“と呼ばれるものの大半は少量の摂取であれば軽い胃腸中毒で済むものも多く、テレビなどでは大袈裟に報道されている種も存在します(カエンタケもその代表格ですね)。
しかし、なかには“ドクツルタケ“や”ニガクリタケ“、”コレラタケ(ドクアジロガサ)“など一撃で地獄行きになるものが存在することもまた事実であり、治療法も確立されていません。
更に毒キノコにより中毒を起こした場合はその地域の保健所に報告されるため、自分が考えている以上の大ごとになり、多くの人に迷惑をかける結果にもつながります。
最後に少し脅すようなことを書いてしまいましたが、キノコ狩りをする際には十分に注意を払い、また、採取する際にも根こそぎとるのではなく最低限のマナーを守り、楽しいキノコライフを送りましょう。
キノコによる食中毒の発生場所はほとんどが家庭であり、食用キノコと外見がよく似た毒キノコを間違って食べてしまうことが主な原因です。外見で毒キノコを見分けることは困難です。安易に採って食べたり、人にあげたりしないでください。万が一、野生のキノコを食べて体調に異常を感じたら、直ちに病院を受診してください。
食品安全委員会 毒キノコによる食中毒にご注意ください
ギア
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