ブッシュクラフトとは端的に言えば“自然環境下において役立つものを自分で作る”ということですが、同ジャンルの動画が大量にアップされており、私自身も登山や野営に興味を持っている以上これは試しておかなくてはならないなと思っていました。
で、ちょうどそんな折に近所の山で大量の桜の木が置いてあるのを見つけたので、これを使って木彫りスプーンを作ってみたいと思います。
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目次
ブッシュクラフトとは
先ほど”自然環境下において役立つものを自分で作る”という説明をしましたが、より厳密にいうとブッシュクラフトとは”自然環境下においての生活の知恵”の総称のことであり、つまり山や川など人の手がはいっていない場所において知恵を使って生活することを目的とした技術のことを指しています。この点が人里への”帰還”を目的とするサバイバルとは異なる部分でもありますね。
細かく言えば枝や枯葉などを利用して火を起こしたり、動物を捕るために罠を作ったりすることも当てはまるわけですが、この記事ではその中でも取っつきやすそうな「ナイフを使ったスプーン作り」に挑戦してみます。
ブッシュクラフトに必要な道具
まずお手製スプーン作りのために揃えておかなければならない道具を紹介します。
といっても、ナイフさえあれば木を削ってそれらしきものを作ることは可能なので、ここでは”あった方が簡単に作れるし、なにより便利”というものも含めて挙げていきます。今回、ブッシュクラフト初心者の私が準備した道具はこちらです。
モーラナイフ
まずは最も重要なナイフから。こちらはモーラナイフというスウェーデンの由緒ある製法で作られたブッシュクラフト・サバイバル用の超実用的なものです。キャンプで使っている人も多いですよね。
手にもピッタリとフィットするし、今のところは他のナイフを買う必要がないくらい満足しているので、今回はこれをメインに使っていきたいと思います。
ノコギリ・鉈
ノコギリは大きすぎる木材を持って帰るときにカットする、あるいは家の中で加工する際に手ごろなサイズに切り詰める用。鉈は木を角材に加工するために使います。
原木を持って帰ってきて加工する際にモーラナイフ一本だけだと歯が立たないので、ノコギリや鉈が必要になりますが、材木店で木を買ってきて削る場合には必要ありません。それをブッシュクラフトというかは微妙ですが…。
紙やすり
自然に生えている木は、当然ながら売っているものとは異なり表面がガタガタしているので、いざ作品が完成しても思っていたものとは違う仕上がりになることがあります。
そこでこの紙やすりを使えば、手触りも良くなり、見栄えも美しくなります。これは必須とまではいかないし、”自然環境下での生活の知恵”というのにも当てはまらない気がするのでお好みでどうぞ。
仕上げ用オイル
ブッシュクラフトに限らず、すべての木工製品は完成した後に“オイルフィニッシュ”といって、表面を湿気やカビから守るためのコーティングをほどこす工程が必須です。
漆器の場合には木の表面でウルシオールが固体化することによってコーティングの代わりになりますが、漆なんて普通に生活していても手に入るものではないので、たいていの場合は亜麻仁油を使っておけばオッケーです。
オリーブオイルでも良いですが、不乾性なので油が乾きづらく手触りが悪くなる場合があるため、亜麻仁油が手に入らなければクルミ油やヒマワリ油が良いと思います。オイルフィニッシュの時に精油を混ぜれば好きな香りをつけることもできます。
木の枝からスプーンを作ってみよう
さあ、少し前置きが長くなってしまいましたが、実際に木の枝を拾ってスプーンにしてみましょう。工程ごとの画像を挿し込みながら説明するので参考にしてください。
ブッシュクラフトの材料を手に入れる
まずは基本中の基本。今回のようにたまたま出先で良い感じの木材が落ちている…ということは稀であるため、足を使って探すのが無難です。とはいえ、ちょっと山に入れば強風や台風によって折れたと思われる木が幹ごとゴロゴロ転がっているので、見つけるのはそれほど難しいことではないでしょう。
山が身近にない人は材木店やホームセンターで角材を購入するのでも良いと思います。
これはたぶんコシアブラ。材にはこれと言って特徴がありませんが、使えないこともない
主にクラフトに利用されるのは非常に頑丈な樫や柿、楢や、材に良い香りのあるクルミや桜などが有名ですが、別にこれ以外だと絶対にダメという訳でもないので、樹種にはこだわらずに、それよりも木の状態をよく観るべきだと思います。
幹をめくってみて幼虫やシロアリが住んでいるものは内部がスカスカになっているので使えないものとして、ほかに水分を吸って柔らかくなっていたりカビが生えているもの、あとは意外なところでキノコが生えているものもやめておいた方が良いです。
なぜかというとキノコをはじめとする菌類は有機物を分解して無機物にする働きがあるため、見た目がしっかりしていそうな木でも脆くなっていたり、家に持って帰って置いておくとスカスカになる可能性があります。
手で折れるサイズなら上の画像のように折ってみて、パキッと良い音がすれば適度に乾燥していてハンドクラフトにベストな状態です。晩秋から冬にかけて切られた木は、虫や湿気の問題も少なく、良いものが多いので目安にすると良いでしょう。
採取した木を乾燥させる
さて、苦労して木を採ってきましたが、そのままでは使うことができません。木を削って作ったスプーンを長持ちさせるためには、先だって十分に乾燥させる必要があります。
多くの場合は2週間前後、軒下など風通しの良い場所で置いておきますが、季節や天候によってもこの期間は伸縮します。
一番わかりやすいのは含水率計というチェッカーを使って、含水率を20%以下まで減らすと良いのですが、あまり機械に頼りすぎるのはブッシュクラフトの目的にはそわないし、なによりお金もかかります。
こちらが含水率計。なぜ持っているかは筆者の過去ブログで
そのため面倒ではありますが、一か月ほど放置しておき、雨などが降ったらその都度延長する…というのが落としどころでしょうか。あらかた乾燥したと思ったら鉈でパックリ割ってみて、断面が売っている角材のような綺麗な色合いであれば次の工程に進みます。
ナイフで木の形を整える
時間をかける根気があるのであれば上の画像のようにナイフで周囲の皮を削り、加工できるようにすればよいですが、初めはそのつもりでも9割以上の人がたぶん途中で諦めると思うので、今回はノコギリと鉈を使って時短します。猛者の方はナイフ一本で頑張りましょう。
ノコギリで切れ目を入れて…
そこに鉈の刃を入れてコンクリやレンガなど硬い地面に叩きつける
こうすることで、スプーン作りに必要ない部分を大幅にカットします。これを両面、必要であれば四面すべて行えばベース作りは完了。
今回はスプーンを作るつもりなので裏表の両面のみ露出させ、マジックで簡単な設計図を書きました。卓上糸ノコがあるならそれで型をとっても良いですが、そうなるといよいよブッシュクラフトからかけ離れてしまうと思うので、ここからは頑張ってナイフで削っていきます。
ナイフで根気よく削っていく
設計図に沿ってナイフで削る。言葉にすると簡単ですが、この工程が個人的に最も面倒くさく、最も時間がかかりました。
時間さえかければそれほど器用でなくとも可能ですが、何本も作りたいと思うならば電動糸ノコなどを購入した方が良いですね。たぶん10時間は短縮できます。
ヘッド部分のくぼみを作る
ここまで出来たら、あとは細かい部分を彫っていきます。まずはスプーンがスプーンとして機能するために最も重要なヘッド部分を作りましょう。
途中で面倒になったので彫刻刀を使いました
画像のように外側から中央に向かってちょっとずつ窪ませていきます。
ある程度くぼんだかな?と思ったら次はヘッド裏側も周囲を削ることで丸みをつけて、なんとかスプーンらしい形を作ります。大体の形さえ作ってしまえば、あとは紙やすりで調整できるので細かいことは気にせずに行きましょう。
仕上げ
ヘッドの部分が出来上がったことでかなりスプーンらしくなりましたね。この時点では持ち手の部分や細かい箇所がボコボコとしているのが分かると思うので、仕上げに紙やすりで整えました。
最後に、全体にまんべんなくオイルを塗ります。指や布で塗っても良いですが、細かいところもカバーできる筆を使うとより良いですね。
オイルフィニッシュが終わったら、必ず風通しの良いところで数日間乾燥させるようにします。この工程を飛ばすとカビだらけになるので気をつけましょう。
完成
家に生えていたナンテンの木で、ついでに箸も作った
乾燥が終わり、全体に艶が出れば完成。木の香りのする完全自作スプーンです。注意点としてはカビが生えないように冷暗所に保存し、たまにオイルを塗りなおすようにしましょう。
初めてのブッシュクラフトを経験してみて
初めてのブッシュクラフトを経験してみましたが、正直な感想は「思ってたより大変。」の一言に尽きます。面倒すぎて途中でやめようかなと思いました。
が、しかし、実際に完成してみるとなんともいえない達成感というか、当然、作ったものに対しての愛着は購入した食器に比べると段違いにあるし、自分が自分のために作ったものであるから新品とは思えないほど手にも馴染む。
拾ってきた原木から何かを作る、というのは、とても気軽にオススメできるようなものでは無かったですが、少なくとも多くの趣味にあるような達成感や充実感は確実に味わえるという保障だけはしておこうと思います。
ネットでなんでも調べて、遠くの観光地の画像も見れたりする世の中だからこそ、こういう趣味も風情があって良いのではないでしょうか。
ギア
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