登山をしない方でも一度は登ってみたいと思うのが富士山ではないでしょうか。とはいえ、山開きの期間は僅か2か月と短く、登山者急増で連日ニュースを賑わせているのでハードルが高く感じてしまいます。
そんな時は山頂を目指さない富士山登山などいかがでしょう。富士山の五合目付近にある「宝永山」であれば、山頂まで僅か90分と、初心者でも余裕で日帰り登山ができるのでおすすめです。
目次
富士山最大の側火山「宝永山」
静岡県にある「宝永山(ほうえいざん)」は、富士山の南東側斜面にある標高2,693mの側火山です。山名の由来は、宝永4年(1707年)の宝永大噴火によって出来た山だから。
宝永大噴火の際に出来た3つの爆裂火口は「宝永火口」と呼ばれ、圧巻の景色です。第1火口が最も大きく、宝永山と富士山の間をスプーンですくったかのような火口の窪みは、遠くからでもはっきりとわかる程です。
宝永山周辺は何も遮るものが無く、山頂含め大パノラマが広がります。宝永火口はまるで荒廃した惑星のようで異次元の絶景です。難点があるとすれば富士山が近すぎて富士山の山容が良くわからないところでしょうか。
宝永山登山では一面火山灰が広がる惑星感満載の絶景トレッキングを楽しむことが出来ます。途中までは富士山の登山ルートと同じ道を通るので、まるで富士山に登っているような気分になれます。
「宝永山」登山コース
宝永山単体で登山する場合、主に3つの登山ルートがあります。周回コースや縦走コースもありますが割愛させていただきます。
富士宮口から登頂する
- 標高差約300m/片道約2.3km/徒歩80~90分程度
- 最寄りの駐車場は「富士宮口新五合目駐車場」(駐車可能台数約350台/無料・トイレ有)
※富士山開山期間はマイカー規制で駐車場利用不可
水ヶ塚公園から登頂する
- 標高差約1200m/片道6.8km/徒歩180~210分程度
- 最寄りの駐車場は「水ヶ塚公園駐車場」(駐車可能台数約870台/無料・トイレ有)
※富士山開山期間は有料(1台:1000円)
御殿場口から登頂する
- 標高差約1250m/片道7.5km/徒歩260~280分程度
- 最寄りの駐車場は「御殿場口新五合目駐車場」(駐車可能台数約500台/無料・トイレ有)
今日ご紹介するのは、富士宮口から登頂する往復ルートです。最短コースですが、富士山登山が解禁される7月~9月は物凄く混雑するのでご注意ください。コースは以下のような流れになります。
モデルコース 標高差約300m/総距離約4.6km/コースタイム約150~170分程度
富士宮口新五合目駐車場→富士宮口六合目→宝永第一火口縁→宝永山第一火口→馬の背→宝永山山頂→富士宮口新五合目駐車場
順を追って説明しますね。
最寄りの駐車場・公共交通機関
登山道の最寄りの駐車場は、東名高速道路御殿場インターから車で約50分の場所にある「富士宮口新五合目駐車場」です。アスファルトで舗装された駐車場に無料で約350台停めるスペースがあります。
トイレもあるので便利ですが、富士山4大登山ルートで最も最短の「富士宮ルート」の駐車場でもあります。富士登山が解禁される期間はマイカー規制で利用ができないので注意が必要です。
その為、マイカー規制中は「水ヶ塚公園駐車場」に車を停めてシャトルバスで登山口を目指すことになります。但し、富士山登山者で激混みの上、駐車場は有料です。シーズン中はこのルートをお勧めできません。
出典:富士急静岡バス株式会社公共交通機関を利用する場合、東海道新幹線「新富士」駅かJR身延線「富士宮」駅から富士急静岡バス「富士宮口五合目」行きの路線バスに乗り、「富士宮口五合目」バス停で下車します。
富士宮口新五合目駐車場→富士宮口六合目
第一のチェックポイントとなる富士宮口六合目までは距離にして約0.5km、標高差約100メートル程度を約20分かけて登ります。登山口は富士山表口五合目の標識がある場所にあります。
出だしは階段で整備された道です。遠くに見える山は富士山ですが、あまりにも距離が近すぎて、ただの荒野にみえますよね。美しい富士山を至近距離で楽しむのであれば二ツ塚のほうがお勧めです。
宝永山登山では絶えず360度荒廃したビューが広がり、惑星感満載です。富士山の登山コースなだけあって、道は大変整備されています。ロープが張られ、道迷いの心配はなさそうです。
程なくして表富士登山道六合目にある山小屋「雲海荘」と「宝永山荘」が見えてきました。富士登山シーズン以外は閉まっているので閑散としています。
宝永山荘には分岐があり、左へ進むと富士山山頂を目指す「富士宮ルート」へ進みます。宝永山は真っすぐ進みます。
富士宮口六合目→宝永第一火口縁
宝永第一火口縁までは距離にして約0.4km、約5分程度です。分岐から先は標高差約20メートル程度の緩やかな下りが続きます。
宝永山付近は風が強く、雲の流れが速いので、あっという間にガスに包まれることが多々あります。この日は、青空が広がる登山道が3分後には真っ白ビュー。といった繰り返しで天気に悩まされました。
宝永第一火口縁に到着です。火口の淵にあるこの場所からは、天気が良い日は360度大パノラマの絶景を拝むことが出来ます。
右手には宝永第一火口と第二火口が広がり、まるで荒廃した惑星のような雰囲気を拝むことが出来ます。この場所からは宝永山の山容も楽しめるのですが、雲にかかってしまいました。
宝永第一火口縁→宝永山第一火口
宝永山第一火口までは距離にして約0.5km、標高差約40メートル程度を約5分かけて下ります。宝永山第一火口の中を横断して、火口の底を目指すルート取りです。
宝永火口を横断するこのルートは通称「プリンスルート」と呼ばれ、現天皇陛下が皇太子の時代の2008年に登られたことからこの名前が付いています。
火口は本当に巨大で、カメラでは全容を収めることが出来ない程の規模感です。火口を歩いているというよりは、一つの小山を下っているような感覚になります。宝永大噴火が如何に凄まじかったかが良くわかります。
宝永山第一火口に到着です。正に火口の底といった雰囲気でクレーターの中にいるかのような感覚になります。
火口に囲まれた景色は普段の登山ではお目にかかれない不思議な光景です。目の前に見える山がこれから登る宝永山ですよ。登り返しが凄そうですよね。宝永山第一火口にはベンチもあるので小休止に最適です。
宝永山第一火口→馬の背
馬の背の分岐までは距離にして約0.7km、標高差約235メートル程度を約40~50分かけて登ります。この先は山肌に続くトラバース気味の側道を登り返す急登が待ち受けています。
この区間は宝永山登山の核心部ともいえます。何故なら砂や砂利で覆われた登山道は非常に登り辛く「3歩進んで2歩さがる」を繰り返す、リアル「三百六十五歩のマーチ」を体験することになるからです。
急斜面の登山道は足元が埋まるほどの砂利で滑りやすく、なかなか前に進めないので、余計に遠く感じます。しかも周りには目印になるものが無く、遠近感が全く掴めないので、果てしない登山に感じられることでしょう。
馬の背の分岐には標識が無いので注意が必要です。真っすぐ進むと遠回りですが富士山と宝永山を一望できる絶景ポイント「馬の背」を経て山頂を目指すルート取りです。
右へ進むと直接宝永山を目指す最短ルートです。この日はガスに覆われて絶景が期待できなさそうだったので最短コースを選びました。
馬の背→宝永山山頂
宝永山山頂までは距離にして約0.2km、標高差約25メートル程度を約10分かけて下ります。引き続きリアル「三百六十五歩のマーチ」体験できる登山道が続きます。
宝永山はまるで砂場のような道のりなので、ローカットの靴だと砂が靴の中に入ってきます。宝永山に登るのであればハイカットの登山靴推奨です。
急斜面を登りきると、宝永山山頂へ真っすぐと伸びる緩やかな道が続きます。雲が無い日であれば360度大パノラマが広がるビクトリーロードだった筈です。
宝永山山頂に到着です。標高は2,693メートル。登り返しがある上に、山頂へ続く道は登りづらいですが、距離や標高差が優しいので意外とあっさりと登頂できました。
宝永山山頂からの景色
山頂は360度大パノラマが広がるのですが、最悪のタイミングでガスに覆われてしまいました。登山開始から同じ景色が続くパノラマビューだったとはいえ、山頂からは特別な景色を拝めた筈です。
晴れた日であれば写真のように、宝永山第一火口越しに富士山どーんの絶景を拝むことが出来ます。
山頂標識には方位盤があるので、どの方向にどんな山があるかが一目でわかり便利です。方位盤を見ながら心の目で山の絶景を楽しむことにしました。
山頂はとても広く、休憩できるスペースは十分にありますが、ベンチや椅子は無く、地面は砂利なので椅子やシートの持ち込みはマストです。それでも本当に多くの登山者で溢れかえっていていました。
雲が抜けることを祈って、山頂で1時間程粘りましたが、時々雲が抜けて青空が広がることはあっても、期待した絶景を拝むことはできませんでした。山は天気に左右されますよね。諦めて下山します。
宝永山山頂→富士宮口新五合目駐車場
下山は同じコースを往復するピストンルートなので来た道に戻ります。登り返しがあるので爆速とはいきませんが、ゆっくり歩いても約70~80分程度で下山ができます。
登りではあれだけ苦しめられた「三百六十五歩のマーチ」の登山道も、下山の時はサンドスキーのように爆速で下山できるのでテンションが上がります。
富士山の下山で人気の御殿場ルート「大砂走り」を宝永山でも体験できるので、富士山を下山したような気持ちになれました。下山は本当に楽しい山です。
富士宮口新五合目駐車場に到着です。宝永山登山では山行中、周りには遮るものが一切無いので日焼け対策はしっかりと行いたいところです。
宝永山に登ってみてわかったこと
宝永山は富士登山のプチ体験が出来る、いつか富士山に登りたいと思っている方にオススメしたい山でした。宝永山に登ってみてわかったことをまとめました。
まとめ
- 迫力の爆裂火口を拝める富士山五合目付近にある側火山
- 最短コースは富士登山シーズンは激混みするので避けたい
- 富士宮口新五合目駐車場は富士登山シーズンはマイカー規制
- 登山開始から下山まで惑星感満載の360度パノラマビュー
- 富士山が近すぎて富士山の山容が良くわからない
- 砂で覆われてた登山道は全然前に進まない。逆に下山は爆速
- 風が強く雲の流れが速いのでガスに包まれることが多い
- 砂が登山靴に入りやすいのでハイカットの登山靴推奨
- 山頂を目指さない富士山登山を満喫できるのでお勧め
富士山登山が解禁される時期は避けて登りたい
宝永山の最短コースは富士山の登山ルートと同じ道を通るので、まるで富士山に登っているような気分になります。但し、富士登山が解禁される期間は激混みの上、マイカー規制があるので避けたいところです。
富士宮口から登頂する場合、6月か9月下旬~10月上旬あたりがおすすめです。火山灰で覆われた登山道は大変登り辛く、決して楽な登山ではありませんが、標高差300mに満たないので初心者にもアタックしやすい山ですよ。
ギア
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